新しい保険法について
(2009.8.19)

2010年4月1日から、新しい保険法がスタートしました。
これまでの保険に関する商法の規定を変更し、単独の法律として制定し現代社会に合った内容にするとともに、保険契約者の保護が図られています。

保険法の条文は、法務省ホームページをご覧ください。(末尾の関連リンク参照)

1.保険法の改正

第169回通常国会において、「保険法」が成立しました。(平成20年法律第56号)
従来は、「保険法」とは、「商法」第2編商行為第10章・第3編海商第6章の「保険」に関する規律を指すものでした。
今回の改正では、商法から独立した「保険法」とし、保険契約者保護の観点等から内容も大幅に見直ししています。
保険会社に対する監督法規である「保険業法」は、今回の改正の直接の見直し対象ではありません。

2.改正の背景と基本方針

(1) 見直しの背景

□ 保険法は、約100年間、実質的な改正が行われておらず、表記も片仮名・文語体のままでした。
□ 他方、民事ルールを定める法律の整備の流れがありました(民法の現代語化、会社法の制定等)。

(2) 見直しの基本方針

□ 保険契約の関係者間のルールを現代社会に合った適切なものとする。
□ 民事ルールを定める法律として、分かりやすい表現により現代語化を行う。

3.改正の主なポイント(例)

○以下では、多岐にわたる改正事項のうち、ポイントのみを説明しています。
○損害保険会社および保険の種類等により、取扱いが異なる場合があります。

(1) 保険契約に関するルールの共通化

適用対象契約の見直し

これまでの商法は基本的に共済への適用はありませんでしたが、新しい保険法は保険契約と同等の内容を有する共済にも適用されることとなります。これにより、法律上の基本的な契約ルールが同じになります。(保険法の関係条文:第2条ほか)

傷害疾病保険契約の規定の新設

これまでの商法では規定がなかった傷害疾病保険契約について、新しい保険法では規定が新設され、契約の要件・効果等が明確化されます。(第2章損害保険第5節、第4章傷害疾病定額保険)

(2) 保険契約者(消費者)保護の実現

片面的強行規定の規律の新設

片面的強行規定の規律が設けられ、保険法の規定よりも保険契約者、被保険者または保険金受取人に不利な内容の約款を定めても、その約款の定めは無効となります(ただし、企業分野の保険は、適用が除外されています)。(第7条、第36条ほか)

告知義務

自発的申告義務(現行)から質問応答義務へ変更され、保険契約者は、重要事項のうち保険会社から告知を求められた事項のみ告知すればよいこととなります。(第4条、第66条)
また、保険募集人による告知の妨害や不告知の教唆があった場合は、保険会社は解除できないとする規定が新設されました。(第28条第2項、第84条第2項)

保険給付の履行期

保険金の支払時期の規定が新設されます。(第21条、第81条)
これにより、適正な保険金支払のために不可欠な調査に要する時間的猶予は保険会社に認められていますが、その調査に必要な合理的な期間が経過した後は保険会社は遅滞の責任を負うこととなります。ただし、保険契約者または被保険者が正当な理由なく、保険会社の調査を妨げたり、調査に応じなかったりした場合については、保険会社は遅滞の責任を負いません。

他人を被保険者とする契約に関する規定の新設

他人を被保険者とする傷害疾病保険契約については、被保険者の同意を取り付けることが原則とされていますが、1.死亡保険金のみ支払う契約以外の契約であり、かつ、2.被保険者またはその相続人が保険金受取人に指定される場合には同意は不要とされています。(第67条)
他人を被保険者とする傷害疾病保険契約において、被保険者がいったん同意をしても、その後に保険契約者や保険金受取人との間の信頼関係が破壊された場合や、同意の基礎となった事情が著しく変更した場合には、被保険者からの解除請求を認める規定(被保険者離脱制度)が新設されます。(第87条)原則として被保険者から保険契約者に申し出ていただくことになりますが、一定の条件の下、保険会社でお申し出を受け付けることができる場合もあります。

(3) 保険機能の拡充

超過保険

□ 保険金額(契約金額)が保険の対象である物の実際の価額(保険価額)を超える超過保険については、超過部分「無効」(現行)から「取り消し可能」へ変更されます。(第9条)

重複保険

同一の目的物に複数の損害保険が締結された重複保険契約については、独立責任額全額支払方式が導入されます。
これにより、他の損害保険契約が締結されている場合には、各保険会社は按分支払いをせず、自らが締結した保険契約に基づく保険金の全額を支払う義務を負うこととなります。ただし、損害額を超えて複数の損害保険会社から保険金を受け取ることはできません。(第20条)

責任保険契約についての先取特権

被保険者が倒産した場合であっても、被害者が保険金から優先的に被害の回復ができるように責任保険契約について特別の先取特権の制度が導入されます。(第22条)

重大事由解除の新設

保険金詐欺等のモラルリスクを防止するための重大事由解除の規定が新設されました。
これにより、故意、詐欺、保険会社の保険契約者または被保険者に対する信頼を損ない、契約の存続を困難とする重大な事由がある場合には、保険会社は契約を解除できることとなりました。(第30条、第86条)

保険金受取人による介入権制度

保険契約者の債権者等による解約返戻金を目的とした契約解除に対して、保険金受取人が契約を存続させることのできる制度(介入権)が創設されます。
保険金受取人が介入権を行使するためには、介入権行使について保険契約者の同意を得ること、保険会社が解除の通知を受けたときから1カ月以内に解約返戻金相当額を債権者等に支払うこと等一定の要件が定められています。(傷害疾病定額保険)(第89条)

4.経過措置

◎経過措置(保険法附則第2条〜第6条)
 原則は施行日以後に締結された契約に適用されます。ただし、一部規定は施行日前に締結された契約(旧契約)にも適用されます。

<旧契約に適用>

・保険価額や危険の著しい減少に伴う保険契約者による保険料の減額請求(一定の条件があります)
・重大事由解除 等

<施行日以後の旧契約における保険事故に適用>

・保険給付の履行期
・責任保険契約についての先取特権 等