IAIS保険セクターのシステミックリスクに対する包括的枠組みに係る文書案に意見提出(2019.1.28)

システミックリスクの源泉や流動性リスクの定義、対象保険会社の選定基準等について意見

 日本損害保険協会(会長:西澤 敬二)では、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が公表した「保険セクターのシステミックリスクに対する包括的枠組み案」に対する意見を1月24日に提出しました。

 本文書は、2008年の金融危機以来継続してきたシステミックリスク対応を目的に主に次の内容をまとめたもので、2018年11月14日から2019年1月25日まで市中協議(パブリック・コメント)に付されました。

<文書の主な内容>

  • 金融危機以降、システミックリスク対応のためにIAISが実施してきた「グローバルなシステム上重要な保険会社(G-SIIs)」を特定し、追加規制(加重監督、実効的な破綻処理、上乗せ資本)を課す従来の枠組みに代わるものとして提案されている。
  • 個別の事業者の破綻および複数の事業者の集合的な活動によるリスクの伝播・増幅が対象。
  • 特定の事業者だけに限定せず、幅広い事業者を対象に、政策措置を比例的に適用する(プロポーショナリティ)。
  • IAISが、保険セクター内のリスク蓄積を特定するためのグローバルなモニタリングを実施する。
  • 対象とする主なエクスポージャーと伝播経路は以下のとおり。
     エクスポージャー:流動性リスク、利率保証型商品、カウンターパーティ・エクスポージャー、
              ニッチ市場における代替性の欠如、サイバーリスク、気候変動リスク等
     伝播経路:資産の投げ売り、特定の商品の供給の中断等
  • 政策措置の主な内容は以下のとおり。
     監督者:マクロ健全性政策に基づく介入権限、危機管理グループ設置、破綻処理計画策定等
     保険者:流動性リスク・カウンターパーティーリスク管理の強化、再建計画策定等

 当協会では、@全ての保険会社が本枠組みの対象となることを踏まえたプロポーショナリティ適用、A保険と銀行両セクターの公平性確保、B過度な事務負担回避に向けた配慮、Cシステミックリスクに特化した流動性リスクの取扱い等を求める意見を表明しました。

保険監督者国際機構(IAIS)「保険セクターのシステミックリスクに対する包括的枠組みに係る市中協議文書」に対する損保協会意見

<当協会意見概要>

  • あるエクスポージャーがシステミックリスクの源泉となるかどうかは、規模やグローバルな広がりを考慮したうえで、それが伝播経路に繋がりうるかどうかで判断されるべき。この観点から、代替性、サイバーリスク、気候変動は源泉に該当しないと考える。
  • システミックリスクとの関連性が高い流動性リスクは限られていると考えるため、流動性リスクの一般的な管理強化を課すことは適当ではなく、対象を絞るべき。また、一般的な流動性リスクの基準を設けるよりも、システミックリスクに繋がる流動性リスクに対応した基準を検討すべき。ただし、保険会社の規模や晒されているリスクを無視した一律の基準は反対。なお、システミックリスク対応の目的を達成するうえでは、流動性リスクの一般への開示よりも当局への報告が重要と思われる。
  • セクター横断の視点で、保険セクターのシステミックリスクの規模は銀行セクターに比べて小さいことを考慮すべき。銀行セクターと保険セクターの規模や主たる活動内容の違いを十分に考慮し、データ収集、政策措置の枠組みが公平性に欠けないようすべき。保険セクターの健全な発展を意図せず阻害する過度な制約を避けるべき。
  • プロポーショナリティを適用し、監督の対象となる保険会社・グループを選別すべき。選別に当たっては、一定の基準を設けるべき。中小保険会社に過度な負担を強いることのないようにすべき。
  • プロポーショナリティを適用し、各社が有するシステミックリスクの発生源の状況に応じて監督の度合を調整することには同意するが、各国の監督者の裁量の結果、各国間の公平性が伴わないなど、保険者の事業活動などに望ましくない影響を及ぼしたりすることのないように、十分留意すべき。また、他業態との比較においても公平性を持ち、保険事業における特殊性(ALMを含むリスク管理等)も考慮すべき。
  • システミックリスクへの対応として、全ての保険会社に対して詳細なデータ提供を要請することは負荷が過大。システミックリスクの原因となりにくい会社についてはデータ収集対象を絞り込むなど、作業負荷を配慮した規定とすべき。

 IAISは、今回の市中協議に寄せられた意見を参考にさらなる検討を進め、本枠組みを反映した保険基本原則(ICP)(※2)およびコムフレーム(ComFrame)(※3)案を6月に市中協議に付し、11月を目途に内容を固める予定です。

 当協会は、IAISにおける国際保険監督基準策定の議論に積極的に参加しており、今後も関係国際機関等に対して本邦業界の意見を表明していきます。

(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要

1994年に設立され、世界約150カ国・地域の保険監督当局(メンバー)で構成。主な活動は以下のとおり。

  • 1)保険監督当局間の協力の促進
  • 2)保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
  • 3)メンバー国への教育訓練の実施
  • 4)金融セクターの他業種の規制者等との協力

※日本からはメンバーとして金融庁が参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。

(※2)保険基本原則(ICP)

IAISが定める、すべての保険者・保険グループの監督において適用されるべき基本原則。保険監督機関が自らや保険会社に関し権限を持ち、管理すべき分野(例:免許交付、モニタリング、検査、破綻処理、ガバナンス、リスク管理、資本十分性、投資、開示等)について定める。適用度・強制度に応じ、「原則」、「基準」、「ガイダンス」の3層で構成。現行ICPの和訳はこちら(※)参照。

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(※3)コムフレーム(ComFrame

正式名称を「IAIGsの監督のための共通の枠組み」と言い、「IAIGs(国際的に活動する保険グループ)」にICPの追加として適用される監督要件。ガバナンス、リスク管理等の定性要件、定量要件(資本要件)、監督者に対する要件(監督者間協力、破綻処理等)を含む。適用度・強制度に応じ、「コムフレーム基準」、「コムフレームガイダンス」の2層で構成。資本要件として、国際保険資本基準(Insurance Capital Standard:ICS)の策定が進められている。IAISは、ICSを含むコムフレーム全体の2019年完成、2020年実施を予定している。

本市中協議文書(原文)は、こちら(※) でご覧いただけます。

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