協会長ステートメント
会長 隅  修 三
(2011.9.15)

 協会長に就任して2ヶ月半が経過いたしました。その間の主な活動や出来事につきまして、ご報告と所感を申し上げます。

はじめに

 ご報告に先立ち、先の台風12号で犠牲になられた多くの方々に、謹んで哀悼の意を表しますと共に、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

 損害保険が復旧のお役に立てますよう、引き続き皆様からのお問い合わせやご相談に親身に対応し、的確・迅速な保険金のお支払いに取り組んでまいります。

 東日本大震災から6ヶ月が経過いたしましたが、被災者の皆様の中には未だ不自由な生活を続けておられる方々も多く、一刻も早い本格的な復興が望まれます。

 景気の先行きにつきましては、今後の復興需要が景気の押し上げ要因となりプラス成長が期待される一方で、円高や欧米を中心としたグローバル経済の鈍化による影響が懸念されており、引き続き、楽観することはできないものと考えております。
 

1.業界一丸となった震災対応

 これまでの取り組み状況、および今後の課題と対応につきましてご報告申し上げます。

 今回の震災では、被災者の生活の安定を目的に導入された地震保険制度の機能が有効に発揮されたものと認識しております。

 損害保険業界も総力をあげて取り組み、震災発生から3ヶ月あまりで、1兆円を超える地震保険金を被災地へお届けすることができました。保険会社と代理店、そして官民の「一体感」をもった取り組みが迅速な対応につながったものと考えております。

(1)的確・迅速な地震保険金のお支払いに向けて

 会員各社では、事故のご連絡をいただいたお客様に地震保険金を迅速にお支払いすると共に、代理店とも連携して、お客様にご請求をお勧めする「請求勧奨」の取り組みに注力してまいりました。

 その結果、約1兆1,450億円、69万件の地震保険金をお支払いすることができ、調査完了率は97.8%まで達しております(9月14日現在。家計地震保険ベース)。

 現在も1日約800件の新たな事故のご連絡をいただいており、最終的なお支払い総額は1兆2,000億円前後になるものと思われます。

 今後も、ご契約の更新や地震保険料控除証明書の交付などの機会を通じて、お客様に損害発生の有無を確認する取り組みを進め、的確・迅速な地震保険金のお支払いに注力してまいります。

(2)地震保険の一層の普及促進に向けて

 地震保険の普及促進は、的確・迅速な保険金のお支払いと並び損害保険業界の社会的使命の一つであります。震災を契機とするリスクへの関心の高まりにより、震災以降(4月、5月)、新規契約件数が前年同月比110%を超えて推移しておりますが、さらに一層の普及促進に向けて様々な取り組みを実施してまいります。

ア.「地震保険広報キャンペーン」の取り組み
 地震保険の仕組みや随時加入が可能であるといった契約方法などをご理解いただくために、新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディア広告やポスターを中心に、様々な広報活動を展開してまいります。


イ.各自治体への働きかけ
 今回の震災では、全体で1兆円を超える地震保険金をお支払いしておりますが、県別では宮城県が最も多く約5,360億円となっております。

 その背景には、地震保険の世帯加入率が33.6%(全国平均23.7%)と高いことが挙げられますが、宮城県の防災計画の中で生活再建の方策として地震保険の活用を明記いただくなど、県との共同取り組みを通じて、多くの方々にご加入いただけたことが一因と考えられます。

 各自治体の防災計画における地震保険の位置づけも重要性が増していると考えられ、関係各方面への働きかけを強化してまいります。

(3)安定的な地震保険制度の運営に向けて

 今回の震災における地震保険金のお支払いによって、過去から蓄積してきました準備金が減少したことを踏まえ、今後、持続可能で安定的な制度設計と運営に向けた論議が必要と考えております。

 こうした課題につきましては、「地震再保険特別会計に関する論点整理に係るワーキンググループ」でも論議いただいており、損害保険業界からも地震保険に関するお支払いや契約の加入状況などのデータを提供しております。また、商品面につきましても、「損害区分」「補償水準」「査定基準」などに関するお客様から寄せられた声を集約して報告いたしました。

 引き続き、広く論議いただくための様々な情報を提供してまいります。

(4)震災時における当協会の役割発揮に向けて

 今回の迅速なお支払いを可能とした「航空写真の活用による損害査定の効率化」や、契約されている保険会社が不明な場合の「照会システムの構築」などの対応は、阪神・淡路大震災の経験や気付きを踏まえ具現化したものであり、こうした経験や記録が引き継がれてきたことが、今回の震災の際にも迅速な判断や実行を可能にいたしました。

 震災発生から約6ヶ月が経過いたしましたが、今後も、万一の際に安心と安全をお届けし期待される役割を十分に発揮するために、東日本大震災から学んだ様々な経験を集約し今後の体制に活かしていくことが、今、損害保険事業に携わるものの使命であると強く認識しております。

2.その他の課題に関する具体的取り組み

 これまでの主な取り組みと今後の課題は以下のとおりです。

(1)地球環境保護の取り組み

 当協会では、これまでも地球環境保護の観点から「リサイクル部品活用キャンペーン」や「エコ安全ドライブの推進」などのエコロジーの取り組みを進めてまいりましたが、8月1日付で新たに「リサイクル部品活用推進プロジェクトチーム」を設置し、地球環境保護に繋がる活動を一層進めていくことといたしました。

 今後、このプロジェクトチームを中心に、会員全社での共同取り組みや、自動車ユーザーや整備業者向けのキャンペーンなどを実施していきたいと考えております。

(2)業務品質向上への取り組み

 本年10月から、従来の「損害保険募集人試験」と「商品専門試験・研修」を統合した新たな試験制度として、「損害保険募集人一般試験」がスタートいたします。また、新試験の実施にあわせて、全募集人の資格取得データなどを整備した損害保険業界共通の「募集人・資格情報システム」を開発し、9月から運用を開始いたしました。

 今後は、新たな試験制度および業界共通システムの円滑な運営を通じて、募集品質向上への取り組みをさらに推進してまいります。

 また「そんぽADRセンター」設立からほぼ1年が経過いたしましたが、これまでに2,206件の苦情(同センター発足前の1.5倍以上の件数)と264件の紛争(4倍以上の件数)に対応しており、当初の期待された役割を果たしているものと考えております(8月31日現在)。

 引き続き、苦情や紛争を解決する仕組みとして役割を発揮し、お客様の声を起点とした業務品質の向上に努めてまいります。

(3)事故防止・削減、防災・防犯、交通安全に向けた取り組み

 当協会では、運転免許保有者に対する高齢者の割合が増加傾向にあることから、啓発ツール「シニアドライバーのための交通安全のすすめ」を刊行いたしました。高齢者の事故防止・削減と交通安全の推進に向けて、今後、積極的に啓発活動を行ってまいります。

 子どもたちが実体験の中で防犯や防災・交通安全について学ぶ「ぼうさい探検隊」につきましては、震災の影響から開始時期を遅らせておりましたが、全国で防災教育への機運が高まっていることを受け、6月から募集を開始いたしました。

 今まで約7,900の応募があり、過去の大規模災害から学んだ作品や、東海・東南海地震など今後想定される巨大地震への備えをテーマとした作品も数多く含まれております。今回、宮城県や茨城県からは、このたびの東日本大震災を「生きた教訓として次世代に伝えよう」という声が児童や保護者の間から上がり、復興の一環としてマップ作りを進めている、といったご報告もいただいております。11月の応募締切までの間、全国各地でのお取り組みを引き続き積極的に支援してまいります。

 また、当協会では10月7日を「盗難防止の日」と定め、全国47都道府県で自動車盗難・車上ねらい・住宅侵入盗に対する防犯啓発活動を実施しております。本年も全国で広く訴えてまいります。

(4)業界の一層の健全性向上に資する取り組み

 金融業界に対する監督規制の枠組みが国際的に論議されております。当協会としては、この論議において、保険業の特性を反映した合理的な枠組みにしていただくこと、そして、より適切なリスクの把握と管理を通じて健全な事業活動の展開を促すインセンティブを取り入れていただくことが重要と考えております。

 このような観点から、世界の保険監督当局者の組織である保険監督者国際機構(IAIS)が策定中の「国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み」をはじめとする重要テーマにおいて、積極的に意見を発信しております。

 また8月には、欧州保険職域年金監督機構(EIOPA)が、日本の再保険監督について、欧州で策定中のソルベンシーUとの同等性を大枠で認めるという案を公表しました。当協会は、この同等性評価のプロセスにおいて、日本の損害保険業界の健全性とリスク管理への取り組みなどについて意見を発信してきております。

 なお、9月30日にソウルで開催されるIAIS年次会合におきまして、世界各国の保険監督者および業界関係者の皆様に、日本の震災に関するプレゼンテーションの機会を頂戴いたしました。協会長として、東日本大震災における業界の対応、地震保険制度の概要、そして損害保険業界の財務健全性に関してご説明したいと考えております。

(5)金融審議会

 6月29日から「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキンググループ」が開始されました。8月までに3回開催され、M&Aや事業再編等を通じた収益機会の拡大、グループ内の機能再編を通じたグループ経営の効率化・サービス力強化について論議が行われております。

 いずれも損害保険業界にとって重要なテーマであり、規制の緩和を目指して取り組んでまいります。

(6)平成24年度税制改正要望

 7月21日の理事会におきまして、平成24年度税制改正要望を取りまとめ、金融庁を始め関係省庁に要望いたしました。昨年度に引き続き、重点項目は「受取配当等の二重課税の排除」であり、益金不算入割合を現行の50%から100%に引き上げることを求めております。

 「受取配当等の二重課税の排除」は、諸外国でも広く採用されているものであり、我が国の金融・資本市場の競争力を強化し、会員各社が諸外国と比較しても不利にならないための要望であります。

3.おわりに

 就任以降2ヶ月半の間、損害保険業界一丸となった東日本大震災への対応を最優先課題として取り組んでまいりました。もっと安心で安全な社会に向けて、これからも損害保険業界の様々な課題に全力で取り組んでまいります。

 皆様方のご支援・ご協力を何卒宜しくお願い申し上げます。


以上