協会長ステートメント
会長 隅  修 三
(2011.12.15)

 前回9月の定例会見以降の主な活動や出来事を中心に、ご報告と所感を申し上げます。

はじめに

 本年は、2月のニュージーランド地震に始まり、3月の東日本大震災、米国での竜巻やハリケーン、台風12号・15号の相次ぐ上陸、トルコの大地震、そしてタイの大洪水災害など、世界中でかつて例を見ないほど大規模な自然災害が頻発し、損害保険業界の真価が問われた1年でありました。

 中でも、東日本大震災につきましては、業界一丸となった取り組みを続けてまいりました結果、これまでに約74万件で総額約1兆1,930億円の地震保険金をお支払いし、調査完了率は98.7%に達しております(12月14日現在。家計地震保険ベース)。

 また、タイの大洪水災害につきましては、多くの住宅や工業団地が浸水し、タイ国内の生産活動に甚大な被害が生じております。現地で保険引受を行っている会員各社では早期かつ長期にわたって必要な支援要員を派遣するなど、的確かつ迅速な保険金のお支払いに向けた損害調査活動を展開しております。

 いずれの災害におきましても、損害保険が現地の一日も早い復旧・復興のお役に立てるよう、引き続き全力で取り組んでまいります。


 当協会がとりまとめた協会加盟会社25社の中間期決算概況によれば、自動車保険における損害率の高止まり、株式相場の下落による運用環境の悪化、そして国内外の大規模自然災害の発生などの影響を受け、各社を取り巻く経営環境は引き続き極めて厳しいものと認識しております。

 我が国の経済情勢につきましても、今年度第3四半期のGDPは震災後の大きな落ち込みからは持ち直してきたものの、欧州債務危機の深刻化に伴う世界経済の減速や長引く円高、さらにはタイの大洪水災害などの影響によって、景気回復の勢いは鈍化してきており、楽観することはできないものと考えております。

1.震災対応の振り返り(当協会の役割と機能について)

 震災時における損害保険業界の最大の使命は「的確・迅速な保険金支払い」であり、会員全社一丸となった取り組みを確実に進めていくことが当協会の役割になります。

 そのため、当協会では東日本大震災におけるこれまでの対応を振り返り、明らかになった課題を整理したうえで、今後予想される大規模地震などの災害発生に備えた対策、および地震保険をはじめとする損害保険の一層の普及促進に向けた取り組みを推進していくことが極めて重要と認識しております。

(1)的確・迅速な保険金のお支払い態勢に向けて

 東日本大震災の経験で得られた様々な気付き・教訓をもとに、迅速な判断・実行に向けた態勢作りを行うことで、今後の有事に備えてまいりたいと考えております。

 具体的には、共同調査・全損地域一括認定のさらなる精度向上や、損害認定・査定方法の一層の明確化を図り、迅速な保険金のお支払いとお客様の納得感の向上に向けた取り組みを進めてまいります。

(2)地震保険の一層の普及促進に向けて

 今回の震災を契機とするリスクへの関心の高まりにより、震災以降、家計地震保険の新規契約件数は107%を超える伸びとなっております(協会加盟会社全体、前年同月比累計ベース)。

 従来の広報活動などの取り組みに加え、各自治体との連携の下、市民講座の開催など様々な取り組みを実施することにより、地域に根ざした地震保険の普及促進活動を展開してまいります。

(3)安定的な地震保険制度の運営に向けて

 財務省に設置された「地震再保険特別会計に関する論点整理に係るワーキンググループ」において、地震再保険特別会計の廃止(国以外の主体への移管)の検討に関する論点整理が行われ、去る11月30日付けで政府の行政刷新会議に対して、「国(特別会計)を主体とする現行制度の方が、安心感・信頼性がより確保されるとする意見が多い」との報告がなされました。

 当協会といたしましても、国(特別会計)を主体とする現行制度の安心感・信頼性が従来にも増して必要であると認識しており、さらに、東海・東南海・南海の連続地震や首都直下地震の発生も懸念される中、お客様に、より安心して地震保険にご加入いただけるように、制度の強靭性を高める必要があるものと考えております。

 加えて、地震保険の商品・制度に関しましても、給付と負担のバランスや制度の持続性・安定性を考慮しつつ、寄せられたお客様の声を十分に踏まえた検討が必要であると認識しております。

 当協会といたしましても、引き続き有識者による検討の場に参画し、業界の社会的責任を果たすべく尽力してまいりたいと考えております。

2.その他の課題に関する具体的取り組み

 これまでの主な取り組みと今後の課題は以下のとおりです。

(1)地球環境保護の取り組み

 本年11〜12月、リサイクル部品活用の周知と推進を目的に「リサイクル部品活用推進キャンペーン」を実施しており、関係省庁の後援と関係団体の協賛の下、自動車ユーザーに対する活用推進を図っているところであります。

(2)業務品質向上への取り組み

 本年10月からスタートいたしました「損害保険募集人一般試験」につきましては、制度開始以降、14万人を超える申込みとなっており、「募集人・資格情報システム」の運用と共に概ね順調な滑り出しとなりました。

 また「そんぽADRセンター」につきましては、昨年10月の開設から本年9月までの1年間で、苦情処理手続き件数が2,380件、紛争解決手続き件数が293件となりました。指定紛争解決機関となる前の1年間の受付件数と比較すると、苦情については約1.7倍、紛争については約4.7倍となっております。これは、「そんぽADRセンター」の認知度の高まりと、お客様の金融ADR制度への期待の表れと受け止めております。

 引き続き、苦情・紛争の円滑な解決に取り組むと共に、寄せられた声を活かした業務品質の向上にも努めてまいります。

(3)事故防止・削減、防災・防犯、交通安全に向けた取り組み

ア.「盗難防止の日」
 本年10月7日、自動車盗難・車上ねらい・住宅侵入盗に対する防犯啓発活動を全国47都道府県で一斉に実施いたしました。

 また、「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクト」として、11月1日から第11次自動車盗難防止キャンペーンを開始し、自動車盗難への注意を呼び掛ける取り組みを実施しております。


イ.「ぼうさい探検隊」
 子どもたちが実体験の中で防犯や防災・交通安全について学ぶ「ぼうさい探検隊」は、震災の影響により2ヶ月遅れでスタートいたしましたが、今年度は344校・団体、1,643マップと、前年度(317校・団体、1,607マップ)を上回る過去最大の応募結果となりました。震災を契機として、「自分たちの住む地域は本当に大丈夫か」という視点で作り上げた、防災意識の高まりを実感できる作品が各地から多数寄せられております。

 引き続き、全国各地でのお取り組みを支援し、安心・安全な社会に向けた防災・減災への啓発活動を実施してまいります。

(4)国際的な監督規制への対応と健全性の向上

ア.G-SIFIs
 国際的に進む金融安定化への取り組みとして、本年11月のG20カンヌサミットで、銀行分野のG-SIFIs (グローバルにシステム上重要な金融機関)に対する政策枠組みが公表されました。

 保険分野におきましても、来年6月のG20メキシコサミットまでに、保険監督者国際機構(IAIS)で検討が進められる予定となっております。

 当協会としても、今後の動向を注視すると共に、損害保険業界への影響について積極的に意見を発信してまいります。


イ.IAIS年次会合
 本年9月30日、保険監督者国際機構(IAIS)の年次会合がソウルで開催され、世界各国の保険監督者および業界関係者の皆様に、東日本大震災の対応に関するプレゼンテーションの機会を頂戴いたしました。

 プレゼンテーションでは、東日本大震災における迅速な保険金のお支払いに向けた業界一丸となった取り組みについて報告すると共に、会員各社の財務健全性に対する影響が限定的であった理由として、政府の再保険に支えられた地震保険制度の有効性について報告いたしました。

 なお、その機会に韓国損害保険協会を訪問して同協会の幹部の皆様と会談いたしました。損害保険事業における高齢化問題や自動車の事故削減対策、そして海外への事業展開など、両業界に共通する課題について意見交換を行い、両協会間のさらなる関係強化を図りました。

(5)金融審議会

 本年3月に諮問された事項につきまして、3つのワーキング・グループ(WG)が設置され、活発な論議が行われてきました。

 損害保険業界として特に関係の深い「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方等WG」につきましては、当業界の置かれた状況や要望内容を十分ご理解いただくことができ、規制緩和の方向でお取り纏めいただけたものと認識しております。

 この規制緩和が実施された際には、M&Aを通じたより機動的な海外展開が可能になるとともに、事業再編、経営の効率化に向けた選択肢も拡大されることになるため、お客様利便の向上や企業価値の向上を実現できるよう取り組んでまいります。

(6)平成24年度税制改正要望

 去る12月10日に平成24年度政府税制改正大綱が発表されました。当業界からは、「受取配当等の二重課税の排除」を重点項目として要望いたしましたが、昨年度からの新たな変更は無く、益金不算入割合の引き上げは引き続き見送りとなりました。次年度以降の要望につきましては、今後、検討してまいりたいと考えております。

3.おわりに

 これまで、東日本大震災への対応を最優先課題として取り組んでまいりましたが、被災地の復興にはまだまだ相当な時間がかかるものと認識しております。今回の震災対応で得られた様々な気付きや経験を活かし、今後も損害保険業界の様々な課題に全力で取り組むことにより、「もっと安心で安全な社会」の実現に貢献してまいりたいと考えております。

 引き続き、皆様方のご支援・ご協力を何卒宜しくお願い申し上げます。

以上

東日本大震災における損害保険業界の取り組みと今後の課題(PDFファイル1.9MB)