年頭所感
                          社団法人 日本損害保険協会
                                 会長  隅 修三
(2012.1.1)


2012年の新春を迎えるにあたり、年頭のご挨拶を申し上げます。

1.昨年を振り返って

 未曾有の災害をもたらした東日本大震災から約10ヶ月が経過いたしました。被災された皆様へあらためてお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 昨年は、2月のニュージーランド地震に始まり、3月の東日本大震災、米国での竜巻やハリケーン、台風12号・15号の相次ぐ上陸、トルコの大地震、そしてタイの大洪水災害と、世界中でかつて例を見ないほどの大規模自然災害が発生いたしました。まさに「損害保険業界の真価が問われた1年」と言えます。

 当協会といたしましても、損害保険が被災各地の復旧・復興にお役に立てますよう、引き続き全力で取り組んでまいります。

 一方、我が国の景気は、サプライチェーンの立て直しによる生産の回復などにより、緩やかに持ち直しつつありますが、欧州債務危機の深刻化に伴う世界経済の減速や長引く円高、さらにはタイの大洪水災害などの影響によって、景気回復の勢いは鈍化してきており依然として厳しい状況にあります。


 今後、復興に伴う需要の顕在化や各種政策の効果などにより、持ち直しの基調が続くことが期待されますが、電力供給の制約、欧州債務危機などによる海外景気の下振れ、さらには円高や世界経済減速の影響からも貿易赤字の継続が懸念されるなど、決して楽観することはできないものと考えております。

 また、損害保険業界におきましても、正味収入保険料は微増いたしましたが、東日本大震災や台風などの自然災害の発生により正味支払保険金が大幅に増加した結果、保険引受利益は減少しております。また、資産運用面におきましても、株式市場の低迷などにより減益となっており、各社を取り巻く経営環境は、引き続き極めて厳しいものと認識しております。

2.本年の課題

(1)東日本大震災の対応を踏まえた今後の課題について

 損害保険業界といたしましては、これほど大規模な災害の対応に当たることは初めての経験でありましたが、日頃から災害への備えの必要性を訴え補償をご提供してきた者として、「被災者の生活の安定に資する」という社会的使命を遂行するべく、保険会社、代理店、そして行政も含めた「官民一体」「業界一丸」となった取り組みを行ってまいりました。

 これまでに、総額約1兆2,000億円の地震保険金をお支払いし、調査完了率は約99%となりましたが、震災対応は続いており、最後の1件に至るまで保険金のお支払いに努めてまいります。

 震災時における損害保険業界の最大の使命は「的確・迅速な保険金支払い」であり、また、会員全社一丸となった取り組みを確実に進めていくことが当協会の役割であることを、あらためて認識した次第であります。

 そのため、当協会では東日本大震災におけるこれまでの対応を総括し、以下3つの課題を掲げて推進してまいります。


ア.的確・迅速な保険金のお支払い態勢の構築
 東日本大震災の経験で得られた様々な気付き・教訓をもとに、迅速な判断・実行に向けた態勢作りを行い、今後の有事に備えてまいります。


イ.地震保険の一層の普及促進活動の展開
 従来の広報活動などの取り組みに加え、各自治体との連携の下、市民講座の開催など地域に根ざした地震保険の普及促進活動を展開してまいります。


ウ.安定的な地震保険制度の運営に向けて
 東海・東南海・南海の連続地震や首都直下地震の発生も懸念される中、お客様に、より安心して地震保険にご加入いただけるように、制度の強靭性を高める必要があるものと考えております。

 加えて、地震保険の商品・制度に関しましても、給付と負担のバランスや制度の持続性・安定性を考慮しつつ、寄せられたお客様の声を十分に踏まえた検討が必要であると認識しております。

 当協会といたしましても、引き続き有識者による検討の場に参画し、業界の社会的責任を果たすべく尽力してまいりたいと考えております。

(2)次期中期基本計画について

 当協会では、現状の環境認識を踏まえ今後中期的に重点を置いて取り組むべき課題を明確にするために、3年毎に中期基本計画を定めております。本年4月より、第6次中期基本計画をスタートさせる予定ですが、中でも、「事故・災害・犯罪の防止・軽減による社会的損失の低減」や「業界共通化・標準化の推進による消費者利便の向上と業務効率化」などを最重要課題とする方向で検討しております。

 これからも、中期基本計画を柱とした損害保険業界の様々な課題に全力で取り組むことにより、業界の健全な発展に貢献してまいります。

3.おわりに

 東日本大震災の対応において学んだ教訓や経験を活かし、“もっと安心で安全な社会”に向けて、業界の社会的使命を果たすべく、今後も業界一丸となって尽力してまいる所存であります。

 引き続き、皆様方のご支援・ご協力をお願い申し上げますとともに、本年が皆様にとって素晴らしい一年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。


以上