協会長ステートメント
会長 柄澤 康喜
(2013.6.13)

 昨年6月に日本損害保険協会会長に就任して以来、損害保険という重要なインフラと、その運用を担う損害保険会社を、より強い、確かな、信頼されるものにするために様々な取組みを行ってまいりました。この1年間の主な取組みや出来事を振り返り、ご報告と所感を申し上げます。

1. 協会長としての取組み

(1) 損害保険をより強い、確かな、信頼されるものにするための取組み

ア.お客さまに損害保険をより理解していただくための取組み

会長 柄澤 康喜

ア)お客さまの声・有識者諮問会議の設置
 損保業界に関する課題等を幅広く議論いただくために、「消費者の声」諮問会議を発展的に改組し、「お客さまの声・有識者諮問会議(以下「諮問会議」)」を立ち上げました。その傘下に作業部会(タスクフォース)を設けて「よりわかりやすい募集文書・説明のあり方」(以下「募集文書TF」)、「保険金犯罪・不正請求等を防止するための対策」(以下「保険金詐欺等TF」)について検討いただき、課題を整理していただきました(具体的には、ア.イ)、イ.ア)を参照)。これらを協会の取組みに活かしてまいります。

イ)共通化・標準化の取組み
 第6次中期基本計画の重点課題に沿って、事務手続きのルールやお客さま向け書類などを共通化・標準化する取組みを進めてきました。諮問会議・募集文書TFで検討いただいた「よりわかりやすい募集文書・説明のあり方」については、自動車保険のわかりやすい募集文書の試作品と、その実用化に向けた法制課題を、金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキンググループ」(以下「金融審・保険WG」)に報告しました。現在、会員各社向けガイドラインの策定、試作品のラインナップ拡大などの作業を進めています。これ以外の項目についても、共通化・標準化を進めていますが、加えて、代理店・保険会社の業務効率化等に資する業界内のシステム基盤の整備等の検討にも着手しています。

ウ)金融・保険教育の推進
 金融庁「金融経済教育研究会」の報告書が取りまとめられ、お客さまの金融リテラシーの向上を通じた公正で持続可能な社会の実現に貢献するために、金融経済教育の進め方等について整理がなされました。今後は、新設された「金融経済教育推進会議」において、習得すべき金融リテラシーの内容等の具体化等について議論されることとなりますが、協会としても、これらの議論を踏まえつつ、お客さまに保険をよりご理解いただくためのバイヤーズガイドの活用や高校生・大学生向けの講師派遣・連続講座の実施および学習教材の提供など、損害保険の啓発に努めてまいります。

エ)金融審議会における保険募集規制の見直し
 金融審・保険WGの報告書が取りまとめられ、お客さまのニーズを把握し、それに沿った商品を提案・重要な情報を提供することにより、お客さま自身がニーズに合った商品であることを確認したうえで保険に加入できるようにすることが募集人の義務として明確化されるなど、これまでお客さまサービスの向上のために取り組んできた事項も含め、保険募集に関する様々なルールが整備されることとなりました。同時に、報告書には、募集文書のあり方を始め、細かな規制よりも保険募集の現場における創意工夫が有効となり得るとの考え方も示されています。この趣旨に沿って、保険に対するお客さまのご理解を深めるための検討を重ね、会員各社の創意工夫をサポートしてまいります。

オ)損害保険大学課程の運営開始
 募集人が更なるレベルアップを目指す枠組みとして「損害保険大学課程」を創設し、日本損害保険代理業協会と共同で、昨年7月から「専門コース」、本年4月から「コンサルティングコース」の運営を開始しました。すでに法律や税務の知識を習得した、3.5万人を超える「損害保険プランナー」が活動しています。保険募集規制の見直しに関する金融審・保険WGの議論やその報告書の趣旨も踏まえつつ、引き続き、お客さまに対してより適切で、より質の高いアドバイスを行える募集人を増やしてまいります。

カ)そんぽADRセンターの機能強化
 協会内に設置した「そんぽADRセンター」では、お客さまから寄せられた重大なトラブル事案等について、会員会社に対して注意喚起や改善勧告を行う仕組みを導入し、会員各社の苦情対応の更なる強化を図っています。金融庁の「金融ADR制度のフォローアップに関する有識者会議」の報告書等も踏まえ、お客さまの声をより真摯に受け止め、業務運営に活用するための体制を更に強化してまいります。

イ.社会的損失を最小限に抑えるための取組み(保険金詐欺や不正請求等の防止)

ア)保険金詐欺・不正請求等の防止のための取組み
 私自身、英国や韓国の保険協会との保険金詐欺・不正請求防止に関する情報交換を行ったほか、消費者のモラル意識に関する調査の結果等を踏まえ、今年1月から、協会内に「保険金不正請求対策室(以下「対策室」)」を立ち上げ、「保険金不正請求ホットライン」の運営や、損害保険各社からのデータの収集と分析、保険金詐欺の実態把握などに取り組んでいます。また、諮問会議・保険金犯罪等TFにおいて、保険金詐欺等を防止するためのデータベースのあり方、自動車盗難対策、警察との連携のあり方、雪災被害の修理等を偽装した不正請求への対策に関する様々な提言をいただきました。これら提言等を踏まえ、今後も、対策室を中心に、お客さまへの周知活動を含めた取組みを加速させてまいります。

保険金不正請求ホットライン


イ)事故の防止・軽減に資する取組み
 交通事故による社会的損失の防止・軽減に向けて、交通事故実態の分析を行い、各種の提言や啓発活動を行ったほか、防犯・防災に関する啓発活動も全国で実施しました。また、「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」における検討への参加、「盗難防止の日」の取組み等自動車盗難防止に向けた啓発活動等を行いました。盗難の総数は大幅に減少していますが、手口が巧妙化しており、更なる対策を検討し、関係先への働きかけも強化してまいります。

ウ)リサイクル部品の活用の推進
 自動車修理においてリサイクル部品を活用することにより、環境への負荷と修理費用を同時に軽減することができます。引き続き、関係する諸機関とも連携して、その活用を推進してまいります。

(2)損害保険会社、損害保険事業をより強い、確かな、信頼されるものにするための取組み

ア.損害保険会社の健全性を高めるための取組み

ア)税制改正への対応
 平成25年度税制改正大綱において、火災保険等に係る異常危険準備金の特例積立率を5%に引き上げ、制度を3年間適用する措置が講じられることとなりました。この措置の活用により、近年の大規模な自然災害で減少した異常危険準備金の残高の早期回復に努めてまいります。また、本日、来年度で経過措置が終了する特別利子制度の恒久化(損害保険会社の積立勘定から支払われる利子の負債利子控除対象からの除外)などを重点要望項目とする平成26年度税制改正要望を取りまとめました。業界一丸となって関係各方面に働きかけてまいります。

イ)地震保険制度の見直し
 平成25年度予算において、地震保険制度の強靭性を高めるため官民の負担割合が見直されました。保険金支払がより確実となり、地震保険制度に対する更なる安心感が確保されたものと認識しています。被災者の生活の安定に寄与するという目的に鑑み、引き続き、地震保険の普及に努めてまいります。

ウ)事業継続態勢の強化
 想定される大地震においてもお客さまに影響が生じないよう、協会の事業継続計画(BCP)を見直し、会員会社の重要業務に対するサポートなどの優先事項について、業務手順書を整備しました。また、関係当局等の協力も得て、災害時の代替拠点における訓練を実施しました。その結果等を踏まえて計画内容の見直しを含め、更なる態勢強化を図ってまいります。

エ)国際的な保険監督規制への対応
 保険監督者国際機構(IAIS)において論議されている「国際的に活動する保険会社グループの監督のための共通枠組み(ComFrame)」や「グローバルにシステム上重要な保険会社(G-SIIs)」に対する規制について、保険会社の事業の特性を踏まえたものとなるよう、積極的に意見を表明しました。国際的な保険監督規制が、損害保険事業の特性等を踏まえた、国際展開する保険会社グループに健全性強化を促す枠組みとなるよう、今後も、情報発信や相互交流等を通じて適切に対応してまいります。

オ)金融機関の秩序ある処理の枠組み
 市場等を通じて伝播するような危機に対する秩序ある処理のため、銀行、証券会社、保険会社などすべての金融機関を対象とする制度が導入されることとなりました。制度の細部の設計に際して、損害保険業を含む各業態の特性を踏まえた議論・検討を求めていくとともに、新たな制度に適切に対応するための準備を進めてまいります。

イ.お客さまのニーズに応える損害保険事業の多様化のための取組み

ア)金融審議会における業務範囲規制等の見直し
 金融審・保険WGにおいて、保険会社間の共同行為制度の条件を緩和することを提言し、リスクや損害に関するデータの蓄積を制度的に後押しすることの意義を認識いただくことができました。また、保険金信託業務や防災コンサルティングにおける付随業務など業務範囲を拡大する提言に対しても、広くご理解をいただいたものと認識しています。今後の制度改正を見据えつつ、引き続き、お客さまの多様なニーズにお応えしてまいります。

イ)諸外国の保険関係機関との交流
 国内外の損害保険業の発展に向けた取組みの一環として、昨年10月、国際保険協会連盟(GFIA)に発足と同時に加盟しました。また、ミャンマー、カンボジア等において、損害保険事業総合研究所と共同でISJ(日本国際保険学校)を開催したほか、ベトナム、インドをはじめ、アジア各国の協会・当局等と自由化・規制緩和のもとでの協会の役割・活動などに関する意見交換を行いました。インドネシアとの間では、損害保険料率算出機構、損害保険事業総合研究所とともに、損害保険制度に関する技術支援などの協力関係を構築していくことについて合意し、料率算出団体の設立を支援することとなりました。
 引き続き、諸外国との情報・意見交換に取り組んでまいります。

ウ)官民ラウンドテーブル
 監督当局と損保業界を含めた金融業界の対話の場として「官民ラウンドテーブル」が立ち上げられ、3つのテーマについて報告書がまとめられました。金融機関が実体経済を支えていくため工夫を重ね、これを通じて自らも成長していくための問題意識、解決の方向性が提示されています。当協会も、アジアにおける保険の技術支援、高齢化社会への対応など実行できる取組みに早期に着手するとともに、会員各社に対するサポートも行ってまいります。

2. おわりに

 国民生活・経済をバックアップするという損害保険の役割、その大きな社会的意義は、現在も、そして将来にわたっても、変わりません。一方、経済・社会の変化に伴い、損害保険に対する期待は変化していくため、この期待に応え続けるには、損害保険がいま以上に高度な役割を担っていく必要があると考えます。損害保険業界としてわが国の国民生活・経済の未来への礎を作り、より強固なものとしていくため、不断の努力を積み重ねてまいります。

 この1年間、損保協会・会長としての業務を遂行するにあたり、皆さまから、温かいご支援、ご協力をいただいたことにつきまして、心よりお礼を申し上げます。引き続き、損保業界・協会に対するご理解・ご協力を宜しくお願い申し上げます。

以 上