協会長ステートメント

会長  二宮 雅也

(2014.6.12)

 日本損害保険協会会長として、この1年間の主な取組みや出来事について、ご報告と所感を申し上げます。

1.はじめに

会長 二宮 雅也

 振り返りますと、昨年から、さまざまな金融政策、財政政策そして成長戦略が実行されてきました。本年4月以降、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が懸念されましたが、国内景気は緩やかな回復を続け、我が国の経済は堅調に推移しています。
 損害保険業界におきましては、2月の大雪の影響を一定受けたものの、主として資産運用粗利益の増加により、おおむね良好な2013年度決算となりました。自動車保険の損害率につきましても、依然として高い水準ではあるものの、着実に改善傾向が見られるようになっています。
 このように国内の損害保険マーケットを取り巻く現在の環境には改善が見られるものの、中長期的視野に立ちますと、少子高齢化の進行や人口減少社会の到来を見据える必要があります。
 損害保険業界では、社会構造や国民ニーズの変化を的確に捉え、今後も業界の持続的な成長に向けた基盤整備を実行していく必要があると認識しています。

2.第6次中期基本計画の取組み

 協会長就任時に定めた重点課題について、次の取組みを進めてまいりました。

(1)事故や災害、犯罪による社会的損失の低減 〜安全な社会の形成〜

ア.保険金詐欺や不正請求の防止に向けた取組み

 損害保険業界では、損保協会や損害保険各社が一丸となって、保険金詐欺や不正請求の防止に向けた取組みを推進しています。
 不正請求の検知を損害保険各社が別々に行うことには限界があります。そのため、損害保険業界で不正請求に関するデータを共有し、保険金詐欺や不正請求を未然に防ぐとともに、必要に応じて保険金詐欺や不正請求の摘発に向けて警察と連携を行っています。
 また、今般、不正請求疑義事案を検知する仕組みとして「保険金請求歴表示システム」の開発を決定しました。このシステムは、事故対応の初期段階で、保険金請求歴情報を当該事故の対応を行う損害保険会社に提供するものであり、2015年度から人(ひと)保険分野の情報提供を開始し、以降、順次種目を拡大していく予定です。  一方、グループで結託して不正請求を繰り返す集団を検出するため、昨年6月に関係者のネットワークを図式化するシステムを導入しており、本年5月から運用を開始しています。
 保険金詐欺や不正請求の防止策の効果は「データベースの構築・拡充」、「調査・対応体制の整備」、「啓発活動の推進」に複合的に取り組むことで高まります。今後も、実効性のある取組みを実行し、一層の不正請求防止に努めてまいります。

イ.防災・防犯・交通安全に向けた取組み

 損保協会では、業界が蓄積している防災・防犯・交通安全に関するノウハウについてさまざまな場面や媒体を通じて情報発信しています。
 小学生が自分の住むまちを探検しながら、実体験を通じて防災・防犯・交通安全について学ぶ「ぼうさい探検隊」の取組みは2013年度に10年目を迎え、過去最多となる2,191マップの応募をいただきました。この取組みは、子どもたちの安全・安心への意識を高めるだけでなく、地域ぐるみの防災教育にも役立ちます。東日本大震災以降、防災教育の裾野は着実に拡がっており、今後も地域の防災・防犯・交通安全などに資する取組みを支援してまいります。
 昨今、自転車事故の高額賠償判決が散見されるようになりました。損保協会では、自転車の事故加害者としての側面を知っていただくとともに、安全運転のための心得などについて消費者の皆さまを啓発するため、全国の講演会に講師を派遣しています。また、損害保険業界では、安心して自転車をご利用いただくため、個人賠償責任保険や傷害保険など、自転車事故の際に保険金をお支払いする保険の情報提供に努めています。
 さらに、損保協会の地域支部を活動の拠点として、「盗難防止の日」の活動や全国各地の交通事故多発交差点についての注意喚起と事故低減に向けた提案など、地域に根ざした防災・防犯・交通安全などに関する啓発にも取り組んでいます。

(2)損害保険のわかりやすさと安心感の向上の追求 〜安心して加入できる保険へ〜

ア.共通化・標準化の取組み

 損保協会では、消費者利便の向上と代理店・損害保険各社の業務効率化のため、事務手続きや手続き書類などについて、ルールや様式の共通化・標準化を進めています。
 保険を契約する際に使用する重要事項説明書につきましては、文字数を大幅に削減し、図表を挿入するなど見易さ・わかりやすさの向上を図った改善案を策定し、金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキンググループ(保険WG)」への報告を経て、2013年9月に「契約概要・注意喚起情報に関するガイドライン」にその内容を反映させました。
 また、この他にも、契約時に必要となる書類の種類や様式の共通化など、2014年3月末までに50件の共通化・標準化を実現させており、今後も不断の取組みを進めてまいります。

イ.損害保険募集人の資質向上

 損害保険に対するお客さまの信頼を向上させるためには、損害保険募集人の資質向上が欠かせません。
 損害保険業界では、2013年12月から、損害保険募集人一般試験の自動車・火災・傷害の各保険の商品単位試験に合格した者でなければ、当該種目の保険募集を行えないこととしました。
 また、損害保険募集人が一層のステップアップを目指すための仕組みとして、2012年7月に日本損害保険代理業協会と共同で「損害保険大学課程」の教育制度を導入しました。
 現在、同課程の専門コース試験に合格し、損保協会が認定した「損害保険プランナー」は5万人に達しています。また、損害保険プランナーの中から、さらに実践的な知識や業務スキルを修得した、損害保険募集人の最高峰の資格である「損害保険トータルプランナー」も今月末に誕生する予定です。
 損害保険業界では、今後も損害保険募集人の知識やスキルを高めるための取組みを推進してまいります。

ウ.金融経済教育の推進

 損害保険の理解促進につなげるため、損保協会では18大学に「損害保険概論」などの連続講座を提供しています。また、金融経済教育推進会議に実施主体として参画しており、消費者の皆さまの損害保険リテラシーの向上に努めています。

エ.地震保険制度の各種課題への対応

 地震保険制度については、2012年11月の財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」報告書において諸課題が整理され、巨大地震の連続発生に備えた官民保険責任額の改定や本年7月の地震保険料率の改定など、多くの見直しが実施されました。また、昨年11月から本年1月にかけて開催された同プロジェクトチームのフォローアップ会合では、より迅速な損害査定のための新たな方法など、残る課題について検討状況を報告しています。
 「自助」としての地震保険は、災害時の当面の生活安定に向けて重要な役割を発揮するものであり、今後も業界を挙げて普及促進に努めてまいります。また、地震保険制度が消費者の皆さまから一層の信頼をお寄せいただけるものとなるよう、引き続き官民で連携して検討を進めてまいります。

オ.お客さまの声・有識者諮問会議の開催

 6月2日にお客さまの声・有識者諮問会議を開催し、保険金詐欺・不正請求等防止対策、高齢者対応などの損保協会の取組みについて、委員の方々から多数のご意見をいただきました。いただいたご意見は今後の取組みに活かしてまいります。
 なお、高齢者対応につきましては、現在、課題の洗い出しを行っており、損害保険業界として幅広く対応策の検討を進めてまいります。

(3)業界の持続的発展と健全な成長 〜将来に向けた取組み〜

ア.保険募集・販売ルールの整備に向けた対応

 今般、金融審議会・保険WGの報告書を受けた保険募集・販売ルールの大幅な見直しなどを内容とする改正保険業法が公布されました。今後、改正法を受けた細則の検討が加速していくものと見込まれます。また、法改正を待たずに、保険募集人などに関して、報告書を踏まえた行政上の監督対応も実施されています。
 本件については、損保協会内に設置した保険WG報告書対応プロジェクトチームにおいて課題整理や情報連携を実施しており、今後も、会員各社や損害保険代理店の実務対応を的確なものとするための取組みを進めてまいります。

イ.国際的な動向への対応

 保険監督者国際機構(IAIS)などの国際機関において、金融システムの安定化や財務健全性の確保、国際的に活動する保険グループに対する新たな監督枠組みの構築など、金融機関に対する新しい国際的制度・規制の議論が進められています。
 金融システムの安定化や財務健全性の確保については、「国際的な保険資本基準 (ICS)」などの資本規制の策定に向けた検討が進んでおり、損保協会でもさまざまな意見表明を行っています。

ウ.アジア支援の取組み

 損保協会では、アジア地域の損害保険業界の相互理解と交流強化を目的として、40年以上に亘り日本国際保険学校(ISJ)を開催しています。
 また、2013年度は、インドネシアにおける料率算出団体設立支援、ASEAN保険会議へのパネリスト派遣、ミャンマー民間保険会社代表団の受け入れ、モンゴル国際保険フォーラムへの参加など、アジア諸国の保険関連団体との交流を促進した年となりました。
 新興国の中には、損害保険事業が発展段階にあり、健全かつ安定的な成長のためのインフラが十分に整備されていない国があります。損保協会では、わが国の損害保険業界が培ってきた先進的な制度やソフトインフラのノウハウを提供することにより、アジアなどの新興国における損害保険事業の持続的な発展と健全な成長を支援する取組みを今後も推進してまいります。

3.おわりに

 協会長就任にあたり、「第6次中期基本計画の取組みのスピードアップ」を掲げ、「社会的損失の低減」、「損害保険のわかりやすさと安心感の向上の追求」、「損害保険事業の環境整備」を重点課題と位置付け、この1年間取組んでまいりました。いずれの課題につきましても、第6次中期基本計画の中間年として着実に前進させることができたものと考えております。
 この1年間、協会業務を遂行するにあたり、皆さまから温かいご支援、ご協力をいただき、心より御礼申し上げます。

 われわれ損害保険業界は、今後とも、お客さまのニーズをしっかりと捉え、より良い保険商品やサービスの提供を通じて、日本経済の成長、ひいてはより良い社会の実現に貢献できるよう、各種の取組みを展開してまいります。
 引き続きのご理解、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。


以 上


2014年6月 協会長ステートメント(PDFファイル)