協会長ステートメント

会長  櫻田  謙悟


(2015.3.19)

 協会長に就任して約9ヵ月が経過しようとしています。その間の主な活動や出来事につきまして、ご報告するとともに所感を申し上げます。

1.第7次中期基本計画の決定について

 損害保険協会では、本日の理事会において、2015年度が初年度となる第7次中期基本計画(2015年度〜2017年度)を決定しました。損害保険業の健全な発展と信頼性の向上を通じて安心・安全な社会づくりに貢献していくため、5年・10年先の環境と損害保険業界に与える影響を見据え、「超高齢社会」、「グローバル化」、「新たなリスク」、「自然災害」、「保険犯罪」、「新たな募集態勢の構築」、「消費者からの相談・苦情・紛争解決」、「消費者教育」の8項目を重点課題として位置づけ、計画の実行に取り組んでまいります。

(1)超高齢社会への取組み

 我が国は、人口に占める65歳以上の割合が2020年に約30%、2050年には約40%に達するなど、これまで世界が経験したことの無い超高齢社会へと本格的に進行することが見込まれており、中長期的には潜在成長率や、社会保障を中心とした財政への影響が懸念されています。我が国が、次世代への責任を果たせる、課題解決先進国を目指していくためにも、超高齢社会に対して損害保険業界としてどのような貢献ができるのか、課題の整理に取り組むことが重要であると考えています。
 また、超高齢社会の進行により、高齢の運転免許保有者も増加します。業界として、高齢者の交通事故に対する効果的な防止策を講じることが必要であると認識しており、高齢者事故の防止・減少に向けた事故分析と研究、その結果を踏まえた啓発活動などに取り組んでまいります。超高齢社会において見込まれる課題、損害保険業界が果たすべき役割については、「お客さまの声・有識者諮問会議」の傘下に設置した作業部会(タスクフォース)において、外部有識者からなるメンバーにご議論いただくこととしています。

(2)グローバル化への取組み

 金融・保険のグローバル化により、各国の金融・保険規制の国際的な収れんや調和の必要性が高まる中、保険監督者国際機構(IAIS)において「グローバルな保険資本基準(ICS)」の策定が進められるなど、国際的な監督基準策定の動きが加速しています。損害保険協会では、我が国の損害保険業界に重要な影響を与える可能性のある国際規制等の動向を注視しつつ、意見表明を行ってまいります。
 また、アジアの金融インフラ整備支援においては、損害保険料率算出機構や損害保険事業総合研究所と連携し、我が国の料率算定制度など、ソフトインフラの技術支援に引き続き積極的に取り組んでまいります。
 一方、国内においては、我が国の観光立国実現に向けて、政府が東京オリンピック・パラリンピックの開催される2020年までに訪日外国人旅行者数2,000万人達成を目指す中、官民によるさまざまな取組みが進められています。損害保険協会は、訪日外国人旅行者の交通事故防止を目的として、本年1月に、雪道の自動車運転におけるスリップ事故防止の注意喚起チラシを英語版で作成し、啓発活動を行いました。今後は、外国人居住者への対応も含め、外国人に対する十分な情報提供のあり方について整理・検討を進めてまいります。

(3)新たなリスクへの取組み

 政府の「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」において2014年6月に取りまとめられた「官民ITS(高度道路交通システム)構想・ロードマップ」では、準自動走行システム(レベル3)は2020年代前半に市場化が期待され、完全自動走行システム(レベル4)は2020年代後半以降に試用化の方向と想定されています。
 また、少子高齢化の中で、労働力の確保や生産性の向上という我が国が抱える課題の解決に向けたロボットの活用が、介護、医療、農業などの分野で期待されています。本年2月には政府の「ロボット新戦略」が決定するなど、世界一のロボット活用社会を目指した取組みも推進されています。
 これら自動運転車などのITS、ロボット、再生医療などの新たな技術や新産業の発展により、リスクの形態や質も変わってくるものと考えられます。損害保険協会では、自動車に関連した課題の整理については既にプロジェクトチームを設置して検討を開始しており、自動運転機能を持つ自動車の実証実験により想定される事故形態を分析し、道路交通法等の現行法制下では自動車保険の適用についてどのような問題が生じるか等の整理を行っています。今後も、関連法制度の動向を注視しつつ、検討範囲の拡大も含めて、引き続き取り組みを進めてまいります。損害保険業界はリスクの専門家として、これらの変化を見極め、法の課題を整理し、会員各社におけるさまざまな商品やサービスの提供などを通じ、新技術普及のサポートに向けて取り組んでまいります。

(4)自然災害への取組み

 我が国は、世界有数の地震や噴火活動の活発な国として知られています。近年では、世界的な気候変動による影響から局地的な集中豪雨が頻発するなど、従来の想定を超える規模の自然災害も発生しています。損害保険協会としては、災害へのレジリエンス(耐力)の強い社会づくりへの貢献として、自然災害の発生実態や地域特性などに基づく、より効果的な防止策の提案など、防災・減災に関する取り組みを推進し、未経験の災害が発生する「ニューノーマル」に備えていきます。
 また、子どもたちが、自分の住むまちを探検しながら、防災・防犯・交通安全について学び、マップにまとめる「ぼうさい探検隊」や、文部科学省が推進している「土曜日の教育活動推進プロジェクト」などの取組みを通じ、自治体や学校などと連携しながら、幼稚園からシルバー世代までの「年代別防災教育プログラム」を新たに構築するなど、地域の災害特性を反映した防災・減災への取組みを強化してまいります。

2.国連防災世界会議への参画について

 第3回国連防災世界会議が、今月14日から18日まで開催されました。東日本大震災の発生から4年を経て、被災地である仙台市で開催された同会議では、日本をはじめ世界の防災に関するさまざまな最新の知見が発信されました。
 自然災害に対する取組みは、損害保険業界としても中長期的な重要課題であり、損害保険協会は、本体会議のワーキングセッション、およびパブリック・フォーラムに参画しました。東日本大震災で損害保険業界が果たしてきた役割やその経験などを踏まえ、我が国の、そして世界の防災・減災文化の発展に貢献できるよう、引き続き積極的に取り組んでまいります。

(1)本体会議への参画

 世界各国の代表が国際的な防災戦略を議論する国連主催の本体会議には、国連に加盟する世界193カ国から、各国首脳・閣僚を含む政府代表団、国際機関、認定NGOのメンバーなど5,000人以上が参加しました。
 損害保険協会は、3月14日に開催されたワーキングセッション、「Disaster Risk Transfer & Insurance(自然災害のリスク移転と保険)」において日本政府と連携し、協会長が、日本を代表してパネルディスカッションに参加しました。
 同セッションでは、1966年に制定された「地震保険に関する法律」により創設された、日本が誇るべき官民一体運営の地震保険制度、とくに、東日本大震災では損害保険業界が一丸となった取組みにより1兆2千億円を超える保険金を早期にお支払いできたことで地震災害からの復旧・復興に極めて有効に機能した点などについて、プレゼンテーションを行いました。また、近年では自然災害による集積リスクに対応するために、さまざまなリスク移転手法が開発されていることから、各国の自然災害補償制度など、有効なリスクファイナンス手法の共有も行われました。

(2)パブリック・フォーラムへの参画

 損害保険協会では、一般市民向けに開催されたパブリック・フォーラムに参画し、「地震保険」と「防災教育」をテーマに情報発信を行いました。
 「地震保険フォーラム」では、地震保険制度の仕組みや、普及促進に向けた取り組みなどについて、トークセッションやパネルディスカッションを開催しました。
 「防災教育フォーラム」では、損害保険協会の取組み開始後、10年を経過した「ぼうさい探検隊」の表彰式を開催するとともに、これまでの10年の振返りとこれからの10年の展望として、子どもを主役とした地域に根ざした防災教育の今後のあり方について、有識者によるパネルディスカッションを開催しました。
 損害保険協会では、パネルディスカッションなどを通じて得たさまざまな知見を、今後の地震保険の普及促進、防災教育活動に活かしてまいります。

3.その他の取組状況

(1)改正保険業法、民法改正などへの対応

 2016年5月末に施行が予定されている改正保険業法では、環境変化を踏まえた、より適切な保険募集・販売を促進するため、意向把握義務や保険募集人の体制整備義務などが導入されます。本年2月には、細則となる府令や監督指針の改正案がパブリックコメントに付されています。損害保険協会では、実務も踏まえた上で、損害保険業界のサービス品質向上のためにより良い制度となるよう、意見提出するとともに、新設される義務に対して適切に実務対応ができるよう、関連するガイドラインや、事務手続きに係る共通化・標準化の追加・見直しなどの準備を進めてまいります。
 次に、本年2月に開催された法制審議会総会においては、「民法(債権関係)の改正に関する要綱」が決定されました。変動制となる法定利率を損害賠償額算定にかかる中間利息控除に用いるなど、損害保険実務への大きな影響が想定される事項も含む法改正となることから、業界として適切に対応していけるよう取り組んでまい ります。
 3点目として、平成27年度税制改正要望については、重点要望項目として「受取配当等の二重課税の排除」を要望していましたが、「平成27年度税制改正大綱」において、受取配当等の益金不算入制度の縮減等が決定されました。ただし、保険会社については、影響が広くお客さまに及ぶおそれがあることなどから、持株比率5%以下の株式からの受取配当等について益金不算入割合を40%とする特例が創設されました。

(2)地震保険における新たな損害査定手法の検討

 財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム・フォローアップ会合」において、首都直下地震など、今後予想される巨大地震発生時にも迅速な保険金支払が確保されるよう、新たな損害査定手法の検討が進められています。損害保険協会は、2月4日に開催された同会合において、お客さまからの自己申告方式における対象物件等の拡大、査定アプリを活用したモバイル端末による現場立会調査の導入などの査定簡素化を、2015年度から順次実施することについて、報告しています。
 地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的に創設された制度であり、損害保険協会では、より迅速な損害査定を実現する態勢の構築のため、引き続き官民で連携して取り組みを進めてまいります。

(3)保険金詐欺、不正請求防止の取組み

 不正請求疑義事案を検知する仕組みとして開発を進めてきた「保険金請求歴情報交換システム」が完成し、2015年4月から運用を開始します。このシステムは、損害保険協会が蓄積している、傷害保険、自動車保険の対人賠償補償や人身傷害補償などの人(ひと)保険分野における会員会社の保険金請求歴情報を、事故対応の初期段階で、保険金の請求を受けた会員会社に提供するものです。不正請求疑義事案の早期検知に有効であることから、今後は対象種目を順次拡大していく予定です。
 損害保険協会では、これまでにも保険金不正請求データベースの充実、不正行為関係者のネットワーク分析システムの活用などを推進してきましたが、引き続き、より実効性ある不正請求防止に向け、一層の態勢整備を進めてまいります。

(4)自賠責保険の広報活動と運用益拠出事業

 自賠責保険は、交通事故の被害者保護を目的とした保険であり、すべての自動車とバイクに加入義務があります。損害保険協会では、3月を中心に、女優の北乃きいさんを広報キャラクターに起用した広報活動を実施しており、「必ず加入」「被害者を守る」「更新を忘れない」という点を訴求ポイントとして、「わたしは入ってる。だって運転するから。」というメッセージに託して、自賠責保険の認知・理解促進を呼びかけています。
 自賠責保険の運用益を活用した事業については、2015年度は新たに「高齢者交通事故の原因とその施策に係る研究」の実施も含め、引き続き、自動車事故被害者対策や事故防止対策を中心に取り組んでいくこととしています。

4.おわりに

 協会長としての任期も残り約3ヶ月となりました。
 本年4月より、いよいよ第7次中期基本計画がスタートします。さまざまな環境変化を踏まえ、損害保険業界が果たすべき役割を十分に認識し、会員各社の知見を結集して取り組んでまいります。
 引き続き、皆さまのご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。


以 上


第7次中期基本計画(PDFファイル)

2015年3月 協会長ステートメント(PDFファイル)