協会長ステートメント(2016年3月17日)

会長  鈴木 久仁


(2016.3.17)

 日本損害保険協会の会長に就任し、約9ヶ月が経過いたしました。この間における主な取組みにつきまして、ご報告するとともに所感を申し上げます。

1.はじめに

 東日本大震災から5年が経過しました。大震災で亡くなられた方々とそのご遺族に対し、改めて、深く哀悼の意を表しますとともに、今もなお、避難生活を余儀なくされている方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 5年という節目を迎え、当時、我が国に甚大な影響を及ぼした状況を思い起こし、損害保険や各種サービスを通じて、経済および国民生活の安定と向上を担う、損害保険業の責任の重さを痛感しております。
 損害保険業界においては、この大震災が我々に与えた教訓を決して忘れず、 お客さまをリスクからお守りするという損害保険業界に課せられた使命、その社会的責任を全うしてまいります。

2.重点取組みについて

(1)消費者向け啓発・教育活動の推進

 3月8日に、大学生を対象とした東日本大震災5年シンポジウム「もっと!防災〜東日本大震災の教訓から、防災・減災について考える〜」を東京にて開催し、多数のご参加をいただきました。本シンポジウムでは、明治大学大学院の中林教授をお招きし、首都直下地震等、今後発生が懸念される巨大自然災害を踏まえた防災のあり方をテーマとした講演のほか、被災地でボランティア活動を行っている学生や専門家による、防災・減災の現状やあるべき姿をテーマとしたパネルディスカッションを行いました。参加した大学生からは、「改めて、自助・共助の大切さを認識した。自分自身で防災・減災について、何ができるか考えたい」といった声もいただいており、若い世代にとって改めて、防災・減災の重要性を認識する機会となったものと実感しております。本シンポジウムを契機に、参加した大学生が地域防災やボランティア活動を担う若きリーダーとなってくれることを期待しております。
 また、消費者向け啓発・教育活動の更なる推進に向けて、保険会社のOB・OGに消費者教育の講師を担ってもらう「シニアコンダクター制度」を立ち上げました。3月18日には、東京都内の高校で1、2年生を対象に、自転車事故における賠償リスクに関する講演を行い、自転車事故においても、加害者となった場合には、被害者へ数千万円もの賠償金支払いを求められる判決事例もあり、こうしたリスクへの備えとして、保険加入が有効となることをお伝えいたします。今後も、損保OB・OGが持つ損害保険に関する知識や経験を生かし、地域での消費者向け啓発・教育活動がいっそうきめ細かく、より効果的なものになるよう、本制度を積極的に活用してまいります。  

(2)地震保険の普及促進

 地震保険普及の重点取組地域として選定した11道府県、全ての地域において、地震に関するフォーラムイベントを2月までに開催し、地域住民の皆さまを中心として、延べ1,800名超の方々にご参加いただきました。このフォーラムイベントでは、地震の専門家や行政の防災責任者をお招きし、居住地域における過去の大規模地震の発生状況や将来の地震発生リスク等に関する講演を行いました。また、都道府県損害保険代理業協会の各地代表者から、地震保険が、被災後の生活の再建に役立つ、自助の備えとして有効なものであることをお伝えし、参加者からも「地震保険が、被災後の大きな力になると実感した。」との声をいただきました。
 加えて、マンション共用部分における地震保険の必要性をご理解いただくため、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪にて、一般社団法人マンション管理業協会会員会社向けの説明会を実施いたしました。この説明会では、東日本大震災時での実際の保険金支払い例を挙げ、地震保険がマンション共用部分の復旧費用等に役立つものであることをお伝えしてまいりました。

(3)地域の実態に応じた「防災・減災」取組みの推進

 当協会では、大規模災害の発生が危惧される地域や記録的な災害が発生した地域のうち6地区で、地域のリスク実態に応じた防災・減災の啓発活動を進めており、これまでに、熊本県、高知県、広島県、京都府、徳島県にて、講演会やシンポジウム等を開催してまいりました。2月28日に開催した広島県では、「平成26年8月豪雨」において甚大な被害をもたらした土砂災害を踏まえ、行政の防災責任者や大学教授等の専門家をお招きし、防災対策の現状や地域防災力向上に関する講演を地域住民向けに行いました。また、大規模な土砂災害が発生した際には、避難生活を余儀なくされることも想定されるため、避難所の開設や運営を学ぶ、図上演習も実施いたしました。
 近年、自然災害が大規模化・多様化するなか、防災・減災の重要性は益々高まっていると言えます。今後も、安心・安全な地域社会づくりに資する、こうした活動に取り組んでまいります。

3.各種課題への取組みについて

(1)超高齢社会への取組み

 高齢者の方に安心して損害保険へご加入いただけるよう、契約時の注意点を分かりやすくまとめた冊子「知っ得!ガイド」を改定いたしました。改定にあたっては、有識者や全国消費生活相談員協会のご意見を踏まえ、高齢者が当事者となるケースが増加している交通事故や、住宅修理サービスでのトラブル等、生活上、「巻き込まれやすいトラブル」への注意喚起を新たに追加いたしました。
 また、2016年4月から障害者差別解消法が施行されることを受け、当協会では、障がい者への対応に係る基本方針を定めました。会員会社各社は、この基本方針を踏まえ、障がい者に対して、契約・支払い手続き等において、不当な差別的取扱いをしないこと、および、合理的な配慮をすることに努めてまいります。

(2)グローバル化への取組み

 12月15日・16日に金融庁主催のワークショップがベトナムで開催されました。このワークショップでは、ロスアジャスター向けの研修を実施する自研センターと連携して、わが国の「損害保険とロスアジャスター制度」について説明を行い、参加者の方々から高い関心をいただきました。カンボジアにおいては、同国保険協会からの要請もあり、募集人試験・教育制度導入検討に対する支援を開始いたしました。今後におきましても、アジアの金融インフラ支援整備に資する、保険技術協力を積極的に推進してまいります。
 また、外国人居住者の増加を踏まえ、英語版情報提供WEBサイト「Guide to Living Safely in Japan」を作成いたしました。比較的安全といわれている日本においても、日常生活にはさまざまなリスクが存在していることから、本サイトを通じて、外国人居住者の方々にもリスクへの備えとなる損害保険をご理解いただきたいと考えております。

(3)新たな募集態勢の構築への取組み

 本年5月における改正保険業法の施行に伴い、情報提供義務・意向把握義務等の保険募集に係る基本的ルールの創設が行われるとともに、適切な保険募集を行うための体制整備が保険代理店にも求められます。当協会では、これまでに、各種ガイドライン等を改定し、会員各社を通じて周知するなど、法改正への対応を進めてまいりました。施行まで残り約2ヶ月となりましたが、保険業界の信頼性確保に向けて、万全の保険募集態勢を構築できるよう、損害保険代理店と共に引き続き取り組んでまいります。

(4)自賠責保険の広報活動と運用益拠出事業

 すべての自動車に加入義務がある自賠責保険の認知・理解促進に向けて、女優の志田未来さんを広報キャラクターに起用し、「CHECK!期限切れ」をキャッチコピーとした広報活動を3月1日から実施しております。特に、原動機付自転車や250cc以下の二輪車のユーザーに対しては、車検の対象でないため有効期限を忘れがちであることを注意喚起し、自賠責保険加入が、被害者保護を目的とした自動車保有者の義務であることをお伝えしてまいります。
 また、当協会では、自賠責保険の運用益を活用し、自動車事故被害者対策や事故防止対策に資する事業を1971年から支援してまいりました。2016年度は、新たに「地域住民との協働による高齢者交通事故防止のためのモデル事業」等の支援を行います。

4.おわりに

 協会長としての任期も残り3ヶ月余りとなりました。これまで、自助、共助の重要性をお伝えするため、当協会の有するリソースを活用しながら、地域に根ざした活動に取り組んでまいりました。今般、その一つである小学生向けの防災プログラム「ぼうさい探検隊」が、「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2016」で、災害に強いしなやかな国・地域・人・産業づくりに資する活動として評価され、最優秀レジリエンス賞を受賞いたしました。
 地域の防災力強化は、我が国にとって喫緊の課題であり、当協会においても、こうした活動をいっそう強化し、安心・安全な社会づくりに貢献できるよう努めてまいりたいと思っております。皆さまには引き続き、ご支援、ご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

以 上


協会長ステートメント(2016年3月17日)(PDFファイル)