協会長ステートメント

会長 原 典之


(2017.12.21)

協会長に就任して約6か月が経過しました。その間の主な活動や出来事につきまして、報告するとともに所感を申し上げます。

1.はじめに

原 典之

 この1年を振り返りますと、世界経済が緩やかに成長を続ける中、我が国の経済も緩和的な金融環境と政府の経済対策等により回復基調が続きました。こうした景気の持ち直しに支えられ、損害保険マーケットも緩やかな成長を遂げました。
 一方で、今年も、豪雨・台風等の自然災害が数多く発生いたしました。7月に発生した九州北部豪雨は、観測史上最大級の集中豪雨により、福岡県や大分県を中心に深刻な爪痕を残しました。また、10月に日本列島に上陸した「超大型」の台風21号は、沖縄県から北海道に至る広い範囲で強風・大雨等による被害をもたらしました。損害保険業界では、引き続きお客さまからのお問い合わせ等に親身に対応するとともに、迅速な保険金のお支払いに全力で努めているところです。
 また、「ランサムウェア」を用いた世界規模のサイバー攻撃も発生いたしました。近年、モノのインターネットと言われるIoT(Internet of Things)技術が急速に進展するなど、コンピュータネットワークはより密接に社会に関わるようになっています。そうした社会における新たなリスクとして、サイバー攻撃の脅威が浮き彫りになった事件であったと思います。
 損害保険業界では、これまでも自然災害や、サイバーリスク等の新たなリスクへの取組みを進めてきましたが、そういった取組みの重要性をより一層強く感じた1年でありました。安心・安全な社会を下支えし、我が国の持続的な成長に貢献すべく、引き続き積極的な取組みを進めていきます。

2.創立100周年記念式典の開催

 当協会は、本年5月に創立100周年を迎えました。この節目の年に損害保険業界の100年の歩みを振り返り、業界の将来像を展望することを目的に、11月6日に記念式典を開催いたしました。
 式典には、次代の損害保険業界を担う若手職員を中心に、業界関係者約430名が参加いたしました。基調講演「損保協会100年の歴史と新世紀に向けて」の後、「損保業界の未来に向けて ― 技術革新がもたらす保険ビジネスの進化」と題したパネルディスカッションを実施し、社会経済分野・科学技術分野・保険金融分野の有識者から、それぞれ損害保険業界が未来に向けて飛躍するための示唆に富んだご意見等が披露されました。
 損害保険業界がこれからも「リスクの担い手」として、社会とともに成長していけるよう、本式典で共有した将来ビジョンのもと、今後の環境変化に向けた取組みを、業界一丸となって、より一層力強く進めていきます。

3.第8次中期基本計画の策定状況

 本日の理事会において、2018年度から開始する「第8次中期基本計画(2018年度〜2020年度)」の骨子を決定いたしました。創立100周年を迎えた本年、これまでの歩みを振り返るとともに、新しい時代を見据え、損害保険業界が目指す方向性を「環境変化への迅速・的確な対応」をはじめとする4つの柱に整理いたしました。また、それぞれの方向性において、今後3年間で当協会として重点的に取り組むべき課題を決定いたしました。
 今後は、各重点課題の具体的な取組み内容を整理するなど、来年3月の本計画策定に向け、取組みを加速していきます。

<第8次中期基本計画・骨子>
目指す方向性 重点課題

環境変化への迅速・的確な対応

技術革新への対応

多様化・巨大化するリスクへの対応

超高齢化など社会環境変化への対応

お客さま視点での業務運営の推進

保険会社・代理店の業務品質の向上

お客さまのリスク意識の啓発

お客さまとの対話強化

より強固で安定的な保険制度の確立

大規模地震の発生に備えた態勢整備

不正請求防止対策の強化

国際保険市場におけるさらなる役割の発揮

国際基準への適切な対応

各国市場における競争条件の公正・公平化への対応

新興国市場に対する各種支援の強化

4.これまでの取組みについて

(1)自然災害に対する取組み

 ア.防災・減災に向けた取組み

ア)防災イベントによる啓発取組み
 11月26日〜27日に、内閣府主催の「防災推進国民大会2017」が開催されました。防災推進国民大会は、官民の防災関係団体・機関等が一堂に会し、シンポジウムや展示等を行う総合イベントです。当協会は、「防災教育これまでとこれから〜防災教育と地域の融合、好取組みと課題〜」と題したシンポジウムを開催し、小学生を対象とした実践的な教育プログラムである「ぼうさい探検隊」の取組みを紹介しました。このほか、同大会の総まとめであるクロージングセッションに当協会役員がパネリストとして登壇するなど複数のセッションに参画し、防災意識の啓発を図りました。
 また、各地域でも関係団体等と連携し、防災イベントを開催しています。南海トラフ地震の発生が危惧される愛知県では11月11日に、名古屋大学などと共同で防災人材交流シンポジウムを開催し、防災・減災の担い手のネットワーク強化に努めました。愛媛県では12月2日に、県や松山市などの後援を得て、地域防災力を高めるための防災セミナーを開催し、南海トラフ地震への備えを呼びかけました。引き続き様々な防災・減災プログラムを提供していきます。

イ)「ぼうさい探検隊」の取組み
 「ぼうさい探検隊」マップコンクールの取組みは、今年度で14年目を迎えました。自然災害に対する社会的関心の高まりなどを背景に、本取組みは着実に裾野を広げ、本年度は、前年を上回る538団体から申込みがあり、16,370名の児童が参加し、2,582枚のマップのご応募をいただきました。その中から特に優れた作品として、入選17作品を決定し、2018年1月27日(土)に表彰式を行う予定です。

ウ)自治体への軽消防自動車の寄贈
 当協会では、全国の自治体における消防力の強化・拡充を図ることを目的として、毎年、軽消防自動車の寄贈を行っています。軽消防自動車は機動力が高く、悪路や狭い道路でも迅速な初期消火・救命が可能であり、効果的な消防活動に寄与します。本年度は、昨年大火が発生した新潟県糸魚川市など17の市町村および離島に各1台を寄贈いたしました。本取組みは1952年度から続いているもので、寄贈した車両等は累計で3,429台に上ります。巨大地震等の発生懸念が高まる中、減災の観点から、火災を最小限に食い止める消防力の強化も重要であり、引き続き本取組みを通じて、地域の消防力強化に貢献していきます。

 イ.地震保険の普及促進

 本年7月に、「信州地震保険・共済加入促進協議会」を設立した長野県では、11月より「地震保険・共済加入促進キャンペーン」を開催しています。ポスター等の掲示に加え、11月7日には長野駅前および松本駅前で地震保険の街頭啓発活動も実施いたしました。地震保険の加入促進には、地域の地震リスクを正しく認識いただくことが重要であり、引き続き自治体等と連携し、地域の地震リスクの啓発から地震保険の加入へと結び付けていく取組みを推進していきます。
 また、9月以降、全国12か所のイオンモールで開催した体験型の防災イベント「みんなの防災+ソナエ」では、地震の揺れを疑似体験する「地震ザブトン」や、家族写真をプリントした緊急連絡先カード「地震ソナエカード」の配布などが人気を博し、当協会のブースには、延べ13,761名の方にご参加いただきました。今後も、皆さまに関心を持っていただけるよう、地震リスクや地震保険の必要性をわかりやすくお伝えし、地震保険の普及拡大を図っていきます。

(2)グローバル化への取組み

 ア.アジア諸国に対する保険技術支援の取組み

 当協会は11月に、ASEAN保険協会(ASEAN Insurance Council)と、協力関係の覚書を締結することについて合意いたしました。AICは、ASEAN加盟国内の民間保険業界間の協力促進を目的として設立され、ASEAN加盟国の全ての保険協会(8か国・13協会)がメンバーとなっています。当協会では、従来から、我が国のノウハウを提供することなどを通じてAICとの関係を深め、外部保険協会としては唯一、主催会議への参加が認められていました。こうした関係を一層強化し、更なる発展に結び付けていくため、包括的な協力覚書を締結することとしたものです。
 また、ミャンマーでは、10月に正式にミャンマー保険協会(Myanmar Insurance Association)が設立されました。当協会ではこれまで、保険協会の設立に向け、関係機関と連携してワークショップやセミナーを開催するなど支援を行っており、設立に大きな貢献ができたものと考えています。引き続き関係機関と連携し、我が国のノウハウ提供を通じて同協会との関係強化を図っていきます。

 イ.国際規制に対する意見発信

 保険監督者国際機構(IAIS)では、国際的に活動する保険グループ(IAIGs)を対象とした定量的な保険資本基準(ICS)の開発を進めており、本年7月には、これまでの市中協議等で寄せられた意見を踏まえた「ICS Version 1.0」を公表しました。これを受け、当協会では、2020年から実施される「ICS Version 2.0」について、「当面はモニタリング指標のようなソフトな基準として適用を開始すべき」などの意見をIAISに提出いたしました。11月2日にクアラルンプールで開催されたIAISの年次会合では、ICS Version 2.0について、当協会の意見どおり、「当初5年間はモニタリング期間と位置付ける」ことなどがIAISより示されました。今後も国際的な議論をリードすべく、積極的な意見発信を重ねていきます。

 ウ.海外保険協会との交流

 協会長として、7月の英国保険協会、8月のインドネシア損害保険協会に続き、12月にはマレーシア損害保険協会を訪問し、同協会長と意見交換を行いました。自動車保険の自由化が始まっている同国の状況を踏まえ、我が国における自由化のプロセスなどを共有するとともに、両協会の緊密な関係を確認いたしました。また、10月には、当協会役員がスペイン保険協会を訪問し、関係強化を図りました。
 このほか、インドネシア損害保険協会が主催するセミナーに当協会がパネリストとして招請されるとともに、タイでは、創立50周年を迎えたタイ損害保険協会の記念行事に来賓として参加し、引き続き良好なパートナーシップを強化していくことを確認いたしました。国際社会での存在感発揮に向け、引き続き海外保険協会との関係強化に努めていきます。

(3)交通安全・防犯に関する取組み

 ア.高齢者交通事故の防止に向けた取組み

 高齢化率が全国一の秋田県では、10月に秋田県警などと「シルバーセーフティサポート協定」を締結いたしました。これは、交通事故防止のみならず、犯罪被害防止など、高齢者の安全で安心な暮らしを支えるための内容を盛り込んだ、全国で初めての総合的な高齢者対策の協定になります。本協定のもと、更なる連携により高齢者事故等の減少に寄与できるよう、業界一丸となって取り組んでいきます。
 また、夜間・歩行中の高齢者の事故を防止するため、各地域で「反射材」を活用した啓発活動に取り組んでおり、徳島県では「反射材」付きの啓発チラシを約2万枚作成し、徳島県警察などと連携して着用を呼び掛けています。今後も様々な取組みを検討し、高齢者交通事故の防止につなげていきます。

 イ.自動車盗難防止の取組み

 当協会では、2003年から10月7日(トーナン)を「盗難防止の日」と定め、自動車盗難や車上ねらい等に対する防犯意識の啓発を進めています。今年は、自動車盗難が多発している12の地域で防犯意識啓発の街頭活動を行い、約26,000人の方に盗難防止に向けた対策を呼びかけました。
 車両盗難は減少傾向にありますが、特定の地域では依然として多発しており、自動車本体だけでなく、カーナビやナンバープレートが盗まれることもあります。当協会では各地域の実情を踏まえた取組みを展開しており、たとえば大阪では、多発するナンバープレート盗難への対策として、10月に大阪府警察と連携し、府内377会場において、「ナンバープレート盗難防止ネジ無料取付キャンペーン」を行いました。自動車盗難の撲滅に向け、引き続き取組みを進めていきます。

(4)その他の取組み

 ア.平成30年度税制改正要望

 12月14日に「平成30年度与党税制改正大綱」が公表されました。当協会では、会員各社における近年のグローバルな事業展開の状況を踏まえ、「国際課税ルールの改定における対応」を重点要望としていましたが、この要望どおり、国際課税ルールに損害保険ビジネスの実態を踏まえた手当てを行うことが盛り込まれました。

 イ.自動運転に関する取組み

 官民で検討が進む自動運転技術について、当協会では、事故時の損害賠償責任を中心とした自動運転の法的課題について、有識者を交えて研究を重ね、昨年報告書を公表いたしました。こうした課題について、現在、中央省庁では、国際的な議論も踏まえつつ検討を進めており、当協会では、検討状況に応じて、適切な意見発信を行っています。
 他方、自動運転技術が実現された場合には、法的課題以外にも損害保険実務への影響が見込まれることから、法的課題への対応と並行して、業界共通の実務課題を幅広く洗い出し、対応の方向性を整理・検討するため、新たに「自動運転PT」を設置いたしました。自動運転社会の到来に向け、フォワードルッキングに検討を進めていきます。

5.おわりに

 就任時に申し上げたとおり、創立100周年を迎えたこの一年は、将来を見据えつつも、101年目をスタートする「基礎固め」に取り組むことが重要であると考えており、就任から約6か月の間、着実に取組みを進めてきました。
 これからも損害保険が、安心・安全な社会を支えるインフラとして、その役割を十分に果たし社会に貢献していくには、より一層、お客さま本位の品質向上を図っていくことが必要と考えています。新時代の飛躍に向けた土台を確固たるものとすべく、引き続き、「第7次中期基本計画」の総仕上げ、および「第8次中期基本計画」の策定を、スピード感を持って進めていきます。皆さまのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

以 上

2017年12月  協会長ステートメント(PDFファイル)