交通事故による賠償問題の解決方法は?
交通事故における裁判の注意点と解決方法も併せて解説

交通事故により生じた損害(ケガの治療費、休業による収入の減少、自動車の破損…など)は、責任割合に応じて加害者から被害者に賠償されます。その損害賠償額や責任割合などの詳細な内容は、多くの場合は当事者間での交渉(示談)により決定されますが、ケースによっては当事者間で主張に相違が生じる可能性もあります。
本記事では、交通事故による賠償問題の解決方法とその流れについて解説します。

01 交通事故を解決する方法

交通事故による賠償問題を解決する方法は、以下の4つです。

●示談
●裁判外紛争解決手続
●民事調停
●民事訴訟(裁判)

まずは、示談による解決を目指すことが一般的です。しかし、示談で解決できない場合は裁判外紛争解決手続、または民事調停や民事訴訟(裁判)による解決を目指します

解決までの流れ

それぞれどのような解決方法なのか、詳しくみていきましょう。

02 示談

示談は、裁判所の関与なしに当事者間(保険会社が示談交渉にかかわる場合を含む)で話し合い、損害賠償額などを決める解決方法です。多くの交通事故では、まずは示談での解決を目指します。


示談の流れ

示談の手順は、以下のとおりです。

  1. 証拠資料の準備
    自分の請求内容が正当であることを裏づける証拠として具体的な資料(交通事故証明書、診断書、領収書、自動車修理費の見積書、自動車の損傷の画像など)を収集します。

  2. 専門家への相談
    必要に応じて弁護士などの専門家に相談します。譲れない最低限の条件をあらかじめ整理しておくと相談時に自身の主張を正確に伝えられます。

  3. 示談書類の作成と確認
    示談内容がまとまったら示談書類を作成します。この際、免責証書と呼ばれる被害者のみが署名する書類で保険会社から示談の提案が行われることがあります。内容を十分に確認し、納得してから署名・捺印することが重要です。

示談の注意点

示談が完了すると、基本的に示談内容の変更・修正はできません。示談にあたっては、自身で納得のできる内容・金額であるかを慎重に判断することが重要です。

また、示談にあたり判断に迷う場合には、弁護士などの専門家に相談・対応を依頼することも一つの手段です。自身が加入する損害保険の契約内容によっては、弁護士費用や法律相談費用などが補償される「弁護士費用特約」が付帯されている可能性があります。弁護士費用特約が利用できるかどうかは、事故状況や契約内容によって異なるため、弁護士への依頼を検討している場合はあらかじめ保険会社に確認するとよいでしょう。

03 裁判外紛争解決手続

裁判外紛争解決手続きは、示談で解決できない場合などに、公正な第三者が関与して、民事訴訟(裁判)によらずに解決を図るものです。

公正な第三者として「紛争解決機関」が設けられており、主に以下の5つの機関があります。

●そんぽADRセンター
●公益財団法人 交通事故紛争処理センター
●一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
●一般社団法人 保険オンブズマン
●公益財団法人 日弁連交通事故相談センター

04 民事調停

民事調停は、示談での合意が難しいが民事訴訟(裁判)での解決を避けたい場合の有効な選択肢です。裁判所が設置する調停機関が仲介し、当事者双方で譲り合いながら合意に基づいて解決を図ります。裁判よりも迅速な解決が期待でき、かつ費用の負担も少ないことが特徴です。

05 民事訴訟(裁判)

民事訴訟は、裁判による解決方法です。民事訴訟(裁判)を通じた解決を図る場合は、弁護士に依頼をすることが一般的です。


民事訴訟(裁判)にかかる費用

手数料・郵便切手といった費用に加え、弁護士に依頼した場合は以下の弁護士費用が発生します。

●着手金
●報酬金
●法律相談料
●日当
●実費

金額は依頼する弁護士や交通事故の内容により異なるので、弁護士とよく相談のうえで対応しましょう。
なお、弁護士費用については、自身が加入する損害保険に付帯されている弁護士費用特約を利用すれば、費用負担を軽減できる可能性があります。弁護士費用特約が利用できるかどうかは、事故状況や契約内容によって異なるため、弁護士への依頼を検討している場合はあらかじめ保険会社に確認するとよいでしょう。

コラム

弁護士費用特約の内容と利用方法

弁護士費用特約とは、示談交渉や民事訴訟(裁判)などの際に発生する弁護士費用を補償する、損害保険に付帯できる特約です。通常、交通事故による賠償問題で弁護士に相談した場合、法律相談料や着手金・報酬金などの費用は、依頼者が負担しなければいけません。しかし、自身が加入する自動車保険や火災保険に弁護士費用特約が付帯されていれば、補償額の範囲内で保険金が支払われます。

弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼するまでの流れ

自身が加入する損害保険に弁護士費用特約が付帯されている必要があるため、まずは事前に確認しておきましょう。弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼するまでの流れとして、以下2つのパターンを説明します。

1.保険会社から弁護士を紹介してもらう場合

①保険会社に相談する
自身が加入する損害保険に対象となる弁護士費用特約が付帯されているか、確認しましょう。自動車保険の保険会社と弁護士費用特約が付帯されている保険会社が別であっても、弁護士費用特約での支払いは受けられます。まずは保険会社に相談しましょう。

②弁護士の紹介を受け、初回相談を行う
保険会社から紹介時の注意点などの説明を受けたうえで、紹介を受けましょう。その後、弁護士と日程を調整して、初回相談を行います。事前または初回相談時に事故の情報を保険会社が弁護士へ連携するための同意などを求められるため、確認のうえ対応しましょう。 また、初回相談で弁護士へ委任することになった場合、その場で弁護士への委任状に署名することもあるため、必要な持ち物を確認のうえで訪問しましょう。

③保険会社に弁護士委任する旨を報告する
初回相談を踏まえて弁護士に委任することが決まったら、弁護士または被害者から保険会社に報告します。委任後は、相手方の保険会社との交渉は弁護士を通じて行うこととなり、被害者も弁護士を通じて交渉の進捗などを確認することになります。

2.自身で依頼したい弁護士がいる場合

①保険会社に相談する
既に相談をしたい弁護士がいる場合には、弁護士費用特約を付帯する保険会社へ連絡してください。交通事故の内容によっては、弁護士費用特約の対象とならない可能性もあるため、弁護士に初回相談を行う前に、必ず保険会社へ相談しましょう。

②保険会社から弁護士に連絡をする
保険会社は、弁護士費用特約の補償範囲内の相談費用となるか事前に弁護士に確認を行います。全ての弁護士が同じ費用ではないので事前確認を行い、被害者の自己負担が発生しないかどうか確認をします。

③初回相談を行う
被害者が初回相談を行い、委任をするかどうか判断します。その場で弁護士への委任状に署名することもあるため、必要な持ち物を確認のうえ、訪問しましょう。

④保険会社に弁護士委任した旨を報告する
弁護士に委任することが決まったら、弁護士または被害者から保険会社に報告します。委任後は、相手方の保険会社との交渉は弁護士を通じて行うこととなり、被害者も弁護士を通じて交渉の進捗などを確認することになります。

民事訴訟(裁判)の注意点

民事訴訟(裁判)による解決を目指す場合は、裁判官による公正かつ公平な判決が期待できますが、必ずしも自身に有利な判決結果になるとは限りません。また、示談などによる解決方法と比較して、解決までに期間を要するほか、各種手続き・弁護士報酬などの費用も発生します。
このような点をしっかりと検討し、必要に応じて弁護士などの専門家とも相談しながら、民事訴訟(裁判)に移行するとよいでしょう。

少額訴訟制度

少額訴訟制度は、誰でも安い費用で速やかに解決できる制度です。60 万円以下の金銭の支払請求を目的とする訴えについて、本人のほかに証拠書類や同行証人など即時取調べ可能な証拠に限って調べ、原則として1回の期日で審理を終えて即時判決を言い渡す制度です。

簡易裁判所に定型訴状用紙や定型答弁書用紙が備え付けられているため、訴状や答弁書を作成できます。

ただし、相手方が少額訴訟での手続きに異議がある場合は取扱いができないこと(通常訴訟に移行するケースもあること)や、不服申立方法が限定されていることに注意が必要です。

和解

裁判所では、判決という形ではなく当事者の譲り合いによる円満解決の道として、和解(訴訟上の和解)を勧めることがあります。なお、和解は当事者から申し立ても可能で、当事者双方が和解に応じると和解調書が作成され、訴訟は終結します。これは裁判の確定判決と同じ効力を持ちます。

お金がなくても民事訴訟(裁判)はできる

民事訴訟(裁判)の費用にお困りの場合は、日本司法支援センター(通称:法テラス)に問い合わせることが考えられます。法テラスでは、経済的に余裕のないなど一定の条件を満たす方が法的トラブルに遭ったときに、無料で法律相談を行い、必要な場合は弁護士・司法書士の費用などの立替え(「代理援助」、「書類作成援助」)を行っています。

06 様々な解決方法を理解しておくことが大切

交通事故で被害に遭った場合、まずは示談による解決を目指しますが、場合によっては裁判所による解決を図る場合もあります。

交通事故における賠償問題の解決には、様々な方法があります。円滑な解決のためには、それぞれの特徴を理解したうえで、解決方法を選択することが重要です。

また、交通事故の紛争解決にあたっては、弁護士などの専門家のサポートが必要な場面も生じます。自身が加入する損害保険の契約内容によっては、弁護士費用や法律相談費用などが補償される弁護士費用特約が付帯されている可能性があるため、契約内容を確認のうえ活用するとよいでしょう。