交通事故の被害に遭ったときに
利用できる保険と
保険金支払いまでの流れを解説

交通事故の被害に遭ってしまったとき、どのような保険を利用すればよいのか迷われるかもしれません。
交通事故による損害が発生した場合には、基本的には、加害者が加入する自賠責保険・自動車保険から補償を受けることになります。しかし、加害者が自動車保険に加入していなかったり、自賠責保険で十分な補償が受けられない場合には、被害者が加入する保険を利用することが必要な場合もあります。
本記事では、交通事故の被害に遭ったときに利用できる保険と、保険金の支払いまでの流れについて解説します。

01 交通事故の被害に遭った時に利用できる保険の種類

交通事故の被害者は、以下の保険を利用できる可能性があります。

●加害者が加入する自賠責保険・自動車保険
●被害者が加入する自動車保険
●被害者が加入する生命保険や医療保険等

交通事故による被害を受けた場合、基本的に加害者が加入する自賠責保険・自動車保険から補償を受けます。人身事故の場合、まずは加害者が加入している自賠責保険から賠償されるものの支払限度額が設定されているため、自賠責保険で支払われる金額を超える部分は加害者が加入する自動車保険から支払われます。

一方、加害者が自動車保険に加入していない、または強制保険である自賠責保険にも加入していない場合は、十分な賠償を受けられないおそれがあります。

02 交通事故で加害者が負う賠償責任を負担する自動車保険(加害者が加入する自動車保険)

以下2つの自動車保険は、加害者が被害者に与えた損害(治療費などのケガによる損害、車の修理費などの物の損害)を賠償する保険です。
●対人賠償責任保険
●対物賠償責任保険
この2つの保険について、詳しく説明します。


対人賠償責任保険

交通事故で他人を死傷させた場合に、その損害を賠償する保険です。

対人賠償責任保険は、加害者の負う損害賠償額が自賠責保険で支払われる金額を超える部分に対し、保険金が支払われます。特に死亡事故や重傷事故の場合は損害賠償額が高額になるため、自賠責保険で支払われる金額では補償しきれないことも珍しくありません。万が一に備えて、自賠責保険の上乗せ保険として加入することが推奨されています。

この保険は、加害者が被害者と直接に相対せず、保険会社が代わりに示談交渉を行う示談交渉サービスを受けられる商品であることが一般的です。保険会社が示談交渉を行う場合は、加害者が加入する自動車保険の保険会社から被害者に連絡が行われ、ケガの状態と治療費の支払いに関する確認や、治療費などの損害に関する賠償交渉が行われます。

対物賠償責任保険

交通事故で他人の物を壊してしまった場合に、その損害を賠償する保険です。この保険の賠償対象は、被害者が所有する自動車、建物や動物(ペット)などに生じた損害です。

強制保険である自賠責保険は、物に対する損害は支払いの対象外です。そのため、交通事故により被害者の自動車や所持品に損害が発生した場合は、加害者が加入する対物賠償責任保険から賠償されます。

この保険においても、保険会社による示談交渉サービスを受けられる商品であることが一般的です。対人賠償責任保険と同じく、加害者が加入する自動車保険の保険会社から被害者に連絡が行われ、自動車の損害状況に関する確認や、修理費などの損害に関する賠償交渉が行われます。

03 交通事故で被害者の損害を補償する自動車保険(被害者が加入する自動車保険)

交通事故での損害は、過失割合に応じて加害者から賠償されることが原則です。一方、被害者が自身で自動車保険に加入している場合は、自らの責任割合に応じた損害を負担する必要があり、それらを補償するために保険を利用できます。
●人身傷害補償保険
●搭乗者傷害保険
●自損事故保険
●無保険車傷害保険
●車両保険

これらの保険について、詳しく説明します。


人身傷害補償保険

契約自動車に乗車中の契約者やその家族が自動車事故で死傷した場合に生じる損害を補償する保険です。治療費、休業損害、精神的損害など、自賠責保険や対人賠償責任保険において賠償対象となる損害が補償の対象となります。

通常、加害者からの賠償は被害者の過失割合に応じて損害賠償額が減額されます。しかし、人身傷害補償保険では被害者の過失割合に関係なく、契約者が実際に負った損害について保険金額の範囲内で補償を受けられることが特徴です。
また、契約内容によっては、歩行中や自転車に乗っていたときなど、契約自動車以外の乗り物に搭乗しているときの事故も補償されます。

なお、人身傷害補償保険を使用する場合、保険会社のサービスにより、被害者が医療機関に支払う治療費を保険会社が直接支払いすることが可能な場合もあります。治療費の支払いが不安である場合には、保険会社から連絡があった際に相談しましょう。

搭乗者傷害保険

契約自動車に乗車中の人(運転者含む)が自動車事故で死傷した場合の損害に対し、あらかじめ契約で定められている金額が支払われる保険です。

搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険は、保険金の支払い対象となる事故の範囲や、支払われる保険金の算出方法が異なります。人身傷害補償保険は保険金額を限度に実際に発生した損害額に対して保険金が支払われるもので、加害者から損害賠償金が支払われる場合には二重で受け取ることができません。一方で、搭乗者傷害保険は加害者からの損害賠償金などとは別に、あらかじめ契約で定められた金額が支払われます。

また、搭乗者傷害保険は契約自動車に乗車中の事故に限り保険金が支払われますが、人身傷害補償保険の支払い対象となる事故の範囲は契約により異なるため、契約内容を確認し、適切な補償が受けられるようにしましょう。

自損事故保険

相手がいない単独事故などの自賠責保険の補償を受けられない事故で、運転者や同乗者が死傷した場合にあらかじめ契約で定められている金額が支払われる保険です。例として、以下のような事故が挙げられます。

●ガードレールに自らぶつかってしまった
●崖から転落してしまった
●停車中の自動車へ追突した
●中央分離帯をはみ出しての事故を起こした など

相手のある事故で、相手に過失がない事故も補償対象です。

自損事故保険では、死亡保険金、介護費用保険金、後遺障害保険金、医療保険金といった保険金が定額で支払われます。支払われる内容は契約により異なるため、契約内容を確認し、適切な補償が受けられるようにしましょう。

無保険車傷害保険

交通事故の加害者が保険に未加入で十分な賠償が受けられない場合を補償する保険です。

加害者が対人賠償責任保険に加入していない場合、または加入していても限度額が設定されている場合、被害者は加害者から十分な賠償を受けられないおそれがあります。このような場合、無保険車傷害保険に加入していれば、補償を受けられます。

なお、契約内容によっては、記名被保険者(自動車保険に契約し、車を主に運転する方)とその家族は、歩行中や契約自動車以外の自動車に乗車中の無保険自動車による事故でも支払われます。

車両保険

交通事故により契約自動車が損傷を被った場合の損害を補償する保険です。対象となる事故は、以下のとおりです。

衝突 接触 墜落 転覆 火災 爆発 盗難 台風 洪水 高潮 など

偶然な事故によって損害を受けた場合、保険金が支払われます。

自動車同士の事故で被害者に過失がない場合には、加害者から自動車に生じた損害の全額の賠償を受けられますが、過失がある場合や単独事故の場合には、車両保険を使うことで、修理費用等の補償を受けられます。契約内容によっては保険金が支払われない場合もあるため、契約内容を確認し、適切な補償が受けられるようにしましょう。

04 被害者が加入する生命保険・医療保険等

交通事故によって死亡またはケガを負った場合、被害者が加入する生命保険や医療保険等の契約内容によっては、その保険からも保険金を受け取れます。
生命保険や医療保険等は、加害者の自賠責保険や自動車保険による賠償とは別に支払われます。例えば、交通事故により入院費・通院費がかかった場合、加害者の自動車保険からの賠償に加え、医療保険に加入していればあらかじめ契約で定められた金額の保障も受けられることがあります。
生命保険や医療保険等に加入している場合は、その契約内容も確認しましょう。

05 交通事故が発生してから保険金支払いまでの流れ

交通事故の被害者が保険金の支払いを受けるまでの大まかな流れについて、以下それぞれのケースを解説します。

●加害者が加入する自賠責保険から支払いを受ける場合
●加害者または被害者が加入する自動車保険から支払いを受ける場合


加害者が加入する自賠責保険から支払いを受ける場合

加害者の自賠責保険から保険金の支払いを受ける流れは、以下のとおりです。

なお、多くのケースでは、加害者または被害者のいずれかは自動車保険に加入しています。加害者が加入する保険会社が分かっている場合や、被害者が自動車保険に加入している場合は、まずはその保険会社に問い合わせをするとよいでしょう。

加害者または被害者が加入する自動車保険から支払いを受ける場合

加害者が対人賠償責任保険等の自動車保険に加入している場合、または被害者が人身傷害補償保険等の自動車保険に加入している場合、保険金の支払いを受ける流れは以下のとおりです。

なお、加害者が対人賠償責任保険に加入している場合は、基本的に加害者が加入する保険会社から被害者に連絡があります。保険会社の担当者とよく相談のうえ対応しましょう。
また、加害者が自動車保険に加入していなくても、被害者が人身傷害補償保険等の自動車保険に加入しているケースもあります。その場合は、被害者が加入する保険会社に連絡し、担当者とよく相談のうえ対応しましょう。

06 交通事故の被害に遭ったらまずは加害者の保険が適用される

交通事故の被害者は、まずは加害者が加入する自賠責保険・自動車保険から補償を受けることが一般的です。しかし、交通事故の加害者が自動車保険に加入していない、あるいは加入していても保険金額に上限が設定されている場合には、十分な賠償が受けられない可能性があります。

被害者においても、事故内容に応じて自身が加入する自動車保険を利用できますので、契約内容を改めて確認しましょう。