4.賠償問題の解決について
賠償問題の解決方法には「示談」「調停」「訴訟」などがあります。
Q4-2示談とは?
裁判所の関与なしに当事者間で話し合って、
賠償額などを決定することです。
※事故の加害者が自動車保険に加入している場合、当該保険会社が加害者に代わって示談交渉を行うことがあります。
示談のすすめかた
示談が成立すると、特別な事情がない限り、あとで勝手に変更・取消しすることはできません。したがって慎重に示談するよう、注意する必要があります。
ステップ01.証拠となる資料をそろえる
自分の請求内容が正当であることを裏づける証拠として具体的な資料(交通事故証明書、診断書、領収証など)をそろえておきます。
ステップ02.専門家の話を聞く
あらかじめ専門家(弁護士など)の話を聞き、納得できる最低限の条件を決めてから交渉すると早く示談ができるようです。
※弁護士などへ相談する場合は、法律相談料等の費用がかかります。
ご自身やご家族が自動車保険に加入されている場合は、費用が補償される契約内容かどうか、確認しましょう。
ステップ03.示談書を作成する
示談がまとまったら、示談書を作成します。示談書に署名・捺印する場合は、十分検討し、条件によく納得してからにします。
示談書の形式は自由ですが、(a)~(g)の事項は必ず記載しましょう。 また、既製の書式を利用することもできます(損害保険会社にも備え付けてあります)。
(a)当事者名
(b)事故発生日時・場所
(c)加害車両の登録ナンバ-
(d)事故の状況
(e)示談内容・支払方法
(f)作成年月日
(g)署名・捺印
示談書の一例
示談内容を確実に履行させるために
損害賠償金は、示談成立と同時に全額受け取れるようにするのが望ましいのですが、後日払いや分割払いになってしまうこともあります。 その場合、示談内容を確実に履行させるためには、示談がまとまった際に、次のような措置をとっておきましょう。
違約条項を入れる
示談書の中に「約束を守らなかったら、日割計算で加算金をとる」・「分割払いを怠ったら、残額は一時払いにする」といった違約条項を入れておきます。
連帯保証人をつけさせる
相手の近親者や知人など、資力のある人を連帯保証人につけさせます。
裁判をしなくても、強制執行ができるようにしておく
これには「即決和解」と「公正証書」の2つの方法があります。
即決和解
相手方の住所を管轄する簡易裁判所に和解を申し立て、和解調書を作ってもらいます。手続きが簡単で、費用も安くすむので便利な方法です。
公正証書
当事者双方で公証人役場に行って公正証書を作ってもらいます。公正証書には「債務不履行の場合は、すぐ強制執行を受けても異議はない」という強制執行認諾条項を入れておきます。
示談がなかなかできない場合
専門家(弁護士など)に相談してみるほか、内容証明と配達証明を利用して「○○の損害を賠償せよ」との催促を行うと有効です。
内容証明郵便が有効な理由
・相手が催促に応じなければ、訴訟になった際、その不誠意を証明する証拠になります。
・時効の中断事由になります。ただし、中断の効力が生じるのは6ヶ月以内に訴訟などを起こした場合です(民法第153条)。
Q4-3裁判外紛争解決手続とは?
紛争の当事者のために、公正な第三者が関与して、
裁判によらずに解決を図るものです
交通事故に関しては、以下のような紛争解決機関があります。
そんぽADRセンター(損害保険相談・紛争解決サポートセンター)
一般社団法人日本損害保険協会では、東京および大阪に「そんぽADRセンター」を設置し、損害保険に関する一般的なご相談に対応するほか、保険業法に基づく指定紛争解決機関として、損害保険会社とのトラブルが解決しない場合の苦情の受付や損害保険会社との間の紛争解決の支援業務などを行っています。
公益財団法人 交通事故紛争処理センター
自動車事故の被害者と加害者が契約する損害保険会社等との示談をめぐる損害賠償の紛争解決のため、中立公正な立場で和解あっ旋および審査を行っている公益財団法人です。全国11ヵ所に設置されています。
一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構
自賠責保険・共済の保険金または共済金の支払いについて、被害者や保険・共済の加入者と保険会社・共済組合との 間の紛争に対して、適確な解決を目指して公正な調停(紛争処理)を行っている一般財団法人です。公正中立で専 門的な知見を有する弁護士、医師などで構成する紛争処理委員が調停(紛争処理)を行っています。 なお、当機構の調停(紛争処理)は書面による審査であり、当事者双方の間に立って「和解の仲介」等を行う一般的な 調停とは異なります。
一般社団法人 保険オンブズマン
保険オンブズマンは、保険業法に基づく指定紛争解決機関として、 外資系損害保険会社および保険仲立人保険募集に対するお客様からの苦情の受付や紛争解決の支援業務を行っています。
公益財団法人 日弁連交通事故相談センター
日本弁護士連合会が設立した公益財団法人で、全国155ヵ所の相談所が設置されています。そのうち46ヵ所で示談あっ旋および審査業務を行っています。
また、フリーダイヤルによる電話相談を行っています。
0120-078325
Q4-4調停とは?
示談ができないが、訴訟にはしたくない場合に、裁判所が設置する 調停機関が仲介し、当事者双方で譲り合いながら合意に基づいて 解決を図るものです。
損害賠償を請求する相手方の住所を管轄する簡易裁判所(人身事故の場合は請求者の住所を管轄する簡易裁判所でも可)に調停を申し立てます。
提出する申立書には、❶~❸の事項を記載します。
※ 請求額がわからない場合は「相当額の賠償額を求める」と書くこともできます。
※ 口頭による申立ても可能です。
手数料
手数料(収入印紙代)は、請求額に応じて異なります。
金額の
一例
訴額 | 印紙代 |
---|---|
50万円 | 2,500円 |
100万円 | 5,000円 |
300万円 | 10,000円 |
500万円 | 15,000円 |
※民事訴訟費用等に関する法律による
なお、請求額が決められない場合は、さしあたり6,500円の収入印紙代を納めます。
申立てがあると、調停委員会が両当事者を呼び出すので、当事者は出頭しなければなりません。
当事者双方が自由に主張を述べられます。調停委員会はそれを聞きながら、折合いがつく解決案を考え、まとめ役をつとめます。
当事者双方の都合がつけば調停委員会が開かれるので、折合いのつく状況なら解決もスピーディーです。また、弁護士だけでなく、調停委員会から許可を得れば家族(法人の場合はその職員)でも代理人となれることがあります。
解決案がまとまれば、その内容をもとに調停調書が作成されます。これは、裁判の確定判決と同じ効力があり、強制執行ができます。
双方が同意しないと成立しない点、また、相手が出頭しなければそれまでという点が欠点です。正当な理由もなく出頭しない場合50,000円以下の過料が科されます(民事調停法第34条)。
Q4-5訴訟とは?
訴訟は、裁判による解決方法です。弁護士に依頼するのが一般的です。
裁判にかかる日数
裁判は日数がかかるものです。特に相手が上訴をすれば、何年もかかることもあります。しかし、第1審判決に仮執行宣言をつけることにより、確定判決の場合と同様、すぐに強制執行ができます。
裁判にかかる費用(主なもの)
● 手数料
訴状に貼る収入印紙代は、請求する賠償金額に応じて異なります。
金額の
一例
訴額 | 印紙代 |
---|---|
50万円 | 5,000円 |
100万円 | 10,000円 |
訴額 | 印紙代 |
---|---|
300万円 | 20,000円 |
500万円 | 30,000円 |
※⺠事訴訟費⽤等に関する法律による
● 弁護士報酬
裁判を弁護士に依頼する場合、着手金、報酬金、手数料、法律相談料、日当、実費などがかかります。金額は依頼する弁護士や交通事故の内容により異なりますので、詳しくは依頼される弁護士にご相談ください。
※ご自身やご家族が加入される自動車保険に、弁護士報酬を補償される契約内容となっていないか、加入保険会社へご相談ください。
少額訴訟制度は誰でも安い費用で速やかに解決できる制度です。 60万円以下の金銭の支払請求を目的とする訴えについて、本人のほかに証拠書類や同行証人など即時取調べ可能な証拠に限って調べを行い、原則として1回の期日で審理を終えて即時判決を言い渡すものです。 簡易裁判所に定型訴状用紙や定型答弁書用紙が備え付けられていますので、訴状や答弁書を作成することができます。
ただし、以下(a)、(b)の点に注意する必要があります。
(a) 被告(相手方)が少額訴訟での手続きに異議がある場合は取扱いができない。
(b)不服申立方法が限定されている。
手数料
訴状に貼る収入印紙代は、請求する賠償金額に応じて異なります。
金額の
一例
訴額 | 印紙代 |
---|---|
~10万円 | 1,000円 |
~20万円 | 2,000円 |
~30万円 | 3,000円 |
訴額 | 印紙代 |
---|---|
~40万円 | 4,000円 |
~50万円 | 5,000円 |
~60万円 | 6,000円 |
※民事訴訟費用等に関する法律による
お金がなくても裁判はできる
裁判の費用にお困りの方は、日本司法支援センター(通称:法テラス)にお問い合わせください。 法テラスの「民事法律扶助」では、裁判での代理や、裁判所への提出書類の作成が必要な場合、申込者などの資力(収入や資産の状況)や問題解決の見込みなどを審査したうえで、弁護士費用などを立て替えます。 立て替えられた費用は、毎月分割払いで法テラスに支払うことになります(無利息)。
裁判所もすすめる「和解」
裁判所では、判決という形より当事者同士の譲り合いによる円満解決の道として和解(「訴訟上の和解」といいます)をすすめることがあります。
なお、和解は当事者から申し立てることもできます。当事者双方が和解に応じると和解調書が作成され、訴訟は終結します。これは裁判の確定判決と同じ効力を持ちます。