自賠責保険とは? 請求方法や必要書類を解説 | 交通事故-被害者のために-特設サイト

Q3-1自賠責保険の請求方法は?

「加害者請求」「被害者請求」があります。

加害者請求

加害者が被害者に損害賠償金を支払ったあと、保険金を損害保険会社に請求します(自賠法第15条)。

加害者請求の流れを表した図、①加害者が被害者に損害賠償金を支払ったあと、②保険金を損害保険会社に請求、③損害保険会社が加害者に保険金を支払う

被害者請求

被害者が加害者の加入している損害保険会社に直接請求します(自賠法第16条)。この場合は、保険金とはいわず、損害賠償額の請求といいます。

Q3-2自賠責保険は損害額が確定しないと
請求できないの?

損害額が確定していなくても請求ができます。

自賠責保険では、治療費や休業損害などの損害額が最終的に確定していなくても、すでに発生している費用などがあれば、保険金の請求をすることができます。 なお、治療費、休業損害などを請求する場合には、すでに費用や損害が発生しているという立証資料が必要になります。 加害者がすでに被害者に対してそれらの金額を損害賠償金として支払っている場合には、加害者から自賠責保険に請求することになります。

また、そのほかに仮渡金という制度があり、治療費など当座の費用として、総損害額が確定前であっても仮渡金の請求ができます( 自賠法第17条1項)。 被害者が、加害者の加入している損害保険会社に請求すれば、一定の条件のもと次の金額が支払われます。 なお、加害者からは請求できません。

仮渡金
の金額

死亡の場合

290万円

ケガの場合

40万円・20万円・5万円(程度に応じて、三段階に分かれています)

Q3-3自賠責保険の請求に必要な書類は?

損害の種類により異なります。

印の用紙は損害保険会社に備え付けてあります。

印は必ず提出していただく書類です。○印は事故の内容によって提出していただく書類です。

必要な書類

必要な書類の表 項目:提出書類/発行者(作成者)/損害の種類/
                ★保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書/なし/死亡◎後遺障害◎傷害◎仮渡金死亡◎仮渡金傷害◎/
                交通事故証明書(人身事故)/自動車安全運転センター/死亡◎後遺障害◎傷害◎仮渡金死亡◎仮渡金傷害◎/
                ★事故発生状況報告書/事故当事者等事故状況に詳しい人/死亡◎後遺障害◎傷害◎仮渡金死亡◎仮渡金傷害◎/
                ★医師の診断書または死体検案書(死亡診断書)/治療を受けた医師または医療機関/死亡◎後遺障害◎傷害◎仮渡金死亡◎仮渡金傷害◎/
                ★診療報酬明細書/治療を受けた医師または医療機関/死亡◎後遺障害◎傷害◎/
                ★通院交通費明細書/なし/死亡◎傷害◎/
                ★付添看護自認書または看護料領収書/なし/死亡○傷害○/
                休業損害の証明(1)給与所得者、事業主の★休業損害証明書(源泉徴収票添付)/事業主(休業損害証明書)/死亡○後遺障害○傷害○/
                休業損害の証明(2)自由業者、自営業者、農林漁業者、納税証明書、課税証明書(所得額の記載されたもの)または確定申告書(控)等/税務署または市区町村(納税証明書、課税証明書等)/死亡○後遺障害○傷害○/
                損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明)
                被害者が未成年者で、その親権者が請求する場合は、当該未成年者の住民票または戸籍抄本も必要です。/住民登録をしている市区町村、本籍のある市区町村/死亡◎後遺障害◎傷害◎仮渡金死亡◎仮渡金傷害◎/
                委任状および委任者の印鑑証明(第三者に委任する場合)
                死亡事故等で請求権者が複数いる場合は、原則として1名を代理者として、他の請求権者全員の委任状および印鑑証明が必要です。/印鑑登録をしている市区町村/死亡○後遺障害○傷害○仮渡金死亡○仮渡金傷害○/
                戸籍謄本/本籍のある市区町村/死亡◎仮渡金死亡◎/
                ★後遺障害診断書/治療を受けた医師または医療機関/後遺障害◎/
                レントゲン写真等/治療を受けた医師または医療機関/死亡○後遺障害○傷害○/ (表はここまで)

※以上のほかに書類が必要なときは、損害保険会社または自賠責損害調査事務所からご連絡します。

※加害者請求の場合は表中の書類に加えて加害者の支払いを証明する領収書、示談成立の場合は示談書が必要になります。

※仮渡金請求の際に提出していただいた書類は、損害賠償額請求の場合には再提出していただく必要はありません。

※マイナンバー(個人番号)が記載されている場合は、マイナンバー部分を塗りつぶしたうえで、ご提出願います。

※健康保険等の保険者番号、被保険者番号等記号・番号が記載されている場合は、その情報を塗りつぶしたうえで、ご提出願います。

Q3-4自賠責保険の補償内容は?

自賠責保険では法律に基づいて「支払基準」
定められています。
※2020年4月1日以降に発生した事故に適用される支払基準を掲載しています。

傷害による損害

治療関係費、文書料、その他の費用、休業損害および慰謝料が支払われます。

支払限度額

被害者1名につき120万円

支払内容

支払いができる損害 内容 支払い基準
治療関係費 治療費 診察料、入院料、投薬料、手術料、処置料、柔道整復等の費用など 必要かつ妥当な実費
通院費等 通院、転院、入院または退院に要した交通費 必要かつ妥当な実費
看護料 入院中の看護料
(原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合)

自宅看護料または通院看護料
(医師が看護の必要性を認めた場合または12歳以下の子供の通院等に近親者等が付き添った場合)

入院1日につき4,200円、自宅看護
または通院1日につき2,100円


(これ以上の収入減の立証がある場合は、近親者は19,000円、近親者以外は地域の家政婦料金を限度として、その実額が支払われます。)
諸雑費 入院中の諸雑費 原則として入院1日につき1,100円
義肢等の
費用
義肢・歯科補てつ、義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖等の費用

必要かつ妥当な実費

(眼鏡の費用は50,000円が限度となります。)
診断書等の
費用
診断書、診療報酬明細書等の発行手数料 必要かつ妥当な実費
文書料 交通事故証明書、被害者側の印鑑証明書・住民票等の発行手数料 必要かつ妥当な実費
その他の費用 治療関係費以外で事故発生場所か ら医療機関まで被害者を搬送する ための費用など 必要かつ妥当な実費
休業損害 事故による傷害のために発生した収入の減少(有給休暇を使用した場合、家事従事者の場合を含む) 原則として1日につき6,100円
(それ以上に収入減の立証がある場合は、19,000 円を限度としてその実額が支払われます。)
慰謝料 精神的・肉体的な苦痛に対する補償 1日につき4,300円(対象となる日数は治療期間の範囲内で決められます。)

後遺障害による損害

身体に残った障害の程度に応じた等級によって、逸失利益および慰謝料などが支払われます。

※後遺障害とは事故によって身体に回復が困難と見込まれる障害が残ったため、労働能力や日常生活に支障があると認められる場合をいいます。

支払限度額

後遺障害保険金は等級別に支払限度額が定められています。

① 「神経系統の機能または精神・胸腹部臓器」に著しい障害が残り、介護を要する後遺障害

被害者1名につき

常時介護を要する場合(第1級)4,000万円

随時介護を要する場合(第2級)3,000万円

② ①以外の後遺障害

被害者1名につき

(第1級)3,000万円~(第14級)75万円

支払内容

支払いができる損害 内容 支払い基準
逸失利益 身体に障害が残り労働能力が減少したために将来発生すると考えられる収入減 収入および各等級(第1~14級)に応じた労働能力喪失率、喪失期間などにより計算します。
慰謝料等 事故による精神的・肉体的な苦痛 に対する補償など ❶ の後遺障害の場合
(第1級)1,650万円、(第2級)1,203万円
なお、初期費用等として(第1 級)500万円、(第2級)205万円が加算されます。

❷ の後遺障害の場合
(第1 級)1,150万円~(第14級)32万円

❶および❷の後遺障害において、第1~3級で被扶養者がいるときは増額されます。
※後遺障害に至るまでの傷害による損害については、これとは別に傷害による損害の規定が準用されます。

死亡による損害

葬儀費、逸失利益、被害者本人の慰謝料および遺族の慰謝料が支払われます。

支払限度額

被害者1名につき

3,000万円

支払内容

支払いができる損害 内容 支払い基準
葬儀費 通夜、祭壇、火葬、埋葬、墓石などに要する費用(墓地、香典返しなどは除く) 100万円
逸失利益 被害者が死亡しなければ将来得ることができたと考えられる収入額から本人の生活費を控除したもの 収入および就労可能期間、被扶養者の有無な どを考慮のうえ計算します。
慰謝料 被害者本人の慰謝料 400万円
遺族の慰謝料
遺族慰謝料請求権者(被害者の配偶者、子供および父母)の人数により金額が異なる
請求権者1名の場合550万円、2名の場合650万円、3名以上の場合750万円(なお、被害者に被扶養者がいるときは、さらに200万円が加算されます。)
※死亡に至るまでの傷害による損害については、これとは別に傷害による損害の規定が準用されます。

Q3-5自賠責保険の支払いの流れは?

損害保険料率算出機構※の自賠責損害調査事務所に
よる調査に基づき、損害保険会社がお支払いします。

自賠責保険では多数の請求を迅速かつ公正に処理するため、各損害保険会社の窓口で受け付けられた請求はすべて損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が調査を行います。その結果に基づいて、最終的に各損害保険会社が支払額を決定のうえ支払います。
請求者(加害者もしくは被害者)
                ①請求書類提出請求者は損害保険会社へ請求書類を提出します。
                ②損害調査依頼損害保険会社は、請求書類に不備がないか確認のうえ、自賠責損害調査事務所へ送付します。
                損害保険料率算出機構   自賠責損害調査事務所 … 損害調査自賠責損害調査事務所では、請求書類に基づいて、事故発生の状況、支払いの的確性(自賠責保険の支払対象となる事故かどうか、また、死亡・傷害と事故との因果関係など)および発生した損害の額などを公正かつ中立な立場で調査します。
                ③損害調査請求書類の内容だけでは事故に関する事実確認ができないものについては、事故当事者への事故状況照会、医療機関への照会、事故現場の調査など必要な調査を行います。
                ④調査結果の報告自賠責損害調査事務所は、損害保険会社に調査結果を報告します。
                ⑤請求者への支払い損害保険会社は、支払額を決定し、請求者に支払います(仮渡金の支払いがある場合は、その分を差し引いて支払います)。

※損害保険料率算出機構とは

損害保険料率算出機構は、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づき、設立された法人です(2002年7月に自動 車保険料率算定会(自算会)と損害保険料率算定会(損算会)とが統合しました)。同機構では、その事業の一環として全 国に地区本部、自賠責損害調査事務所を設置し、自賠責保険(共済)の損害調査を行っています。

被害者などへの情報提供(自賠法第16条の4)

自賠責保険金などの支払いを請求する被害者または加害者などが、自賠責保険金などが適正に支払われているか否かを自ら判断できるようにするため、損害保険会社に以下の情報提供を義務付けています。

保険金などの請求があった際に、支払基準の概要などを請求者に交付すること。

保険金などの支払いに際し、支払った金額、後遺障害の等級やその認定理由などの事項を記載した書面を交付すること。

保険金などを支払わなかった場合に、その理由を書面で交付すること。

Q3-6自賠責保険の請求期限は?

3年で時効となります。

加害者請求の場合

被害者に賠償金を支払った翌日から...3年

被害者請求の場合

交通事故発生の翌日から................3年
ただし、死亡の場合は死亡日の翌日から3年、後遺障害の場合は症状固定日の翌日から3年

自賠責保険では3年※で時効となり、保険金(損害賠償額)を請求する権利が消滅します(保険法第95 条・自賠法第19 条)。 何らかの理由で請求が遅れてしまう場合は、時効中断の手続きが必要となるため、損害保険会社にご相談ください。 なお、政府の保障事業の場合も、原則として交通事故発生の翌日から3年で時効になりますが、時効中断制度がないのでご注意ください。

※2010年3月31日以前の事故の場合は、2 年になります。