法人保険

2026/03/09

法人保険とは?企業を守る保険の種類やメリット、
選び方のポイントを解説

企業経営には火災などの災害、経営者の安全配慮義務違反、従業員トラブルなど多くのリスクが伴います。
昨今の自然災害の激甚化・頻発化に加えて、日本企業でサイバー攻撃の被害が相次ぐなど、企業のリスクは年々変化しています。法人保険は、企業が直面するさまざまなリスクをカバーし、安定した経営基盤を維持するための手段の1つです。

本記事では、法人保険の基礎知識から具体的な保険の種類や選び方のポイントまで詳しく解説します。

目次

法人保険とは

法人保険の主な種類

法人保険に加入するメリット

法人保険を検討する際のポイント

法人保険で企業の安心と未来を守る

法人保険とは

法人保険とはどのようなものを指すのか、基本を解説します。

法人名義で加入する保険の総称

法人保険とは、保険契約者・保険料負担者を法人とした保険の総称です。
万が一の損害や賠償事故が発生した場合に、損害額や訴訟費用などの金銭的負担を軽減し、事業の継続を支えます。

このように、企業が自社の事業活動を維持・安定させるために、また役員や従業員を保護することを主な目的として加入します。

法人保険と個人保険の違い

法人保険と個人保険は主に活用目的が異なります。

法人保険 個人保険
保険契約者 法人(企業) 個人
被保険者 法人
経営者・役員
従業員
個人・家族
保険金・給付金の受取人 法人
経営者・役員
個人・家族
主な目的 事業継続
企業財産保護
従業員保護
賠償責任担保
信用向上 等
生活保障
個人財産保護
老後資金 等

個人保険は生活や家族を守るための備えです。

一方、法人保険は、企業の事業活動や資産・人材を守るための備えです。例えば、経営者が亡くなった場合に企業が保険金を受け取り、事業承継や運転資金に充てるケースや、工場が火災で損害を受けた場合に保険金を受け取り、早期の設備復旧に充てるケースなどが考えられます。そのため、基本的に契約者や保険料負担者、そして保険金受取人は「法人」となります。

法人保険の加入目的と有効なシーン

法人保険の最大の目的は、経営上のリスクを軽減することです。例えば、サイバー攻撃による情報漏えいや職場のハラスメントによる賠償責任、水災被害による休業など、経営者のリスクはさまざまですが、それぞれの損害を補償する保険に加入してリスクに備えることができます。

実際に、中小企業を対象とした意識調査(※)では、リスクの対策手段として「損害保険への加入」を選択する企業が最も多いという結果が出ています。
さらに、同調査によると、4社に1社の企業が「自然災害」や「顧客・取引先の廃業や倒産等による売上の減少」「サイバーリスク」など、何らかのリスクによる被害を経験しており、リスクは身近に潜んでいることが伺えます。

加えて、被害を経験した企業の約54.5%が「リスクへの備えが不足していた」と回答しており、日頃からリスクを認識し、法人保険への加入など、適切な備えを検討することの重要性が示された結果となりました。
法人保険はさまざまな種類やメリットがあるため、自社にあわせた設計を検討してみましょう。メリットの詳細は後述する「法人保険に加入するメリット」で解説していますので、ぜひご覧ください。

※「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025調査結果報告書」より

法人保険の主な種類

法人保険は主に3つの種類に分けられます。

保険の種類 生命保険 損害保険 その他(傷害保険・医療保険など)
目的 人の生死に関わるリスクへの備え 偶然な事故による損害への備え 傷害・疾病などへの備え
主な保険 定期保険
終身保険 
養老保険 等
火災保険
動産総合保険
損害賠償責任保険
自動車保険 等
傷害保険
医療保険 等
取扱保険会社 生命保険会社 損害保険会社 生命保険会社
損害保険会社

当記事では上記の損害保険およびその他の保険にスポットを当てて、事業活動に伴うリスクに備える主な保険種類や加入メリットを解説します。

損害保険

損害保険は、企業が事業活動を行う中で発生する偶然な事故等のリスクによる損害に備える保険です。

事業活動に伴うリスクは、大きく6つに分類されます。それぞれのリスクの代表的な保険と一般的な補償内容を紹介します。
※保険商品や補償内容は、保険会社によって異なります。

主なリスクの種類 主な保険 補償の対象(概要)
企業財産のリスク
関連記事はこちら
火災保険 火災などの偶然な事故による建物や設備等の損害
地震危険補償特約 地震等による損害(火災保険にオプションとして付ける)
動産総合保険 備品や什器(じゅうき)等の動産の様々な事故による損害
経営者役員のリスク 会社役員賠償責任保険(D&O保険) 会社役員としての業務の遂行に起因した損害賠償請求に伴う損害
雇用慣行賠償責任保険(EPL保険・特約) ハラスメントや不当解雇を起因とした損害賠償請求に伴う損害
従業員のリスク
関連記事はこちら
労働災害総合保険 従業員の労災事故への賠償責任(労災保険の上乗せとして活用する保険)
事業中断・利益減少のリスク 休業補償保険 火災・水災等により建物や設備に損害が生じ、休業した場合の利益損失や各種費用
取引信用保険 取引先の倒産や支払遅延等による貸倒れの損害
賠償責任のリスク サイバー保険 サイバー事故による損害賠償責任に伴う損害や各種費用
施設賠償責任保険 所有、使用、管理している施設の欠陥や従業員等の仕事の遂行に起因した損害賠償責任に伴う損害
生産物賠償責任保険(PL保険) 製造、販売した製品(生産物)の欠陥や行った工事・サービスの結果を起因とした損害賠償責任に伴う損害
請負業者賠償責任保険 請負作業等に起因する偶然な事故による損害賠償責任に伴う損害
社用車のリスク 自動車保険 社用車の事故による損害

自社を取り巻くリスクについては、ぜひ「6大リスク診断」でチェックしてください。リスクの深刻度や各リスクに備える代表的な保険を簡単に確認できます。

賠償責任のリスクに備える保険

保険にはさまざまな種類がありますが、万一の事故やトラブルで第三者への損害賠償が発生した場合、企業にとって大きな負担となる可能性があります。ここでは、近年、注目度が高まっているサイバー保険をはじめとする「賠償責任リスク」に備える保険について、詳しく紹介します。

「賠償責任リスク」に保険で備えることで、賠償金や訴訟費用等の金銭的な負担の軽減に加えて、企業の信用向上にも繋げることができます。

サイバー保険

サイバー保険は、情報漏洩(内部要因のケースを含む)や不正アクセスなど、サイバー事故に起因して発生した損害を補償する保険です。支払われる保険金には、サイバー事故の調査やシステムの復旧作業などの事故対応費用、損害賠償費用などがあります。

昨今、日本企業がサイバー攻撃を受けてシステム障害が発生し、商品の受注を停止するなど、サイバー攻撃による被害が相次ぎました。

サイバー攻撃の件数は急増するとともに、ますます高度化・巧妙化しており、企業のサイバーリスクは高まっているといえます。このようなサイバー攻撃は、大企業や機密情報を持つ公的機関、金融業等に多いイメージがあるかもしれませんが、今や企業規模や業種を問わず攻撃対象となっています。

また、攻撃者が脆弱なコンピューターを踏み台として悪意ある活動を行うことがあります。自社のコンピューターが踏み台として、他のサイバー攻撃に利用され、自社が加害者となってしまう可能性もゼロではありません。

サイバー保険は、重要性が高まっている保険といえるでしょう。

施設賠償責任保険

施設賠償責任保険は、企業が所有・管理する施設の欠陥や従業員の業務の遂行等により、第三者に身体障害や財物損壊などの損害を与えた場合の賠償責任を補償する保険です。例えば、施設の壁の倒壊により通行人に怪我を負わせたなど、設備の欠陥による事故や、来訪者の転倒事故などが対象となります。

店舗や事務所を構える企業にとって、基本的な賠償責任保険の1つといえます。

生産物賠償責任保険(PL保険)

生産物賠償責任保険(PL保険)は、製造・販売した製品や提供したサービス等が原因で第三者に損害を与えた場合の損害賠償責任を補償する保険です。例えば、製造した食品による食中毒や、販売した電気製品の不具合による火災事故による損害賠償などが想定されます。

製造業や飲食業など、製品を扱う企業には特に重要性の高い保険といえます。

請負業者賠償責任保険

請負業者賠償責任保険は、建設工事などの請負作業の遂行中に、第三者に損害を与えた場合に補償される保険です。例えば、クレーン車が倒れて駐車中の自動車を破損した場合や、壁の塗装中にペンキ缶を落とし通行人の衣服を汚した場合などがあります。

建設業や設備工事業など、請負業務を行う事業者にとって基本的な保険です。

その他の保険

その他の保険には、傷害・疾病等に備える傷害保険や医療保険があり、ケガや病気による入院・手術・通院が補償(保障)されます。 これらの保険では、企業が従業員やその家族をサポートするために団体で加入できる商品があります。

企業が契約者として、所属する役員や従業員を被保険者とすることで、個人で加入するよりも割安に加入できる可能性があり、企業の福利厚生として活用することができます。

法人保険に加入するメリット

法人保険に加入する主なメリットは次の3つです。

  • 事業継続性の確保につながる
  • 企業価値・信頼性の向上につながる
  • 福利厚生として活用できる

法人保険は、企業の事業継続性を確保するための重要な手段です。保険によって災害や事故後の早期復旧に必要な資金を確保し、予期せぬリスクによる事業中断を防ぎます。

また、法人保険は単にリスクに備えるだけでなく、資金繰り対策としても有用です。リスクマネジメントを適切に行っている企業としての安心感を示せるため、企業価値や取引先からの信頼性向上にもつながります。

さらに、役員や従業員を対象とした保険は福利厚生の一環にもなり、優秀な人材の定着や確保への寄与も期待できます。

法人保険を検討する際のポイント

補償と保険料のバランスに注意

補償を手厚くすれば、万一の事態への対応力は上がりますが、その分保険料が高くなる可能性があります。一方で、保険料を抑えることばかり優先すると、いざという時に必要な補償が受けられない可能性があります。

保険料と補償のバランスは、多くの企業の悩みでもあります。実際、「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025調査」によると、企業が保険選びで最も重視しているのは「保険料が安いこと(36.6%)」、次いで「補償が充実していること(33.0%)」という結果が出ています。

適切なバランスは企業によって異なるため、自社のリスク優先度に応じた選択が必要となります。

将来的な事業計画やキャッシュフロー計画を踏まえつつ、バランスをみて納得のいく保険設計を心がけましょう。

「全てのリスク」に保険だけで備える必要はない

企業を取り巻くリスクは多岐にわたるため、全てを保険で賄おうとすると相応に保険料が高くなる可能性があります。そのため、自社への影響が高いリスクを把握し、どのリスクを保険でカバーするのか、リスクマネジメントを考えることが重要です。

リスクマネジメントとは、危機発生前(予防段階)~復旧期すべての期間における取組を指します。
損害の大きさ(影響度)と頻度でリスクを分類し、対処法を検討していくというステップで進めていきます。

まずは、事業リスクを洗い出し、優先順位をつけていきましょう。リスクへの対処法は次のとおり大きく4つに分類できます。このうち保険は、リスクの「②移転」に該当します。

対処法 影響度 頻度 補足
①回避 大きい 高い 可能な限りリスクを避ける
例)リスクの高い市場への参入を避ける 等
②移転 大きい 低い リスクの顕在化を許容したうえで、その際に被る損失を外部に移転する
例)火災による本社建物の被害に備えて火災保険に加入する 等
③低減 小さい 高い 事故の発生頻度や発生時の損害を減ずる
例)緊急時に事業継続できるようにBCPを策定する 等
④保有 小さい 少ない リスクの顕在化を許容したうえで、その際に被る経済的な損失を保有する
例)機械の経年劣化による故障に対して貯蓄で対処する 等

このように、発生頻度は低いものの、発生した場合の影響度が大きいリスクは、保険の加入を検討するなど、自社で対応可能なリスクと、保険で備えるべきリスクを切り分けることがポイントです。

リスクの影響度や発生頻度は企業によって異なります。また、適切な対処法の選択にあたっては、自社の事業やリスク状況を客観的に分析し、自社の置かれた状況を勘案する必要があります。

補償内容や保険料の決定方法などは、保険会社によって異なりますので、自社に必要な保険を検討する際は、保険会社のホームページを確認したり、損害保険代理店に問合せたりすると良いでしょう。

保険以外のリスク対策手段

前述した通り、保険はリスク対策の有用な手段ですが、「保険だけ」に頼るのではなく、貯蓄やBCP整備など複数の対策を組み合わせることが現実的です。

実際、中小企業を対象とした調査では、リスク対策として、「損害保険への加入」が55.5%と最も多いですが、貯蓄や共済加入などでも備えていることが伺えます。

リスクの内容や頻度、企業の実情に応じて、保険と保険以外の対策を組み合わせることで、コストを抑えつつ無理のない備えが可能になるでしょう。

法人保険で企業の安心と未来を守る

法人保険は、自然災害、サイバーリスク、従業員トラブル等、幅広い事業リスクに備えられる手段です。また、単にリスクをカバーするだけでなく、資金繰り対策や、傷害保険・医療保険を活用した福利厚生など、企業の経営戦略に幅広く活用できます。

保険料の安さを重視して、いざという時に必要な補償が受けられなければ、結果として金銭的な負担が大きくなる可能性があります。自社のリスクを正確に把握した上で、補償内容や保険料のバランスなどを踏まえて、適切な保険を選ぶことが重要です。

しかしながら、保険の種類は多く、保険会社によって商品内容が異なるため、自社だけで判断するのは難しい場合があるかもしれません。そのような場合は保険会社や損害保険代理店に相談するのがおすすめです。

適切な保険に加入することで、保険は単なる「支出」ではなく、企業価値を守る投資になります。
企業の安定的な継続を支える基盤として、ぜひ法人保険の活用を検討してみてください。
また、企業のリスクは年々、多様化・複雑化しているため、既に保険に加入している場合も必要な補償が揃っているか、定期的に補償内容を見直すことが肝要です。