企業活動においては、従業員の運転中の事故に加え、駐車中の盗難や自然災害による損傷など、社用車に関する事故・損害のリスクが、業種を問わず発生する可能性があります。
こうした社用車のリスクに対しては、自動車保険への加入が有効であり、所有・使用する車両の台数に応じて「フリート契約」または「ノンフリート契約」といった契約方式が用いられます。
フリート契約
2026/03/27
フリート契約とは?自動車保険のポイントを解説

社用車や配送車など、業務で自動車を使用する企業では、保険の管理やコスト負担が課題となることがあります。このような課題に対応するためには、所有・使用する車両の台数に応じた契約方法を選択することが重要です。
一般的に自動車保険では、「フリート契約」や「ノンフリート契約」といった契約方式があります。
本記事では、フリート契約・ノンフリート契約のそれぞれの仕組みや特徴を解説します。あわせて、自動車保険と運送保険との違いも解説しますので、社用車の保険を検討する際にぜひお役立てください。
社用車リスクに備える自動車保険(フリート/ノンフリート)

フリート契約とノンフリート契約の違い
フリート契約とノンフリート契約は、契約条件や保険料算出の仕組みが異なります。
一般的に、フリート契約は、同一条件であるノンフリート契約と比較して、保険料が割安になる傾向があります。
| フリート契約 | ノンフリート契約 | |
| 契約車両の台数条件 | 10台以上 | 1~9台 |
| 基本保険料 | フリート契約者料率 | ノンフリート等級別料率 |
| 保険料割引・ 割増の適用方法 |
契約者単位で適用 | 自動車1台単位で適用 |
| 保険料割引・ 割増の決定方法 |
保険を契約している自動車全体について、契約者が支払った保険料と保険会社が支払った保険金との割合(損害率)により決定 | 1台ごとの事故の発生の有無・件数などにより決定(保険会社が支払った保険金の額とは無関係に決定) |
| 年齢別の割引制度 | 無 | 有 |
ノンフリート契約では、事故の発生の有無や件数によって割引・割増率が決まります。つまり、事故が多いほど保険料は上がります。一方、フリート契約では事故件数よりも「損害率」が重視されます。
そのため、事故件数が少なくても、1件あたりの保険金が大きい場合には、保険料が大幅に上がる可能性があります。
フリート契約とノンフリート契約について、それぞれの具体的な特徴を解説いたします。
フリート契約の特徴

フリート契約は、法人全体のコスト削減や管理効率化、安全対策の強化につながります。
なお、フリート契約では、契約台数に応じて割引・割増率が異なるほか、運転者の年齢条件や本人・配偶者に限定した割引制度を適用されない点が特徴です。
フリート契約の対象
契約者が所有・使用する車両の合計台数が「10台以上」となる場合は、フリート契約となります。営業車・配送車・貨物車など、業種を問わず、幅広い車両が対象です。
ただし、台数としてカウントされるのは、「契約者が所有し、かつ自ら使用している車両」に限られる点は注意する必要があります。例えば、契約者が所有していたり、使用していたりしても、次のような車両はフリート契約の対象台数には含まれません。
- 他人や別会社に貸し出している自動車
- 会社の社長や従業員が個人で所有している自動車
フリート契約の保険料の仕組み
フリート契約では、「フリート契約者料率」が適用され、保険料は契約している全車両の事故実績をもとに算出されます。
具体的には、「契約者が支払った保険料」に対する「保険会社が支払った保険金」の割合、いわゆる「損害率」によって、翌年以降の保険料が決まります。
このため、フリート契約は、企業全体で安全運転体制を整備し、事故防止に取り組むことで、その成果が保険料に反映されやすい仕組みとなっています。
なお、運転者の年齢に関係なく保険料が同一である点も、フリート契約のメリットといえるでしょう。
フリート契約のメリット
フリート契約では、同一条件であるノンフリート契約と比較して保険料が割安となる場合があるほか、契約管理や安全対策の面でも、次のようなメリットもあります。
- 契約期間中に新たに自動車を取得した場合でも、既存車両と同じ割引が適用される
- 「全車両一括特約」などのオプションを付けることで、すべての車両を1つの保険証券でまとめて管理でき、事務負担の効率化が期待できる
- 全車両の事故データをまとめて把握することで安全対策や事故防止施策に活用できる
営業車や配送車など、複数の車両を1つの契約とすることで、契約・更新・保険料支払い・事故報告などの事務手続きを一括して行うことができます。また、満期日が共通となるため、更新忘れが起こりにくい点もメリットといえるでしょう。
さらに、保険会社によっては、ドライブレコーダーの映像分析や運行データの分析支援を行っている場合もあります。こうしたサービスを活用することで、事故傾向を可視化したうえで、ドライバー教育や運転指導に活かすことが可能です。
フリート契約の注意点
多くのメリットがある一方で、フリート契約には次のような注意点もあります。
- 損害率が高いと全車両の保険料が上がる
- 9台以下になった場合はノンフリート契約に切り替わる
フリート契約では、1台の大きな事故であっても、契約全体の損害率に影響し、翌年以降の保険料が大幅に上昇する可能性があります。
なお、車両数が9台以下となると、ノンフリート契約へ切り替わるため、契約車両を減らす場合は注意が必要です。
ノンフリート契約の特徴

ノンフリート契約は、保有・使用する車両台数が「9台以下」の企業等を対象とした自動車保険の契約方式です。
フリート契約と比べて仕組みがシンプルで、事故の有無や件数に応じて保険料が調整される点が特徴です。
ノンフリート契約の対象
契約者が所有・使用する車両の合計台数が「9台以下」となる場合は、原則としてノンフリート契約となります。営業車や業務用車両を少数保有している中小企業等にとって、一般的な契約方式といえるでしょう。
なお、保険会社によっては、2台~9台の車両を所有・使用している場合に、「ミニフリート契約」と呼ばれる契約方式を設けていることがあります。ミニフリート契約は、ノンフリート契約の一種ではあるものの、複数台割引など、一定の優遇措置が設けられているケースがあります。
ノンフリート契約の保険料の仕組み
ノンフリート契約では、事故の内容や回数に応じて、契約者ごとに1~20等級の区分が設定されており、この等級に応じて保険料が割引・割増される「ノンフリート等級別料率」が適用されます。
一般的に、初めて自動車保険を契約した場合は6等級からスタートし、1年間事故がないと1等級上がり、翌年の保険料が割引されます。一方で、事故を起こして保険金の支払いを受けると、3等級下がり、翌年以降の保険料が割増されます。
また、事故を起こした契約者と無事故の契約者の保険料負担を公平にするため、事故を起こした場合には、3年間、低い割引率が適用される制度が設けられています。この期間中に無事故で過ごせば、無事故の契約者と同じ割引率が適用されるようになります。
取扱いは各社によって異なる場合がありますので、詳しくは保険会社または代理店に問い合わせることが必要です。
【等級別割増引率例】
| 等級 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 無事故 | 108% | 63% | 38% | 7% | -2% | -13% | -27% | -38% | -44% | -46% |
| 有事故 | -14% | -15% | -18% | -19% |
| 等級 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 無事故 | -48% | -50% | -51% | -52% | -53% | -54% | -55% | -56% | -57% | -63% |
| 有事故 | -20% | -22% | -24% | -25% | -28% | -32% | -44% | -46% | -50% | -51% |
ノンフリート契約のメリット
ノンフリート契約は、車両台数が比較的少ない企業等にとって、仕組みが分かりやすく、運用しやすい契約方式です。フリート契約と比較すると、通常、次のようなメリットがあります。
- 事故の影響が原則として自動車1台単位で反映されるため、特定の車両の事故が他の車両の保険料に影響しにくい
- 等級制度により、無事故で経過した場合には基本的に等級が上がり、翌年以降の保険料が割引される
ノンフリート契約では、事故の有無や件数に応じて等級が増減し、その等級に基づいて保険料が決まるため、運転実態や事故状況が保険料に反映されやすい仕組みといえます。
また、車両台数が少ない段階では、契約管理が過度に複雑になりにくく、必要な補償を選びながら導入しやすい点も、ノンフリート契約の利点といえるでしょう。
ノンフリート契約の注意点
ノンフリート契約では等級制度が保険料に大きく影響するため、次の点には注意が必要です。
なお、取扱いは保険会社によって異なる場合がありますので、詳しくは保険会社または代理店にご確認ください。
- 盗難や台風、洪水、高潮などによって車両保険の保険金を受け取った場合、1事故につき1等級が下がることがある(これを「1等級ダウン事故」という)。また、1年間、有事故契約者の低い割引率が適用される(1年間無事故で過ごせば、無事故契約者と同じ割引率が適用される)
- ケガにより人身傷害保険の保険金を受け取った場合、事故がなかったものとして扱われ、1等級上がるケースがある(これを「ノーカウント事故」という)
- 満期時に、契約継続の手続きを行わなかった場合、新規契約として扱われ、それまでの等級アップによる割引が受けられなくなることがある
このように、ノンフリート契約では、事故の内容や保険金の支払い状況によって等級が変動し、保険料に影響を及ぼす点を十分に理解しておくことが重要です。
ノンフリート契約は、車両台数が少ない段階では管理しやすく、保険の仕組みも分かりやすい契約方式ですが、車両台数の増加や事故件数の増加に伴い、保険管理やコスト面で負担が大きくなるケースもあります。
自動車保険を検討する際のポイント

自動車保険を検討する際は、保険料や補償内容だけでなく、事故対応や安全運転支援といった運用面まで含めて確認することが重要です。例えば、次のようなポイントを事前に確認しておくとよいでしょう。
- 適用される保険料率や割引制度
- 事故対応のスピードやサポート体制
- ドライブレコーダー連携や安全運転支援の有無
補償内容や条件、サポート体制は保険会社により異なるため、複数の保険会社を比較検討することで、より自社に適した設計がしやすくなります。
事業リスクに応じた補償設計が重要
自動車保険では、事業内容や車両の使い方に応じて、次のように柔軟な補償内容を設計することが可能です。
- 弁護士費用特約、代車費用、ロードサービスなどの付帯
- 業務形態(営業・配送・輸送)に応じた対人・対物保険金額の調整
- 車両ごとの補償内容の個別設定
例えば、配送車には車両保険を付け、営業車は対人・対物補償を手厚くするなど、車両の役割やリスクに応じた柔軟な設計ができます。また、免責額の設定などにより、補償と保険料のバランスを取ることもできます。
また、運送業や物流業などでは、車両事故に備える自動車保険に加え、輸送中の貨物を補償する運送保険を組み合わせることで、より実態に即したリスク対策が可能となります。
自動車保険と運送保険の主な違いは次のとおりです。
| 自動車保険 | 運送保険 | |
| 対象 | 車両・人身・対物 | 輸送中の貨物 |
| 主な補償 | 自動車事故による損害 | 貨物の破損・盗難・火災など |
| 契約主体 | 事業者(車両保有者) | 運送業者または荷主 |
| 特徴 | 車両事故を包括的に補償 | 積載貨物の補償に特化 |
車両の種類や台数、業務内容によって必要な補償は異なります。自社のリスクを踏まえ、保険会社や損害保険代理店など専門家に相談しながら、最適な契約方式・補償内容を検討するとよいでしょう。