交通事故に遭った際に「相手が無保険のときはどうなるのだろう」と、気になる方は多いでしょう。実際に交通事故を経験された場合、補償を受けることができるのか不安を覚える方もいらっしゃると思います。
本記事では、無保険車と交通事故が起きたときの注意点や、事故後の流れについて解説します。
交通事故による損害の補償を対象にした保険として、自賠責保険と自動車保険の2つがあります。自賠責保険は、人的損害を補償する保険で、保険金に支払限度額が設定されています。一方、自動車保険は、自賠責保険ではカバーしきれない損害を補償する保険で、様々な種類があります。
自動車保険の加入は任意ですが、自賠責保険は被害者保護の観点から、法律によりすべての自動車に加入が義務づけられている強制保険です。したがって、原則として全ての自動車に自賠責保険が付保されています。
しかし、ごく稀に、強制保険である自賠責保険にも加入していない無保険の状態である自動車によって、交通事故の被害を受ける可能性があります。
もし交通事故の加害者が自賠責保険に加入していない場合、被害者は以下2つの対応が必要になる可能性があります。
●加害者と直接に示談交渉・示談手続きを行う必要がある
●治療費などを自己負担し、加害者に損害賠償を行う必要がある
それぞれについて、以降で詳しく解説します。
加害者が自動車保険(対人賠償責任保険)に加入していれば、その保険会社が窓口となって示談交渉を行うケースが多いです。しかし、加害者が無保険の場合は、加害者と直接やりとりをしなければいけません。加害者と連絡が取れないなどのトラブルや、円滑に示談が進まないおそれがあります。
加害者が無保険の場合、治療費などの損害は自己負担したうえで、加害者に損害賠償の請求を行う必要があります。その際、なんらかの事情で加害者から損害賠償金の支払いを受けられない場合には、発生した損害の賠償を受けられないおそれがあります。
交通事故の加害者が自賠責保険に加入していなかった場合、被害者は主に以下4つの対応を検討することが考えられます。
●被害者自身が加入する保険を活用する
●政府の保障事業に請求する
●弁護士へ相談する
●被害者や遺族のための援護制度を利用する
それぞれ詳しく確認していきます。
被害者自身が自動車保険(人身傷害補償保険等)や生命保険・医療保険等に加入している場合は、その保険から保険金を受け取れる可能性があります。契約内容を確認のうえ、不明点等があれば加入している保険会社に問い合わせるとよいでしょう。
加害者が自賠責保険に加入しておらず、損害賠償を受けられないときは、政府の保障事業に請求することができます(自賠法第72条1項)。ひき逃げや盗難車などによる交通事故の場合も対象です。
政府の保障事業は、被害者が受けた損害を、加害者に代わって国(国土交通省)がてん補する制度です。支払限度額は自賠責保険と同じですが、自賠責保険と異なる点は以下のとおりです。
また、政府の保障事業に請求できないケースは、以下の4つがあります。
政府の保障事業に請求を希望する場合は、損害保険会社へ問い合わせましょう。
加害者が無保険の場合は、加害者と直接示談交渉・示談手続きをしなければいけません。場合によっては、損害賠償金の支払いを受けるために、訴訟を提起しなければならないケースもあります。
これらの対応は専門性が非常に高く、かつ煩雑であるため、弁護士に相談のうえ、対応を依頼することも一つの手段です。
弁護士に依頼をした場合、加害者との交渉等は弁護士が対応することになります。
自身の意図を汲んで交渉してもらえているのか、加害者と適切に応対しているのかなどに注意をしながら、弁護士に任せきりにするのではなく、必要に応じて弁護士とコミュニケーションを取ることが大切です。
なお、被害者自身が加入する損害保険の契約内容によっては、弁護士費用や法律相談費用等が補償される弁護士費用特約が付帯されている可能性があります。弁護士費用特約が利用できるかどうかは、事故状況や契約内容によって異なるため、保険会社に確認のうえ活用するとよいでしょう。
交通事故時の弁護士費用を補償する特約は、自動車保険のほか、火災保険等に付帯されている場合もあります。
一家の働き手を失ったり、ケガのため収入が減ったりと交通事故により経済的な問題を抱えた被害者や遺族のための援護制度があります。詳しくは各機関にお問い合わせください。
加害者への連絡や督促には、時間や精神的負担がかかるとともに、示談には高い専門性が必要になるため、場合によっては、弁護士等の専門家へ相談することが考えられます。
加害者が自賠責保険には加入していたものの、自動車保険には未加入であった場合は、被害者は以下の対応を検討することが考えられます。
交通事故による治療についても、業務中や通勤途中であれば労災保険、それ以外の場合は健康保険が利用できます。
特に加害者が無保険の場合は十分な賠償を受けられないリスクがあり、治療費が自己負担となるおそれがあります。自己負担が3割(1割または2割負担の場合もあり)である健康保険を利用すれば、負担軽減につながります。
なお、国や健康保険組合等は、労災保険や健康保険からの給付金相当額(支払額)を加害者に求償します。そのため、被害者が労災保険や健康保険を利用する際は、国や健康保険組合等に対して第三者行為による傷病届を提出する行必要があります。