火山災害セミナー
2015年度 地域防災力向上取組みin熊本
近年の火山活動から考える

●日時:2015年12月20日(日)13:30~16:15
●会場:くまもと森都心プラザ 6階 A・B会議室
●対象:一般市民、行政・消防関係者 等
●来場者数:60名
●主催等:主催 日本損害保険協会、後援 内閣府政策統括官(防災担当)、阿蘇火山博物館
●開催趣旨:「日本の火山活動が活発になっているけど阿蘇山は大丈夫?」「噴火が発生したらどんな被害が起きるの?」「噴火に備える事前対策は何をすべきか分からない」等々、一般市民が知りたい火山災害対策について、近年の火山活動の動向とともにお伝えする。

報告書

報告書(0.54MB)

基調講演

近年の火山活動の動向、火山災害とは

●講師:清水 洋氏(九州大学大学院理学研究院 教授/火山噴火予知連絡会 副会長)
●概要:
・火山のタイプと噴火様式
 ⇒噴火は高温のガスが地下水と接触して発生する水蒸気噴火、マグマが地下水と接触して発生するマグマ水蒸気噴火、マグマそのものが地表まで出て噴出するマグマ噴火に分類される。
 ⇒マグマが関与しない水蒸気噴火でも大規模な爆発を起こした例があること、マグマ噴火は粉砕されたマグマが噴出し爆発性も激しいことから、どの分類の噴火も危険である。
・主な火山災害の種類(溶岩流、火砕流、岩なだれ(山体崩壊)、泥流(土石流)、噴石等)
 ⇒火山災害は多種多様なうえ、複数年単位で長期化することが多く、噴火が終わる前から対策とともに復旧・復興を同時に進めていかなければならない難しさがある。
・火山噴火予知
 ⇒火山学はこの20数年の間に大きく進歩しており、現在火山で何が起きているかを把握出来るようになっているものの、正確に噴火の時期・場所・規模・様式・発生から終息までの期間を予知する実用的なレベルには至っていない。
 ⇒噴火予知のために、基礎的な研究とともにリアルタイムの観測を継続し、それらに基づいた迅速な情報提供を出していくことが今後の課題である。

スライド:火山噴火予知の5要素
スライド:火山災害軽減のために

シンポジウム

今後、必要となる火山災害対策とは

●コーディネーター:木村 拓郎 氏(減災・復興支援機構 理事長)
●パネリスト:
 池辺 伸一郎 氏(阿蘇火山博物館 館長)
 岩田 孝仁 氏(静岡大学教授/前静岡県危機管理監/内閣府火山防災エキスパート)
 清水 洋 氏(同上)
 宮下 加奈 氏(ネットワーク三宅島代表/火山地域の市民団体相互支援ネットワーク 事務局長)
●概要:
・噴火警戒レベルについて
 ⇒噴火警戒レベルの意味を理解し適切に運用することは防災・減災に役立つ。
 ⇒噴火警戒レベルの内容について、火山の専門家や行政職員は理解度や認知度が高いものの、一般市民は中身や正確な内容を承知している方は少ないと思われるため、啓発が重要となる。
・火山災害による多種多様な被害について
 ⇒噴火は発生頻度が高くないことから過去の災害の記録や記憶を伝承することが重要だが、火山災害は多種多様であり、1つの火山でも過去の噴火と比較すると災害の内容が異なるケースがあることに留意が必要である。
 ⇒噴火が観光地で発生した場合は風評被害も発生する。
・緊急避難対策について
 ⇒噴火警戒レベル1の場合でも突然の噴火はあり得るため、その前提で対策を検討しておく必要がある。
 ⇒登山者は山に入る際に山の情報を事前に認識しておく「自助」を前提にしながら、シェルターや山小屋の整備等の対策を取る必要がある。
・広域避難対策について
 ⇒終息が見えない火山災害において、自治体を超えた避難は住民にとって精神的負担が大きい。受け入れる側の自治体にとっても、相当の理解・協力が求められる。避難先の自治体と普段からコミュニケーションを取れれば良い。
 ⇒広域避難対策が進んでいる自治体は少ないと思われるが、課題の洗い出しを含めた研究が必要である。
・災害の長期化について
 ⇒災害の長期化により、収入の途絶が継続することが最も大きな問題である。
 ⇒災害の長期化に伴い、観光業、農業への風評被害の長期化も懸念される。具体的には、観光業については観光客の減少、農業については火山灰が降った農作物は洗えば問題なく食べられるにもかかわらず売れなくなるといったことが発生し、経済的な被害に繋がっていく。

講師等の肩書きはイベント開催当時のものです。

更新:2017.10.03(業務企画部 啓発・教育・防災グループ)

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