新潟県民向けにシンポジウムをLIVE配信

地震防災をあなたへ、そしてあなたから

 日本損害保険協会 北関東支部(小出 和志・東京海上日動火災保険株式会社 執行役員 新潟支店長)は、株式会社新潟日報社(代表取締役社長:小田 敏三)が実施する「新潟日報 みらい大学」に協賛して、新潟県民向けに地震防災減災シンポジウムをLIVE配信しました。

 新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、地震・災害発生時には避難所での感染対策が不可欠であり、防災と防疫の両面でどのように備えていけばよいのかについて考えました。

 当日は、感染症予防のためLIVE配信で開催しましたが、新潟県民に広く周知し備えに役立てていただくため、11月28日発行の新潟日報第2面に記事を掲載しました。また、動画共有サイトYoutubeからご覧いただける動画を当協会Youtube公式チャンネルで公開しています。

新潟県地震防災・減災シンポジウム

開催概要

第一部 基調講演「新型コロナ時代の避難対策」

新型コロナ時代の避難対策

 新型コロナウイルスの影響により、今までの災害避難の常識を見直す時期に来ている。避難所ではなく自宅で避難する、あるいは自家用車や親戚宅などに避難する「分散避難」を選ぶ人が増えると予想される。在宅避難の安全性は自己判断に委ねられるため、自宅周辺で起こり得る被害(土砂崩れ、津波など)を表したハザードマップは重要な手がかりとなる。車中泊も車が生活の空間になることから、寝るだけでなく生活に必要なものが不足しないかという観点も必要だ。

 感染症蔓延下であっても、地震発生時には命を守る行動は最優先だ。どこに逃げるべきか災害発生前にハザードマップのPDFをスマートフォンに保存し確認することをお勧めする。避難所は3密回避ですぐに満員になることも想定し、代替の避難先を災害前に考えておきたい。

 災害発生後、災害関連死や災害関連疾患を予防するために、健康である状態を保つという意識が重要だ。具体的には、T・K・B(トイレ・キッチン・ベッド)の3つは最低限の質を保つ必要がある。避難所では床からの接触感染を防ぐためベッドは必要となる。個人の備えとしては、接触感染予防や床のノイズを軽減するため、上履きの持参をお勧めする。人は「寝る」「食べる」行為はある程度我慢できるが、「排泄」だけは難しい。それだけにトイレは最優先の生活資材になる(車中泊も同様)。車いす・杖が必要な人・乳幼児も使えるトイレ、男女の区分けに加えて、感染症予防のための消毒も極めて重要になる。常用薬についても1週間以上の分量、あるいは再処方できるように薬手帳も持参したい。食については、災害救助法で一人当たりの食費が決まっており、安全面や衛生面を考えるとおにぎりや菓子パンになりがちである。便秘や低体温症、高血圧や心不全、エコノミークラス症候群など災害関連疾患を防ぐ観点では、これまでの「食」の考えを個々人の状況に応じたものに変える時期に来ている。

 まずは災害で生き残る。その術を身に着けてこそ支援が必要な人への共助ができる。この自助・共助が膨らむほど、その地域は間違いなく安全な地域となる。

日本赤十字北海道看護大学看護薬理学領域教授
根本 昌宏さん

第二部 パネルディスカッション「新型コロナ時代の防災対策」

~複合災害の時代、個人の経済的備えは不可欠~

 阪神・淡路大震災以降、地震の活動期に入っており、今後30年以内には首都直下地震や南海トラフ巨大地震が発生する可能性がある。昨今の豪雨の頻発化により、地震災害と豪雨災害が同時に発生する可能性、さらには感染症拡大も加わる。一方、少子高齢者による核家族の進展により、コミュニティによる助け合いが難しくなり、行政も財政面から職員数を減らすなど、社会の脆弱化によって被害が拡大することも予想される。

 南海トラフ地震が発生すると約200万戸が全壊すると言われている。国の生活再建支援法に基づく支援金だけでは住宅を再建するのに不足する。そうした事態をカバーするのが地震保険。保険で住宅再建に必要な資金が得られれば復興は一気に進み、地域の再建にもつながる。保険は自助の側面があるが、コミュニティの助け合いの要素も多分にあると思う。

兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長
室崎 益輝さん

~有事に備えたトイレの訓練を。地域・学校が一緒になって防災教育を~

 大規模な商業施設のように、女性用トイレの方の数が多く設置されている。仮設トイレも女性の視点を活かしたい。また、夜間のトイレの安全性にも配慮する必要がある。在宅避難についても携帯トイレ訓練や、自治体の汚物廃棄ルールの確認は、平時から家庭や自治体、自主防災組織で実行してほしい。

 今年の4月から小中学校の授業に防災カテゴリーが加わった。地域住民も教師とともに防災教育に参加していただきたい。北海道胆振東部地震では、地域の祭りの経験を活かし、発災当日から炊き出しが行われた。地域の祭りや集いを次世代につなげ、万が一の時に活かしてほしい。

日本赤十字北海道看護大学看護薬理学領域教授
根本 昌宏さん

~様々な事情を抱える方のトイレ問題への理解を。防災対策は地域ぐるみで、平時から楽しく~

 阪神・淡路大震災では、発災から6時間経ってもトイレが見つからない例があった。排便困難な方がドアを叩かれ用が足せないからトイレに行かない、排尿困難な事情を言いづらいなど、事情を抱える方のトイレ対策も大切だ。中越地震では小学生が汚物を自分たちで処理しようとしたのを見て、大人が動き出して地域全体につながったのも印象的だった。

 平時の生活を災害に耐えられる暮らし方にすることも大切だ。便秘しないように食材を豊かにするなど、健康の備蓄が災害時に活きてくる。防災対策は楽しくなければ続かない。お祭り感覚で平時は楽しく集まり、地域のリスクを調べる・考える、皆で火を消す、食べる、ハザードマップを見るなどの実践が大切。また、自身の住宅は耐震診断を行い、耐震補強することが安心につながる。

元横浜市消防局消防監
一般財団法人 防災教育推進協会常務理事
秦 好子さん

~新潟は地震保険発祥の地~

 地震保険は新潟に縁がある。1964年の新潟地震で、当時の大蔵大臣であった田中角栄氏が政府と民間保険会社が共同で運営する地震保険制度を創設したのが始まり。

 地震保険は公共性の高い保険で、保険料はどの保険会社でも同一、利益は出さずに必要経費を除いた保険料を積み立てることにより将来の保険金支払いに備える。総支払限度額は11.7兆円となっており、これは東日本大震災の保険金支払額の約8~9倍。

 地震保険は火災保険とセットで加入する。付帯率(火災保険に地震保険を付帯している割合)は全国ベースが66.7%で、新潟県の付帯率は69.6%と全国平均を上回っている。一方、世帯加入率(世帯数に対する地震保険保有契約数の割合)は33.1%となっており、火災保険未加入者も含め、地震保険を一層お勧めしていきたい。

一般社団法人 日本損害保険協会
新潟損保会会長
小出 和志さん

~自分の命は自分の手で守る~

 災害というのは、その時の社会で隠れている問題を顕在化させる。たとえば災害が発生すると高齢者対策が常に課題となるが、それは日常の中に隠れている高齢者の問題が見えてくるだけで、災害が起きて問題が発生するわけではない。災害時の対策を考えるためには、普段私たちが高齢者対策をしっかり行っているか否かが問われる。新型コロナ感染症が浮き彫りにした避難や避難生活の問題は、従来からの避難の在り方や避難生活の在り方でよいのかという課題とも重なっている。

 感染症対策で大事なのは「マスク」「手洗い」「3密の回避」など自らの行動だ。防災も人に自分の命を任せてはならないことを、新型コロナ感染症は私たちにしっかりと教えてくれたと思う。

コーディネーター
国士舘大学 防災・救急救助総合研究所教授
元NHK解説副委員長
山崎 登さん

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

概要

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