協会長ステートメント
会長 金杉 恭三

 12月の定例会見以降、これまでの主な取組みにつきまして、ご報告と所感を申し上げます。

はじめに

 我が国の社会・経済については、新型コロナウイルス感染症の拡大により、先行きは予断を許さない状況となっています。
 昨年の12月に中国で発生したこの感染症は世界各国・地域に感染が拡大し、3月11日、世界保健機関(WHO)は「パンデミック」を宣言する事態に至りました。中国では沈静化が窺える状況となっていますが、イタリアなどの欧州諸国、イランや韓国では大規模な感染が続いています。各国は封じ込めに尽力していますが、終息までの見通しは立っていない状況です。
 このような世界的な感染の拡大だけでなく、我が国においても、国内感染者の増加によって、消費や生産が停滞し、観光業をはじめとする様々な産業が大きな打撃を被っており、国民の不安が高まっています。政府や地方自治体は、経済活動を維持しつつ、感染症の拡大を防止するという難題に直面しており、北海道での緊急事態宣言、全国小中高校の一斉休校、大規模イベントの中止・延期などの封じ込め措置がとられましたが、未だ終息には至っておらず、なおも国をあげた取組みが必要であると考えております。
 会員各社におきましては、新型コロナウイルス感染症が補償の対象となる損害保険商品に加入されているお客様が健康被害などを受けられた場合には、迅速かつ確実に保険金をお支払いしてまいります。また、感染拡大の防止と契約者保護の観点から、保険契約の継続契約の締結手続きおよび継続契約の保険料の払い込みを猶予する措置を実施してまいります。感染がさらに拡大した場合でも、自動車保険や火災保険などの引き受け業務や保険金の支払い業務を維持できるよう必要な体制の構築に努め、社会インフラとしての使命を果たせるよう万全を期してまいります。
 なお、当協会としましては、新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し会員各社への情報提供および対応の徹底を行うとともに、募集人に対しては、損害保険募集人資格の有効期限延長措置を実施しております。

これまでの取組みについて

1.自然災害に対する取組み

(1)自然災害リスクに関する取組み

 当協会では、昨今の常態化する自然災害への対応を強化するため、自然災害対応検討プロジェクトチームにおいて、風水害の保険金支払いに関する共同取組み等、自然災害に関する各社共通の諸課題について検討を行っております。現在、会員各社から募った検討課題について優先順位付けを行い、議論を進めております。
 なお、自然災害の常態化を踏まえ、持続可能で安定的な補償提供のためには、商品面でも会員各社が創意工夫を行っていくことが必要であると認識しております。

(2)児童向けの防災教育取組み

 当協会では、1月25日に第16回「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」表彰式を開催し、受賞者の皆さまや教育関係者など144名にご参加いただきました。表彰式では、延べ20万人以上の参加児童によるこれまでの取り組みを振り返り、今後の新しい取り組みとして、タブレットを活用した「ぼうさい探検隊」アプリの紹介、マップを用いてまちの改善に繋がった行政等への要望・提言事例、まち歩きに必要な「事前学習ツール」の活用について説明しております。引き続き、子どもたちの防災意識と地域防災力の向上に努めてまいります。

(3)地震保険の普及に向けた取組み

 当協会では、大規模な地震の発生に備え、地震保険の普及と消費者の理解促進に向けた取組みを行っております。12月および1月には南海トラフ地震を題材としたBS放送特別番組「防災スペシャル 巨大地震があなたを襲う~命と暮らしをどう守る~」を放送し、推定で38万世帯以上の方々に視聴いただきました。このほか雑誌、新聞への広告掲載、宣伝動画の配信やテレビ番組の提供なども行っております。引き続き、広報活動を通じ地震リスクの啓発と地震保険による備えを訴求してまいります。

2.高齢者・外国人に向けた取組み

(1)高齢者向けの取組み

 当協会では、高齢者の方に安心・安全に移動していただくため、高齢者の方への安全運転、歩行中の事故防止の取組みを全国各地で行っております。2月16日には、香川大学・香川県・香川県警察・高松市・国土交通省四国地方整備局等のご協力のもと「高齢者交通事故防止シンポジウム」を開催し、安全運転サポート車(サポカー)の試乗体験や有識者講演に加え、パネルディスカッションでは産官学民それぞれの視点からご意見をいただきました。引き続き、警察、関係省庁や地方自治体、大学などと連携し、地域の実情に応じた啓発活動を行ってまいります。

(2)外国人向けの取組み

 当協会では、日本国内で災害や事故などに遭遇した時に有用と考えられる様々な外国人向けの情報を一元化した「まとめサイト」を運営しております。この1月より、日本や東京の魅力的な情報を発信している訪日・在留外国人向けウェブサイトとタイアップし、本サイトの周知に努めております。その結果、現在までに54の国や地域の方々に本サイトを利用していただいております。
 新型コロナウイルス感染症への対応については、日本政府観光局が運営する外国人向け新型コロナウイルス感染症のコールセンターの周知を行っております。
 また、12月にリリースした「交通事故防止啓発チラシ」は警察庁ご協力のもと趣旨に賛同いただいた全国の警察本部へ提供し、地域に居住する外国人の方に対して、運転中や歩行中の「ながらスマホ」の禁止等についても、呼びかけを行っております。今後も当協会は、訪日・在留外国人の方が安心・安全に日本に滞在できるよう啓発活動を行ってまいります。

3.各種課題への取組み

(1)自動運転等に関する取組み

 自動運転車の社会実装に向け、当協会では、事故時の原因分析やデータ記録装置のあり方について調査研究を進めるとともに、国土交通省による自動運行装置等の保安基準の策定に向けた意見募集に対し、作動状態記録装置が記録する情報などについて要望や提言を行いました。また、関係省庁や団体等との意見交換についても継続的に実施しております。今後も、法制度や各種ルールにおける課題に対し、実効性のある対策を検討・発信していくことで、安心・安全な自動運転社会の実現に貢献してまいります。
 また、当協会では、新たに後付けの「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」についての紹介チラシを、協会の「自動運転に関する特設ページ」上に掲載しました。引き続き安全運転支援システムについての理解促進など、啓発活動に取り組んでまいります。

(2)サイバーリスクに関する取組み

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、国内企業へのサイバー攻撃が急増する懸念があり、早急な対策が求められています。当協会では、2018年度に実施した企業におけるサイバーセキュリティ対策の実態調査結果をさらに分析するため、中小企業の経営者を対象としてサイバーリスク意識調査を行いました。アンケート結果によると、中小企業の24%がサイバー攻撃への対策をしていないこと、その理由として中小企業の経営者の約半数がサイバー攻撃をイメージできていないことが判明しました。本調査結果を踏まえ、当協会が公開している「サイバー保険特設サイト」を中心に、中小企業のサイバーセキュリティ対策の強化に向けた取組みを行ってまいります。

(3)自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)運用益拠出事業

 当協会では、損害保険各社の自賠責保険事業から生じた運用益を自動車事故防止対策、自動車事故被害者支援等に活用しております。2020年度は、昨今の環境変化を踏まえ、高齢者事故の削減に資する新規事業や、交通事故に起因する割合の高い脳外傷や脊髄損傷等への対策を中心とした42の事業に、総額18億7,573万円の支援を決定しました。

(4)国際基準などに関する取組み

 当協会は、長年、米国外の保険会社が米国から再保険を引き受ける際に求められる担保の撤廃を、全米保険監督官協会(NAIC)に対して求めてまいりました。この結果、昨年6月に担保要件を定めていたNAICの再保険モデル法が改正となり、本年1月には、担保免除が適用される国・地域に、EU、英国、スイス、バミューダとともに日本が認定されました。この結果、日本に所在する保険会社は、一定の要件を満たせば、再保険担保が免除されることになりました。

(5)アジア各国・地域の損害保険市場に関する取組み

 当協会は、アジア各国・地域の損害保険市場の健全な発展のための各種支援を行っており、その一環としてミャンマーに対する支援を行っております。直近では、2月10日から13日にかけてミャンマー保険当局およびミャンマー保険協会を対象に再保険の役割等に係る研修を開催しました。引き続き、アジア各国・地域の損害保険業界へ各国の実情に応じた支援を行ってまいります。

おわりに

 冒頭申し上げた通り、新型コロナウイルス感染症との闘いは、予断を許さない状況が続いています。しかし、我が国は、これまでも数々の苦難を乗り越えてきた経験があります。我が国全体が力を合わせ、各界それぞれが責務を果たし、英知を結集すれば、この難局も乗り越えられるものと確信しております。当協会としましても、各取組みを通じて損害保険業の使命を果たしてまいります。
 日本にいるすべての人々が新型コロナウイルス感染症の不安から解放され健やかな生活を取り戻せるよう、一日も早く事態が終息することを祈念しております。
 さて、任期満了まであと3か月となりましたが、第8次中期基本計画と就任時に掲げた「自然災害に対する取組み」・「高齢者・外国人向けの取組み」の2つの重点課題については着実に仕上げてまいります。
 そして、目前に控えた東京オリンピック・パラリンピック競技大会の大成功に貢献し、世界中の人々に夢と希望を分かち合うことができるよう、業界一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。
 引き続き、皆さまのご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

以 上

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