【協会長コメント】
東日本大震災から10年を迎えるにあたって

一般社団法人 日本損害保険協会
会長 広瀬 伸一

 東日本大震災で亡くなられた方々とそのご遺族に対して、改めて深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
 東日本大震災から10年という月日が流れました。東日本大震災の死者・行方不明者数は2万2,288人、地震や津波によって12万1,996棟もの住宅が全壊する文字通り未曽有の大災害でした。
 私ども損害保険業界は、被災された皆さまに迅速に地震保険金をお支払いするため、業界を挙げて取り組んでまいりました。その結果、震災後3カ月で約1兆円、累計で82万1,205件・1兆2,862億円の地震保険金をお届けし、被災地の復旧・復興、被災された皆さまの生活再建にお役に立てるよう努めてまいりました。
 また、東日本大震災での経験と教訓を生かし、この10年間で地震保険制度の改定や損害査定の簡素化、契約照会センターの設置などに取り組むとともに、地震保険の普及率を上げるため、地震保険広報活動にも注力してまいりました。
 損害保険業界にはお客さまの〝いざ〟をお守りするという使命があります。また、震災の経験や気づきをしっかりと伝承し、震災の記憶を風化させないことも重要な取組みです。大規模地震が発生した際には、一人でも多くのお客さまのお役に立ち、その使命を果たすことができるよう、地震保険の普及をはじめとした各種取組みを引き続き推進してまいります。

~この10年間の当協会の取組み~

(1)地震保険制度の改定

 保険金支払いの迅速性を確保しつつも、より損害の実態に即した地震保険金をお支払いするため、損害区分を従来の3区分(全損・半損・一部損)から4区分(全損・大半損・小半損・一部損)にする改定を実施しました。また、建物の耐震化を促すため、免震建物割引や耐震等級割引(耐震等級3および2)の割引率を拡大しております。さらには、地震保険制度をより強靭なものとするため、東日本大震災当時は5.5兆円だった保険金総支払限度額は、現在11.7兆円となっております

(2)損害査定の効率化

 大規模地震が発生した場合にも迅速かつ適切に保険金をお届けするため、損害査定の簡素化にも取り組んでまいりました。地震保険の損害査定は、立会調査を原則としていますが、大規模地震が発生した場合に、お客様に損害状況をご申告いただく「損害状況申告方式(自己申告方式)」を広く活用いただけるよう、改定を行ってまいりました。
 また、当協会で電子的に地震保険損害調査書が作成できる「地震アプリ」を開発しました。このアプリを活用した立会調査の実施により、より迅速かつ適切な保険金支払いに繋げております。
 2020年には、全損エリアを特定するための共同調査を効率的に行う「地震保険共同調査効率化ツール」や津波の浸水エリアを早期に把握する「リアルタイム津波浸水・被害推定システム」を導入し、より早く被害の状況を把握する努力を継続しています。

(3)契約照会センターの設置

 東日本大震災の際に、お客さまが、加入した保険会社が不明の場合や保険証券を紛失された場合に、契約会社を確認する「地震保険契約会社照会センター」を設置し、会員各社へ契約照会を実施しました。2014年7月1日からは「自然災害等損保契約照会センター」を設置し、地震だけではなく風災や水災など災害救助法が適用される災害にまで対象を拡大し、お客さまからの照会を受け付けております。

(4)地震保険の更なる普及に向けた取組み

 当協会は従来から、 1.マス媒体等を通じた消費者の理解促進に向けた取組み 2.全国各地の防災活動と連携した取組み 3.代理店の募集活動を支援する取組みを進めております。東日本大震災から10年となる今年度は「今年、もう一度見直す年に。」をキャッチコピーに、地震保険は被災後の生活再建を図るために必要な保険であることを広くお知らせしております。

以 上

サイト内検索