IAIS「保険会社の文化」および「監督カレッジ」に係る各文書案に意見提出

 日本損害保険協会(会長:舩曵 真一郎)は、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が市中協議(パブリック・コメント)に付した「保険会社の文化に関するイシューズ・ペーパー(IP)」(※2)および「監督カレッジに関するアプリケーション・ペーパー(AP)」(※3)に対する意見を提出しました。

1.保険会社の文化IP
※市中協議期間:2021年6月23日から8月23日

(1)文書の概要

・本IPは、健全性リスクとコンダクトリスクを管理し、広範なミスコンダクトの可能性を低減するための重要な交点として保険会社の文化に焦点を当て、その概念や役割について、事例を示すとともに考察することを目的としている。
・なお、本IPではトピックの網羅的な分析の提供や、詳細な監督ガイダンスの作成は意図しておらず、その範囲は保険会社と監督者にとっての保険会社の文化の重要性に関する探索的な考察を行うことに限定される。IAISは、必要に応じて、さらなるエンゲージメントや追加的なIAISの監督文書の策定を通じて、本IPの考察を発展させうるとしている。

(2)損保協会の意見案の概要

・健全な企業文化の重要性や、健全な企業文化の醸成がコンダクトリスクの根本的な解決に繋がり得ることに賛同する一方、保険会社の文化のあり方に関しては多様性が尊重されるべきであり、そのような観点から、単一的な評価方法やアプローチの策定について慎重な対応を要請している。
・IAISが本テーマについて追加的な考察・作業を実施する場合や、監督上の介入基準を検討する場合には、主観的要素と客観的要素のバランスを十分に確保すること、過度に規範的な監督ツールやアプローチを策定しないこと、最終的には各国当局の判断に基づき監督が実施されること等が重要であることを指摘している。

保険監督者国際機構(IAIS)「保険会社の文化に関するイシューズ・ペーパー」に対する損保協会意見

2.監督カレッジAP
※市中協議期間:2021年6月23日から8月24日

(1)文書の概要

・本APは、国境を越えて活動する保険グループを対象に実施される監督カレッジの設立、機能、運営、および監督者・保険会社の役割等についての理解を促進することを目的とし、ベストプラクティスや事例を示している。
・本APは、2014年10月の初版採択以降に策定されたIAISの監督文書、特にICP 3(情報共有および守秘義務要件)(※4)・ICP 25(監督上の協力および調整)の改定、ならびにComFrame(※5)の採択(2019年11月)を反映して作成されている。

(2)損保協会の意見案の概要

・監督カレッジの目的や各関係者の役割等について理解を深める観点から支持を表明するとともに、プロポーショナリティ原則の適用、監督当局間の情報共有における慎重性の確保、監督カレッジの運用に係る柔軟性の確保・保険会社への不必要な負担の回避等の重要性を指摘している。

保険監督者国際機構(IAIS)「監督カレッジに関するアプリケーション・ペーパー」に対する損保協会意見

IAISでは、今回の市中協議に寄せられた意見を参考に更に検討を進めたうえで、本年11月に各文書の確定版を採択することを予定しています。

当協会は、IAISにおける国際保険監督基準策定の議論に積極的に参加しており、今後も市中協議等に際して本邦業界の意見を表明していきます。

(※1)保険監督者国際機構(IAIS)の概要

1994年に設立され、世界200カ国・地域以上の保険監督当局(メンバー)で構成される組織。
主な活動は以下のとおり。
1)保険監督当局間の協力の促進
2)保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
3)メンバー国への教育訓練の実施
4)金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からは金融庁がメンバーとして参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する
方針を掲げている。

(※2)イシューズ・ペーパー(IP)

トピックの背景、現行取組み、ケーススタディ等を提供し、規制・監督上の論点・課題を特定することを目的に作成される文書。監督者が文書の内容を実施することは期待されていないが、基準策定に向けた準備として作成されることが多く、IAISによる今後の作業に関する推奨を含む場合がある。

(※3)アプリケーション・ペーパー(AP)

IAISが作成する文書の一類型。IAISの監督文書(ICP、ComFrame等)の特定のテーマにおいて、原則や基準の一律な解釈や適用が難しい場合に、事例やケーススタディを提供することを目的に作成される文書。助言や具体例、推奨、事例などを含む。

(※4)保険基本原則(ICP)

IAISが定める、すべての保険者・保険グループの監督において適用されるべき基本原則。保険監督機関が自らや保険会社に関し権限を持ち、管理すべき分野(例:免許交付、モニタリング、検査、破綻処理、ガバナンス、リスク管理、資本十分性、投資、開示等)について定める。適用度・強制度に応じ、「原則」、「基準」、「ガイダンス」の3層で構成。IAISのメンバー国はICPに則った監督制度を実施することが推奨されている。

(※5)ComFrame

所定の基準に従って選定される、国際的に活動する保険グループ(IAIGs)の監督のための共通枠組みであり、ICPに追加して適用される。適用度・強制度に応じ、「ComFrame基準」、「ComFrameガイダンス」の二層で構成される。

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