IAIS流動性メトリクス フェーズ2策定に関する文書案に意見提出

日本損害保険協会(会長:舩曵 真一郎)は、保険監督者国際機構(IAIS)(※1)が11月18日から1月23日に市中協議(パブリック・コメント)に付した「流動性メトリクス策定:フェーズ2」に対する意見を提出しました。

1.文書の概要

IAISでは、「保険セクターにおけるシステミックリスクの評価及び削減のための包括的枠組み(Holistic Framework: HF)」(※2)の一環で、個別の保険会社および保険セクターにおける流動性エクスポージャーを分析・モニタリングすることとしており、当該分析のための補助指標として「流動性メトリクス」を開発している。なお、本指標は規制要件ではなく、モニタリングツールとしての使用が検討されているもの。

2020年11月に市中協議が実施されたフェーズ1(簡易的なExposure Approach(EA)である保険流動性比率(ILR)の策定)に続き、今般、フェーズ2として、保険者の将来キャッシュフロー予測を利用するCompany Projection Approach(CPA)や、フェーズ1の市中協議後に修正したEAに関する市中協議が実施されている。

今後、本市中協議の結果を踏まえ、2022年中に流動性モニタリング指標全体を確定する予定。

2.損保協会の意見案の概要

保険セクターの流動性リスクのレベルは銀行セクターに比べて非常に小さいことを十分考慮した、重要性に応じたプロポーショナルなアプローチを採るべきである。

EAは保険セクターにおける流動性の状況を簡便的に把握する早期警戒のための指標としての意義があると思われる。流動性リスクのレベルが小さい保険セクターでは、まずEAによりセクターの流動性の状況を把握しつつ、仮にEAベースで流動性が大きく低下する傾向のある会社があった場合に、当該会社の状況をより詳しく把握する段階的なアプローチを採ることが良いと考えられる。足元でセクターが十分な流動性を保っている段階で、CPAによる詳細な分析を求めること等は過剰な措置であると考える。

流動性が大きく低下する傾向のある会社があった場合に、当該会社の流動性をより精緻に把握する方法として、CPAは適さないと考える。会社の流動性に影響する要素については個別性が高いことから、個別の保険グループ毎の流動性の状況の精緻な把握については、Holistic Frameworkも踏まえた各法域における監督・規制の枠組みに基づき、各法域のグループワイド監督者が各グループの流動性ストレステストの結果を確認する等を通じて行うことで良いと考える。

保険監督者国際機構(IAIS)「流動性メトリクス フェーズ2策定」に対する損保協会意見

当協会は、IAISにおける国際保険監督基準策定の議論に積極的に参加しており、今後も市中協議等に際して本邦業界の意見を表明していきます。

(※1)保険監督者国際機構(IAIS)

1994年に設立され、世界200カ国・地域以上の保険監督当局(メンバー)で構成される組織。
主な活動は以下のとおり。
1)保険監督当局間の協力の促進
2)保険監督・規制に関する国際基準の策定および導入促進
3)メンバー国への教育訓練の実施
4)金融セクターの他業種の規制者等との協力
※日本からは金融庁がメンバーとして参加しており、当協会もステークホルダーとして積極的に関与する方針を掲げている。

(※2) 保険セクターにおけるシステミックリスクの評価及び削減のための包括的枠組み(Holistic Framework: HF)

保険セクターにおけるシステミックリスクの潜在的な集積の特定と削減を目的としてIAISが定めた枠組み。監督者の要件(介入権限、危機管理グループ設置、破綻処理計画策定)や保険者の要件(流動性リスク・カウンターパーティーリスク管理の強化、再建計画策定等)、IAISによるグローバルな保険セクターのモニタリング活動(個社モニタリング、セクターワイドモニタリング)の実施、IAISによる実施状況の評価などが定められている。

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