協会長ステートメント(2015年9月17日)
会長  鈴木 久仁

 日本損害保険協会の会長に就任し、2ヶ月半が経過いたしました。この間における主な取組みにつきまして、ご報告するとともに所感を申し上げます。

1.はじめに

 9月に発生した北関東・東北地方を中心とした集中豪雨をはじめとして、台風や竜巻等による被害が相次いでおります。ご報告に先立ちまして、これらの自然災害により亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
 損害保険業界においては、その社会的役割を果たすべく、被災された皆さまからのご相談・お問い合わせへ親身に対応し、迅速な保険金のお支払いに全力を尽くしてまいります。

2.これまでの取組みについて

 協会長就任後、7・8月にかけて全国の当協会支部へ出向き、今年度の取組み方針を徹底するとともに、各支部所在地の行政・マスコミ等を訪問いたしました。いずれの地域においても、災害や事故による社会的損失を軽減するためには、自助・共助の強化が重要であると認識されており、「安心・安全な社会づくり」に向けた今後の相互協力を確認してまいりました。これからも引き続き、地域の皆さまと緊密に連携し、今年度掲げた重点取組みを着実に進めてまいります。

 これまでの主な取組みについては、以下のとおりです。

(1)重点取組み

ア.消費者向け啓発・教育活動の推進

 小学生向けの防災教育プログラムである「ぼうさい探検隊」については、内閣府(防災担当)のご協力のもと、文部科学省から全国各地の教育委員会等に本取組みを文書にて周知していただきました。また、日本損害保険代理業協会においては、従来から本取組みの趣旨にご賛同いただき、今年度は更なる推進に向けて、ご協力をいただいております。こうしたお力添えを得られたこともあり、第12回「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」への応募数は8月末現在、前年同時期を上回る340団体(1,713マップ)となっています。
 大学生向けには、社会生活におけるリスクの存在と損害保険の有用性について体系的に理解を深めていただく教育活動を推進しており、今年度は、新たに九州大学経済学部にて連続講座を開講いただくことになりました。

イ.地震保険の普及促進

  地震保険の広報活動を8月24日から開始し、「地震のあとの家族の生活を支える保険、地震保険。」をキャッチコピーとして、全国の皆さまへ各種マスコミ媒体を通じたPR活動を進めております。特に、今年度定めた重点取組み地域(11道府県)においては、自治体や地元新聞社、日本損害保険代理業協会等と連携し、地域の特徴を踏まえたフォーラムイベントを10月以降、各地で開催する予定としております。
 2014年度における地震保険付帯率は前年度より1.2ポイント増加し59.3%になりましたが、東日本大震災直後と比較すると、付帯率の増加幅は年々鈍化する傾向にあります。本広報活動を通じて、多くの皆さまに地震保険の有効性をご理解いただき、地震保険が一層普及するよう取り組んでまいります。

ウ.地域の実態に応じた「防災・減災」取組みの推進

 大規模災害の発生が危惧される地域や記録的な災害が発生した地域のうち、6地区で、地域の実態に応じた防災・減災の啓発活動を実施いたします。具体的には、行政や有識者のご協力のもと、南海トラフ地震など、当地で懸念される自然災害を踏まえた防災・減災に関する講演やワークショップなどの啓発プログラムを提供してまいります。

(2)各種課題への取組み

ア.超高齢社会への取組み

 近年増加している高齢者による交通事故の防止・減少に向けて、過去における事故実態を分析し、警察庁および専門家のご協力のもと、高齢者向け交通事故防止啓発チラシを新たに作成いたしました。平成27年秋の交通安全週間においては、都道府県警察と協力し、本ツールを用いた効果的な啓発活動を実施してまいります。また、本ツールを活用して代理店から周知することや、高齢者に関する事故データや交差点ごとの事故予防策等を新たに追加した「全国交通事故多発交差点マップ」を当協会ホームページに掲載することなどを通して、より多くの方へ交通事故の防止・軽減に関する情報をお伝えしてまいります。

イ.グローバル化への取組み

 本年7月にタイ損害保険協会の自動車保険調査団を迎え、タイにおける自動車保険の保険金支払い適正化に向けた調査への協力を行ったほか、9月上旬にはフィリピン・マニラにおいて日本国際保険学校(ISJ)の海外セミナーを開催いたしました。今後も引き続きアジア諸国の金融インフラ支援に取り組み、各国損害保険市場の健全な発展に貢献してまいります。

ウ.自動車盗難防止への取組み

 日本損害保険協会では2003年から、10月7日を「盗難防止の日」として定め、自動車盗難防止に向けた啓発活動に毎年取り組んでおります。2014年における自動車の全国盗難認知件数は2003年に比して約3割の水準まで減少していますが、特定地域においては依然として多発しております。そのため、今年度においては、自動車盗難が多発しているワースト10の地域を中心に、当地の警察や日本損害保険代理業協会と連携した啓発活動に取り組み、犯罪による社会的損失の減少に努めてまいります。

エ.新たな募集態勢の構築への取組み

 来年5月施行の保険業法改正を受け、「契約概要・注意喚起情報(重要事項)等に関するガイドライン」をはじめとした各種ガイドラインを改定し、会員各社に周知いたしました。また、損害保険募集人の最高位資格となる「損害保険トータルプランナー」は2014年7月の認定開始以降、着実に増加し、本年8月末現在で10,159名を認定しております。今後も、業界全体の募集品質向上に努めてまいります。

オ.税制改正要望について

  本年7月の理事会において「平成28年度税制改正要望」を取りまとめ、関係各省庁へ要望いたしました。今回の要望では、「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」を重点要望項目としており、金融庁要望にも取り上げていただきました。近年、巨大自然災害が頻発している中で、保険会社が確実に保険金をお支払いするという社会的使命を全うするためにも、本制度の充実は必要不可欠であり、要望の実現に向けて、関係各方面に対して働きかけを行ってまいります。

3.おわりに

  この8月に、岩手から福島までの沿岸部を中心に、被災地の現状を確認してまいりました。東日本大震災から4年半経過し、現地は復興への道を着実に進んでいるものの、復興の状況は地域ごとに多様であり、震災の爪痕が未だ大きく残っている地域もございました。
 国難と言われた災害は甚大な人的・経済的被害をもたらすと同時に、我々に多くの教訓を与えました。大切なことは、この教訓を決して忘れずに、将来へ活かすことであると考えております。
 そのため、今年度の取組みを通して、より多くの方に自助・共助の重要性を伝えることで、災害や事故による社会的損失を軽減できるよう、会員各社と共に引き続き取り組んでまいります。皆様方のご支援・ご協力を何卒宜しくお願い申し上げます。


以 上

2015年9月  協会長ステートメント(PDFファイル)

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