2021 年頭所感
会長 広瀬 伸一

新年、あけましておめでとうございます。
2021年の新春を迎えるにあたり、年頭のご挨拶を申し上げます。

1.はじめに

 昨年は、新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、文字通り未曾有の事態となりました。我が国においても初めて特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令され、人々の意識や生活様式、企業活動の在り方が大きく変化し、経済にも大きな影響を与えた一年となりました。

 我が国の経済は、緊急事態宣言解除以降、持ち直しの兆しを見せたものの、秋以降の感染の再拡大も相俟って、先行きの見通しづらい状況が続いております。今後も感染防止対策を徹底する中で社会経済活動とのバランスを保っていくことが重要であると認識しております。直近では、世界各国でワクチンが開発され、ヨーロッパやアメリカでは接種が始まったとのニュースも届いています。世界中の国々、人々が直面しているパンデミックという大きな困難が、ワクチンや治療薬という人類の英知によって早期に終息することを願っております。

 また、昨年は九州を中心とした豪雨災害や台風被害も発生しました。損害保険業界は、コロナ禍の下での大規模自然災害対応という過去に経験したことのない難しい課題に直面しましたが、保険金支払いをはじめとする重要業務を途切れさせることなく継続し、お客さまに安心と安全を提供し続けるべく取組んで参りました。会員各社では、非対面での契約手続きやインターネットを活用した事故対応等に取り組んでいるほか、リモートワークなどの柔軟な働き方も取り入れ、感染拡大防止にも努めております。損害保険業界は、引き続き、コロナを単なる危機ではなく変革の機会とすべく、様々な形でデジタル化やDXの取組みを更に前進・加速させてまいります。

 損害保険業界は、これまでも度重なる大規模自然災害や様々な社会の環境変化に対応し、数多くの難局を乗り越えてまいりました。これからお客さまや社会を取り巻く環境が今まで以上のスピードで変化することが想定される中でお客さまをお守りし続けていくために挑戦を続け、安心を広げていくことが、損害保険業界の使命であり、これからも創意工夫を重ねながら取組みを進めてまいります。

2.本年の主な取組み

 当協会は、新型コロナウイルス感染症が社会全体に与える影響も踏まえつつ、「自然災害への対応力強化」「金融・損害保険リテラシーの向上」「業務の共通化・標準化の推進」を重点取組み項目として、お客さまおよび社会課題の解決に貢献すべく取り組んでまいります。

(1)自然災害への対応力強化

 多発化・激甚化する自然災害に対して、国民の皆さまの生活再建や企業の復旧、地域の復興に向け、損害保険業界としての役割を的確に果たしていくために、迅速かつ適切な保険金支払いに繋がる業界共同の仕組みの構築を進めてまいります。
 また、本年は東日本大震災から10年の節目を迎えます。当協会では、この節目の3月に事前に災害に備えることの重要性についてお伝えするセミナーを開催いたします。最近の研究では、今後30年以内に南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模震災が発生する可能性は70%以上とも言われており、事前の備えの重要性はますます高まっております。今後大規模地震が発生した際に、国民の皆さまが自らの生命と財産を守ることができるよう情報を発信いたします。

(2)金融・損害保険リテラシーの向上

 金融・損害保険リテラシーの向上を図ることは、国民生活のレジリエンスを高めるために重要であると考えています。当協会では、いつでも、どこでも、だれでも損害保険について、分かりやすく学ぶことができるよう、オンライン学習ツールや動画教材を用意し、国民の皆さまの損害保険リテラシーの向上に取り組んでまいります。

(3)業務の共通化・標準化の推進

 損害保険に係る仕組みの共通化・標準化を進めることで、業務効率の向上を図り、お客さまの利便性向上に繋げる取組みを進めてまいります。一例として、年末調整に必要な地震保険控除証明書の電子化やハガキ発行の共同化、更にはマイナポータルとの連携を実現すべく取組みを進めてまいります。
 また、新型コロナウイルスの影響により、社会全体で書面・押印・対面での手続きを前提とした業務慣行を見直す機運が高まっております。当協会でも、お客さまとの接点はもとより、業界内、会員会社間に顕在化する課題について、関係省庁と連携しながら取組みを進めてまいります。

3.おわりに

 本年の干支は十干十二支で言えば、「辛丑(かのとうし)」となります。辛丑は、"つらい"という意味と"新しい"や"始める"という意味を持つ漢字の組み合わせになることから、「辛いことが多い分だけ、新たな希望が芽生える年」という意味合いを持ち、転換期になるとも言われています。新型コロナウイルス感染症の終息とともに東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催され、日本、そして世界中の人々の希望の光となることを願っています。
 損害保険業界といたしましては、環境変化に着実に対応していくことで、安心・安全で持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいりたいと考えており、引き続き、皆さまのご支援とご協力を宜しくお願い申し上げます。
 最後になりましたが、本年が皆さまにとって素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

以 上

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