2022年度自賠責運用益拠出事業17.8億円を決定 -自動車事故防止対策や被害者支援に自賠責保険の運用益を活用-【No.21-23】

 一般社団法人日本損害保険協会(会長:舩曵 真一郎)は、2月17日(木)の理事会において、各損害保険会社から拠出される自動車損害賠償責任保険の運用益を活用し、新規4研究を含めた40事業に対する総額17億8,071万円の支援を決定しました。

 当協会では、1971(昭和46)年から、同運用益を活用して自動車事故防止対策事業や自動車事故被害者対策事業などの多様な分野に対する支援を行っています。
 2022年度は、事故当事者や家族等への支援につながるよう、自動車事故被害者対策を中心に取り組むとともに、昨今の交通環境の変化を踏まえて、自動車事故防止対策にもより一層注力することを基本方針としています。
 事業の詳細は、別紙「自賠責運用益拠出事業一覧」をご参照ください。

自賠責運用益拠出事業一覧(PDF)

 なお、自動車事故防止対策においては、自動車事故の防止に貢献する様々な取組に関して幅広く情報を収集するため、2019年度から公募制を導入し、より社会的ニーズに即した事業・研究に拠出するように努めています。

自動車事故被害者救済のための交通事故被害者への情報提供で実施された「生命(いのち)のメッセージ展」

1.2022年度「自賠責運用益拠出事業」概要

(1)自動車事故防止対策
(2)救急医療体制の整備
(3)自動車事故被害者対策
(4)後遺障害認定対策
(5)医療費支払適正化対策

2.2022年度に支援する新規研究の紹介

(1)自動車事故防止対策

ア.歩行者事故低減を目的とした子ども用教育ツールの開発と普及に関する研究(研究主体:一般財団法人 日本自動車研究所)

  • 本研究は、子どもの発達段階に配慮した教育内容や方法から構成される教育ツールを開発し、子ども自身が自らの安全を確保できるようになるための安全教育の充実を図るものです。普及促進の要件を整理することで、子ども目線での安全教育プログラムを広く普及させることを目指します。
  • ハード面での対策では困難な領域(子どもの飛び出しのような突発的な事象など)をカバーする総合的な交通事故防止対策の一つとして期待されます。

イ.交通環境の多様化による交通事故因子の顕在化と事故抑制のための自動運転社会の技術・環境要件の調査(事業主体:山梨大学)

  • 近年、交通に関係するヒトや自動車の多様化や高齢者の生活様式の変容など、交通を取り巻く環境が大きく変化してきています。
  • これらにより交通安全の確保が難しくなるなどの課題が顕在化していることについて、ヒト(高齢化、性格・感情の抑制、運転補助と危険回避能力の差)と自動車(自動運転、多様なモビリティ)が社会インフラ、とりわけ交通インフラの未熟成による事故誘発に至る事の関係を調査し、将来に向けた安全な交通の形を示すことで、交通環境多様化による事故増加の防止につながることが期待されます。

(2)自動車事故被害者対策

ア.交通事故遺族を対象としたグリーフケアの質の向上とその基盤整備に関する研究(研究主体:関西学院大学)

  • 交通事故遺族が直面する諸問題のうち、特に心理的影響に注目し、それに応じた支援のあり方について検討するものです。
  • 交通事故による死別が遺族に及ぼす心理的影響とその関連要因を明らかにするとともに、遺族支援活動の継続や質の向上を目的として支援者の養成を図ることで、交通事故遺族のための心理・社会的支援体制を構築することを目的とします。
  • 交通事故被害者の遺族に対する「真に必要な寄り添い方」と「あるべき姿・環境」を示し、普及させることにより、交通事故被害者遺族の心のケアに寄与することが期待されます。

イ.水中環境を用いたリハビリテーションにおける自動車事故受傷者及びその家族の心理的回復プロセス並びに地域における障害理解に関する研究(研究主体:一般社団法人 輝水会)

  • 水中環境での運動継続による心身の変化を通し、自動車事故受傷者とその家族の心理的回復を研究し、社会的障壁を除去することを目指すものです。
  • その過程においては、当事者や家族への入念なインタビューを行い、体調や気持ちの変化等について調査していくことに加え、医療機関の専門医の協力を得て、訓練効果や機能的変化に係る医学的エビデンスの取得と構築を行うこととしており、研究成果を一つのモデルとして確立させることが期待されます。

<ご参考>「自賠責運用益拠出事業」について

  • 自賠責保険は、交通事故被害者への損害賠償という保険本来の役割だけでなく、自賠責保険の収支の改善や被害者保護を増進するため、交通事故防止や救急医療体制の充実、被害者やその家族への支援事業などを支える役割も担っており、自賠責保険の運用益が活用されています。
  • 自賠責運用益の使途は、将来の自賠責保険の収支改善のための財源とするほか、自動車事故防止対策、救急医療体制の整備、自動車事故被害者対策等に必要な費用など、被害者保護の増進に資する施策に活用できるとされています(自賠法第28条の3)。
  • 当協会では、各損害保険会社からの運用益の拠出を受け、真に被害者の支援となる事業を心掛け、「自賠責運用益拠出事業」の運営を行っております。
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